表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アナバチ性ミントブルーうさみちゃんシティ  作者: 夏果和 なまり


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/8

3-₍ᐢ.ˬ.ᐢ₎₍ᐢ.ˬ.ᐢ₎

〝quzx:昔からずっとそうだ。私の周囲には人間がいない。誰もが人間のかたちをしたごわごわしたもので、私は人間の本当の姿を知らない。ごわごわして、表面だけを飾り立てて、私の近くに寄ってくるのに私に触れず、私の周囲でごそごそしている。人間に擬態した人間たち。

 私を好きでも嫌いでも、彼らは私の外側で愛や憎悪を共有するので私には彼らがなにを思っているのか、私に対する感情をまるで知らない。表面では優しく接するけどそれは人間誰もがする態度だ。だから私は、客観的な自己をいまだに知らないままだ。

 人々は私の容姿に対して人格を植え付ける。彼らが育て上げた人格が私を縛る。私の容姿を彼らが評価する。勝手な評価が私の魂を縛る。私はつねにがんじがらめで、誰からも素の態度で接してもらうことなどなかった。誰もが浮ついた態度で私に接する。

 もちろん、憧れられたり、好かれたりするのは心地よい。しかし、私はあるとき気づいた。自分の周辺にいる人間たち誰もが、私に対して、妙に着飾った自分というものを纏って接し、私に対して勝手に抱いているいわば『私像』なるものと接しているのだということ。誰かと心を通わせたくても、誰もが私にほんとうの自分を見せてくれないし、ほんとうの私を見ようとしていない。妙に着飾った自分を纏う人間たちは、画一的でまるでそういうロボットがたくさん並んでいるみたいだった。

 私はすでに閉じ込められていたのだ。

 しかし初めて私は私という存在を忘れたことがある。私という存在が、生きる上でかならず自己と他人のあいだで浮き彫りになる〈私〉を意識せずに済んだ。それは、うさみちゃん市に住んでいる誰もが私に興味なかったからだ。

 うさみちゃん市の住人たちは、目の前の〝自分だけの興味〟にしか興味がなかった。私が何者であるか、という社会的付加価値より、私が何に興味を持っているか、のほうを知りたがった。それから、私には何ができるのかということだけを知りたがった。

 現在のうさみちゃん市は、ブレインレイン社の善意によって新しい秩序に塗り替えられた。新しい住人たちが増えて、新しい秩序の中で暮らしている。かつての街は消えた。新しい秩序はやがて人々を縛りつけるだろう。いまの私のように。

 私は、かつてうさみちゃん市に住んでいた人々のルールを知っている。記憶は脳にはない。それもルールのひとつだが、いまのうさみちゃん市ではその意味もひっくり返っている。記憶は脳にはない、という言葉は一人歩きして、覚えてませんという価値に変化した。記憶は脳にはなく、各個人の能動的行動もすべて覚えていないのだから、誰にも責任はない。それを都合よく利用する人間たちによって、私の周囲は荒れ始めている。

 いまや、街ははつらつとしたうつ病患者で溢れている。ブレインレインがつくりあげたのはこういう街だ〟

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ