優しさをライズで騙す 第一章 「思考不全と身体麻痺」 その1
※アスカのスペシャルエンディングは物語の進行状況によって変わるので対象外となります。
二日後、私は依頼を終えてのんびりと過ごそうかと露店を回り吟味していた時見知った顔を見かけた。
「あれ、ユカリちゃん?」
魔導学校の生徒の時に隣だったハナちゃんだ。菫色の肩まで伸びたおさげをした少し気が弱い女の子だ。
確かこの子はアスカちゃんが薬物漬けにされてそこ等一帯が一斉検挙された結果全員がクビになったんだった。
あの頃とは少し変わってまるで平民のような服装で大事そうに本を抱えていた。
「久しぶり〜元気だった?」
私は気さくに言葉を返すとハナちゃんもそれに応じてくれた。
「うん、まさかアスカちゃんがあんなことするなんて思わなかったね」
悪態を吐くように溜息を漏らす。
「何であんな事になったんだろうね?」
「知らない・・・お陰で私達皆平民か戦士にしかなれなくなったし将来安定なんかお流れになったしアスカちゃんも“闇”の部分とかあったのかな?」
ハナちゃんは溜息を吐きながら段々アスカちゃんを非難するような発言が増えた。
皆アスカちゃんを恨んでる、アスカちゃんが“虐め”の対象になった時誰も助けずアスカちゃんは隠れて薬物を使ったと断言している。
「ああいうお嬢様は一度深く悩んだり落ち込むとどんどんその考えが悪い方向に向かうからユカリちゃんは大変だね」
世間的には腫れ物扱いされてる元シスターズのアスカちゃん、本来なら薬物の入手方法さえ分かればアスカちゃんがあんなことになった原因が分かるのに未だに手掛かりすら掴めてない。
「でも私知ってるよ・・・」
アスカちゃんの批判に私は相槌を打っているとハナちゃんは少し曇った表情をする。
「何か知ってるの?」
私の問いにハナちゃんは頷いた。
手掛かりかもと膝を進めるように真っ直ぐ見つめるとそこから放たれたのは・・・思いもしなかった言葉だった。
「アスカちゃん・・・“いじめ”があったの」
・・・・・・・・え?
「アスカちゃん・・・虐められてたの?」
お嬢様で言われたらそつなくこなす従順で家事も戦闘も頭もずば抜けた天才少女とも言われたあのアスカちゃんが?
「・・・ユカリちゃんが辞めたから・・・皆はアスカちゃんを憎んだり男の子にモテたり一時はユカリちゃんをアスカちゃんの腰巾着とか思ってたのに今はユカリちゃんの奴隷とか腰巾着扱い、それが更に加速して・・・」
ハナちゃんから聞かされたのは想像を絶する第三者の視点、そこには人間性が壊れた人らしいものの非道で最初は数人だったがアスカちゃんが何も言わないと知ってからはほぼ全員が虐めを楽しんだ。
虐めは加速して最早奴隷と瓜二つとなったアスカちゃんは薬物投与して脳を麻痺させて耐えたが精神的に肉体的に爆発して・・・
アスカちゃんは完全に“壊れた”、薬物投与をしてることを知られると皆は一度に二十本も薬物投与をして尊厳を陵辱、身体に痺れや脳内が蕩けてたり知能はスライムと変わらない。
言えば何でもする、調教すればなんだってこなす奴隷となった。
だがそんなアスカちゃんの唯一の救いが犯されても初めては取られなかったらしい。
「・・・はぁ・・・こんな話してももう戻れないのに」
話を終えるとまた溜息を吐く、まるで被害者のような言葉でこういった。
「アスカは可愛そうだけどさ、私達にも迷惑掛けるなんて酷いよ」
それを聞いた私は何故か自然に拳に力を入れて危うく殴ってしまうところだった。