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逃亡の世界  作者: 谷藤にちか
第3章 真実の巫子と管理者達
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管理者と選定者

さらに長いです。すみません。6ページ分です。

一度、満帆南をここに連れて来た際も、巳春が凄く美人だと騒いだのだ。

初意もイケメンだと言っていたが、紫延の事は良い声の人という認識だった。

やはり、違和感を感じるのだ。

単に、紅子の欲目と言い切ってしまうには、何かおかしい。

おかしい点は、初意にもあるのだが、それは後回しだ。


(紫延さん、イケメンでかっこいいのに。

なんでこんなに存在感がぼんやりしてるんだろう?)


紅子は、スプーンをかじりながら、じっと紫延を見詰める。


「何か、わたしの顔についてるかな?」

「い、いいえ!ごめんなさい。じっと見ちゃって……。

だって、紫延さん、かっこいいのに、解ってくれるの初意だけだなんて、おかしいと思って」

「かっこいい?わたしが?」


目を丸くして驚く紫延に、紅子は赤くなる。


「そ、その変な意味じゃなくて!だって、紫延さんは、声も良いし、

すごく落ち着いてるし、綺麗なのに、なんでお客さん達は巳春さんだけ褒めるんだろうって」

「……はは、ありがとう。巳春は美人で有能だからね。わたしには勿体無い妻だ」

「そんな事ないです!!紫延さんはとても素敵です!」

「……」


紅子の熱い宣言に引く事も、驚くこともせず、紫延は自分の目を指さした。


「……ねぇ、紅子ちゃん。わたしの瞳の色は何色に見える?」

「え?」


今までにない距離に、紫延が近づく。

吐く息が届きそうなほどの距離を詰められて、紅子は息を止めた。

紫延の目を覗く。それは井戸の底を覗き込むような恐怖と興味に似ている。

そこには緊張した顔の紅子自身が映り込み、眩暈がしそうだった。

けれど、こげ茶色だと思っていた瞳の色が違う事に気付く。


「……なんで、む」

「どうしてだろうね?」


紅子が色の名前を口にする前に、紫延の指先が紅子の唇に触れた。

それ以上、言わせない為に。

くすりと、照明の光が当たらない状態で笑う紫延に、凡庸さなんて微塵もなかった。

ただのとても美しい男だった。


「!?」


紫延は、紅子の唇を抑えた人差し指の先をぺろりと舐めてしまう。

肉食動物のような仕草は、今まで見た事がないほどの淫靡さで目を反らす事なんて出来なかった。

心臓が壊れているのではないかと思うほどに音を立てている。

完全に、紅子の知っている紫延ではない。

いや、知っていたからこそ、あんなに違和感を感じていたのではないかと思う。

紫延は、こちらの方が自然に思えた。


「……」


言葉にならなくて口が開いたままで、何か言おうとしているけれど、

喉に何かが引っかかっているようで、何も言えない。頭に、言葉も浮かばない。

ノックの音が響き、紅子は正気に返った。


「紅子、お客様が女子トイレで困ってるみたいなんだ。見に行って来てくれないか?」

「あ、うん!わかった!行って来る!」


オムライスもそのままに、脱いでいたエプロンを引っ掴み、1階へと階段を駆け下りていく。

紅子を見送った初意は溜息を吐いた。


「紫延さん、こんな所で魔力と魅了を解放させないで下さい。

貴方は、人間なんて簡単に籠絡させるんですから」

「大丈夫だよ。ほんの少しだ」


凡庸さを失くしたままの紫延が色気過多に、口の端を上げる。

それを見ないように、初意は目を瞑ったまま会話を続ける。

初意の種族でも、紫延達の種族の力には敵わない。


「ほんの少しねぇ。紫延さんの番は巳春さんなんですから、余計な心配かけちゃ駄目ですよ」

「心配?そうかなぁ。彼女は、僕以外に雄がいないだけだよ。

逆に、わたしも雌が彼女しかいないだけだ。消えゆく生物なんてそんなものだよ」

「……何言ってんですか、いなくなったら寂しいくせに」

「そんなものかなぁ」

「そんなものですよ」


ふっと、空気が軽くなる感覚がしたので、初意は目を開ける。

いつもの、凡庸な雰囲気を纏う喫茶店の店主がそこに居た。


「はぁ、紅子が来なくなったらどうするんですか?」

「そんな事はありえないよ。紅子ちゃんはわたしに魅了されているからね」

「……ほんと、性質たちが悪い」


首を横に振る初意に、紫延は思い出した事を注意をする。


「紅子ちゃん、思っていたより目が良いね。わたしの凡庸さが通用してなかったよ。

目の色もはっきりと解ったみたいだ。たぶん、お前の目眩ましも見抜いているんじゃないか」

「げ。マジですか?」


思わず初意は、自分の頭に触れる。彼の頭は、自然な黒髪のように見える。


「あ、それと、紅子ちゃんから何をもらっていたんだい?」

「あぁ、これですよ。ソコハテの犠牲者です」


初意は、紅子に押し付けられたチラシを広げて見せた。

無表情な少女が写っているのを、紫延は興味深そうに眺める。


「桂真咲ね。ソコハテの最後の犠牲者か。……ソコハテが死んだ原因を知っているかもしれないな」

「でも、もう。五年前ですよ。ただの人間が逃亡の世界で生きられる可能性なんて……」

「上手くソコハテの呪いと祝いを使いこなせていれば生きているかもしれないよ。

今度、探し出して捕まえておかなきゃね。

逃亡の世界の管理者として前任の選定者の死因はきっちりと調べないと」


この言葉に初意も頷く。

彼らの逃亡の世界での役職は、

龍塚紫延は、【管理者】。

松元初意は、【選定者】であった。

途中で切ろうかと思ったんですが、ちょっと難しかったです。

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