表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
EVOLVE〜エヴォルブ〜 Season1 ― 原点 ―  作者: 柊梟環
EVOLVE〜エヴォルブ〜 Season1― 原点 ―
15/21

第11章 凍りつく夜 ― 写真 ―

静かな夜に、言葉のない“気配”が忍び寄ります。

もし心が固まってしまったら、呼吸から。深く吸って、ゆっくり吐く。

環が最初に差し出すのは強さではなく、たった一本の電話です。

数日後。

帰宅したたまきは、ポストに白い封筒を見つけた。宛名は「三浦環様」だけ。


(自治会のお知らせ……かな。)


部屋に戻り、寝る支度を済ませてから封を切る。


――ぱら、ぱら。


写真が、こぼれ落ちた。


(……え? なに、これ。)

手が固まる。心臓が、遅れて脈打つ。


自分の写真。横顔、背中、買い物袋、エントランスに入る瞬間。

その束の中に、しゅうと並んで歩くツーショットが混じっていた。


……柊……


喉が乾く音が聞こえる。空気が急に冷たくなっていく。


(電話……しなきゃ。柊に……)


震える指でスマホを押す。

数回のコールのあと――


「環、どうした?」


喉が塞がる。声が出ない。

自分の荒い息だけが、遠くに響いている。


「環! 何かあったのか! 大丈夫か!」


その声で、やっと世界が戻る。


「……柊、……助けて……写真が……」


「待ってろ! すぐ行く。鍵は閉めて!」


柊は車に飛び乗り、走りながらなぎに電話を入れる。


「凪でーす。」

「凪、今、環の家へ向かってる。『写真が』って言ってた。状況次第で、お前の力が必要だ。」

「了解! 準備します。出動待機にします!」

「頼む。悪いな。」

「何言ってるんですか。守りましょう、環さんを。」


――マンション到着。


「環、着いた。部屋に行く。俺が行くまでドア開けるな。」

「……はい。」


声が少しだけ、落ち着いた。


ドアスコープの向こうに、柊の姿。

扉が開くと同時に、環は柊にしがみついた。


「環……こんなに震えて。何があった。」


差し出された1枚を見て、柊の目が鋭くなる。


「……なんだ、これ。」


ソファに座らせ、ブランケットをかける。


「この写真、どうした?」

「今日、ポストに……。自治会の連絡かと思って、さっき開けたら……いっぱい入ってて。怖くなって……。1枚だけ、柊も写ってて……それ見て、電話しなきゃって。」


「そうか。……怖かったな。」


肩を抱き寄せる腕が、静かに力を増す。

「うん……怖かった……。」


柊は環を包んだまま、凪に連絡を入れる。

「凪。マンションの防犯カメラ、確認できるか。」

「了解。すぐ。」

「これから環を連れて、俺の家に行く。合流できるか。」

「行きます! すぐ向かいます!」


部屋を出る。

エレベーターの中、環が小さく眉を寄せた。


「……ん?」

「どうした。」

「これ……匂い。香水……嗅いだことある気がします。」

「匂い?」

「はい。なんだっけ……」


柊が、ほんの少しだけ笑わせようとする声で言う。

「急に探偵モードだな、環。」

「えー、なんですか、それ。」

「興味があることがあると、状況を忘れて考えをまとめるだろ。俺、そういう環が好きだ。」

「えへへ。私も、柊が好きです。」

「お。うれしい。」


恐怖はまだ消えない。

でも――手の温度で、呼吸が少しずつ戻っていく。

写真は沈黙のまま、確かな恐怖を伝えます。

それでも環は、震える指で助けを呼ぶことができた。

それは「ひとりで抱えない」という、新しい生き方の始まりでした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ