プロローグ
人は皆、自分だけの世界を持ってる。それは時に自分勝手だと罵られたり、マイペースだとからかわれる。
誰しもが持っているはずなのに、それを周りに知られることを恐れている。なぜなら、周りの人々と同じ世界を共有することに徹し続けているからだ。はみ出しものは嫌。それは至極当然の考えなのかもしれない。
だが、彼女は違った。
彼女は自分の世界を広げていったのだ。周りにいた人々をあっという間に取り込んでいく不思議な世界。僕らは彼女の世界にどんどん引き込まれていった。でも、それは不快ではなく、心地よい充実感で満たされていた。
どんな時でも崩れない笑顔に、僕らは何度救われたことだろう。その度、はにかんで笑う僕らはどこか滑稽にも思えた。もちろん僕らは口に出さずとも、お互いの彼女に対する気持ちを理解していた。でも、誰もが口を閉ざしていた。それを口にしてしまえば、今の心地よい関係が失われてしまう。
結局僕らは誰かと繋がっていないと生きていけない。それなのに最後は自分が一番大事。なんて自己中心的な存在なんだろう。誰かのために自分を捨てても良いなんて、幼い頃の僕らからは想像もつかないことだった。
そんな中、彼女は素晴らしいほど気ままに、穏やかに自分の時間を刻んでいた。羨ましいほどに。
一人で自分勝手な世界だと思われるなら、二人で築けばいい。二人が駄目なら三人で手を取り合えばいい。それでも駄目ならみんな巻き込んでしまえばいい。
これは、そんな彼女と僕らのたゆまぬ恋の物語。