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エピソード29 活躍

 フレデリックとカズマは無事だろうかと、アルバータが考えていたちょうどその頃、当の彼らは、子供達を助けるべく奮闘していた。

 ギュドスフォー別邸自体が陽動だったということは、傭兵も傭兵ではないのではないかとのカズマの疑問を確認するべく、まず、1人をおびき出してみて様子を見ることにする。

 2人は別邸の、よく茂って身を隠しやすい庭の植え込みの中から、屋敷の様子を覗う。

「行くよ」

 カズマは閉まっている窓に振りかぶって、握りやすく小石よりも少し大きい石を投げた。

『ガシャーン』

「ナイスボール。いい音。一回やってみたかったんだよね」

カズマがガッツポーズをしながら、小声で得意げにフレデリックに言う。

フレデリックは苦笑いし、屋敷の様子を見ると案の定、偵察なのか1人の男が出てきた。

「次は私の番だね」

キョロキョロ通り過ぎた男の後ろから、剣を鞘のまま打ち付ける。

 剣の一振りで男はあっけなく倒れた。引きずって草むらに引きずり込む。

「後ろからの敵の気配にも気づかないなんて、傭兵にしては弱すぎるね」

 フレデリックとカズマは顔を見合わせ、疑惑が確信に変わったことを確認した。

 同じような作戦で次々に傭兵もどきを倒した2人は、恐れて出て来なくなった屋敷内の残党を片付けてしまおうと、馬車と屋敷内を確認していく。

 そうして子供6人全員を救出できた。

 泣いている子供達はカズマが宥め、急いで馬車の準備をフレデリックがする。

 子供たちを乗せる予定だった大きい馬車に乗せて一緒に王都へと向かった。


 こちらの首尾は上々だったが、アルバータ様の方はどうなったんだろう。

 フレデリックも心配なようで、馬車で従者役をしながらフレデリックがカズマに聞いてくる。

「カズマの魔法でアルに報告とかできないの?アルもそこそこ魔力強いからできそうじゃない?」

「えー、そんな携帯みたいなこと。できたら便利ですね、やってみます」

 初めての試みだが、カズマは目を閉じ、フレデリックを呼んでみる。

残念ながら、それはうまくはいかなかった。


 その後、フレデリックは王都に近い、警備兵が配置された駐在所で自分の所属を告げ、上官の貴族をを呼び出してもらう。事情を説明し子供たちを馬車ごと託し、丈夫な馬を1頭借り受けた。

「さあ、急いで戻ろう」

 フレデリックがそう言うと、カズマをフレデリックの馬の前に乗せてくれた。

 こちらに来てから2回目のフレデリックとのタンデムだったが、前回と違い、容赦ないスピードに、カズマは涙目になりながら王都へと戻った。


 もう既に辺りは暮れてきており、月が出てきている。

 やっとの思いでザガールの屋敷近くの隠れ家に着いたカズマだったが、アルバータと仲間達は、ザガール邸を出発した馬車の一行を追いかけ、出立した後だった。


 フレデリックが、連絡要員として残っていた仲間から、向かった方向は隣国デュラムナリク国方向と報告を受ける。休む間もなく、カズマをまた馬の前に乗せ、後を追う。

 早くアルバータに合流したいだろうフレデリックには申し訳ないが、カズマも早く合流したいので、また馬に同乗させてくれたフレデリックには感謝しかない。

 せめてものできることをと思い、カズマは自分たちが乗る馬の馬脚に身体強化の魔法をかけた。


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