2/3
追憶1
強い人になりたい。
あの時ふとこぼした言葉。
お父様もお母様も聞いていなかったけれど、あの子だけは聞いていた。
何も言わずに首を傾げるあの子を見つめながら、妙に憎らしく愛おしい気持ちになったのを覚えている。
あの子は私が4歳の時にやってきた。
誰よりもそばにいて、想いを分け合った。
でもいつからだろう。
あの子が遠く見え始めたのは。
私の横か、その少し後ろについてきていたのに、いつのまにか私よりずっと前を走るようになっていた。
そのことを素直に喜べたらよかった。
でもそんなに私の心は器用じゃなくて。
これが天才なんだと、そう言い訳するけど、心に占める黒い思いは消えなくて。
醜い嫉妬のせいであの子を傷つけた。
今更すぎるけど、あの子に寄り添える1番の理解者に、強い人になりたかった。
今回も少し短めです。
300字くらい。
長く書くと内容がぐちゃぐちゃになるんです。