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月は嘘を知っている  作者: 七瀬 樹
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追憶 2

私が10歳の時。

お父様が盛大に私の誕生日パーティーをしてくれた。

初めて家族だけじゃなく、外部のお客さんも招いて。

私はその日のために買った新品の靴と新品のドレスを着て、お母様のところに向かった。

ドレスを着たお母様は、一段と美しく、花の妖精のようだった。

私がぼぅっとしていると、お母様は手をひいて、私を真ん中の席に座らせた。

お父様がやってくると、頭を撫でて

「よく似合っているよ」

と、言ってくれた。

奥からシェフがやってくると、

「今日のために特別に作りました」

と言って、私の大好きなフルーツのタルトを出してくれた。

みんなが私の誕生日をお祝いしてくれて、とっても幸せだった。

その時は私の人生で1番幸せな日だったと思う。

まるで世界が私のために存在しているかのような気がした。


どこか遠くで、あの子が泣き出した。

お母様が慌ててあの子のところへ向かう。

今日は私の誕生日なのに。

先ほどまでの幸せな気持ちは、どこかに行ってしまって。

ついさっきまで、宝石のように輝いて見えたタルトも、今はどこにでもあるありふれたものに見えてしまって。

泣きそうになった。

そんなにささいでくだらないことに心を揺り動かされている自分が嫌いになった。

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