序:主君は微笑み、語りて曰く
最近被害が相次いでいるという、無断転載についてのエッセイを読んで、勝手にビビッて、被害に遭う前に無断転載対策をしてみることにしました。
本作品「地獄の底に咲く花は」におきましては、部分的に本文と後書きを入れ替えると言う無断転載対策を実施しております。
ややこしいことをしてすみませんが、自分の作品が無断転載される想像をすると、イラッときたので、自主的に対策をとってみました。
読者の方々には、大変ご迷惑をおかけいたしますが、ご理解の程よろしくお願いします。
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対策については、MITT様のエッセイを勝手に参考にさせていただきました。
「化け物として、死にたくないわ」
そう言って、少女は悲しく微笑んだ。
砂時計の砂が落ちる音がする。
少しずつ、だが確実に。
崩落していくのは、彼女の自我だ。
不可逆の変質を、留める術はない。
「私は、幸せものね」
温かな笑みが少女の顔に浮かぶ。
ほわほわとした、いつもの笑顔。
鮮やかさを増す日差しの下で、まだ涼しい風が初夏を教える。
3人で過ごす秘密の小庭には、陰鬱な屋内では見られない、生の謳歌があった。
風に長い髪を遊ばせながら、両手を広げ、踊るようにくるりと回る。
「貴方に首を刈られることがあっても、それは私のためだって、信じられるのよ」
それが彼らの信じ方で。
少女の言葉に、返答は無かった。
その役目を負うはずだった少年が、掌に傷が付く程拳を握り締めていたことに、彼女は気付いていない。
その日常が罅割れだらけだったことを知らずに、王統の娘は笑っていた。
大禍を撒き散らす大凶星は、禍を喰らう災厄と共に、危うい沈黙を保つ。
掌の中のものの幸せを祈りながら、それでも災いを招かずにはいられない。
自らが呼び込んだ凶に擦り切れて、擦り切れて、——いつか、いなくなってしまう。
——それでも、消えて欲しくないと思ったのだ。