「遠征任務:特別依頼・炎星と水星【中編】」 その18
☆★☆★ エインデ
「いつまでも重苦しい雰囲気でいる訳には行かん、仕事を続けるぞ」
狂い火発症者によるサナエ襲撃事件により全員の士気は一気に下がってしまった。
特にアスカは戦意を喪失して壊れた人形のように会議室の隅っこで蹲っている。
キリもエミもサナエが村の病室に運ばれた事に仕事する気すら無くなっていた。
「ゼーナ」
「は、はい・・・」
ゼーナとクラフトは無事だがゼーナも相当打撃を受けている。
「お仕事ですよね、了解しました」
ゼーナは現実を逃避するように一礼して一人で仕事をすると去り際に涙ぐんでいた。
「サナエは大分好かれてるようだな」
「サナエは皆のお母さんのような存在だからな!入った途端にスイカズラ冒険者は一気に仕事の効率が上がったらしいぞ?」
サナエは元々二人の人間を育てて来た女、周りも自分にも厳しくそして誰よりも人を想う気持ちが強い。
そんな女が一度離れると一気に瓦解するもんなんだな。
本人は最低でも三日は休むと医師から告げられてる。
さて、どうしたものか。
「っ・・・何サボってんのよアンタ達!」
残念ながら話芸に乏しい俺には優しく振る舞うことすら出来ない。そんな時、何故かサナエが松葉杖を付きながら額に汗を流しながら戻って来た。
「アンタ・・・寝てろよ」
「あぁ!?誰に向かって・・・口聞いてんのよ・・・はぁ、はぁ・・・」
今にも死にそうな程弱っている。膝は完全に固定されていて包帯だらけの腹部からは流血している。
「サナエちゃん・・・」
皆はサナエの声を聞くだけで顔を上げる、そんな重苦しい雰囲気を吹き飛ばす。
「ったく、やっぱり暗くなってる!私がいないと本当に駄目駄目ね!」
ふらつく身体に肩を貸すとサナエの体温が低い事が明らかだ。
ほぼ瀕死と言ってもいい、こんな状態だと言うのに仲間を気にするとは見上げた根性だ。
「サナちゃん・・・ね、寝てなよ!?すっごい汗かいてんし、マジでキャパヤバだから寝とけって!」
「はぁ、はぁ、うっさい!アンタ達が地団駄踏んでる光景が浮かんだから仕方無く来てやったのよ!げほ・・・仕事・・・するわよ」
あまりにも無茶な行動に全員がサナエを引き止めた。
結果として全員の士気は上がり炎星の調査を再開することが出来た。
終始サナエは辛そうだが少しの間で休むと断言し全員の仕事に励む頃には安静にするように追いかけてきた女医が釘を刺された。
何だか奇妙な出来事が立て続けに起きている、今思えばこの事件が事の発端なのかもしれないな。




