「遠征任務:特別依頼・炎星と水星【前編】」 その12
四日目
この日は二人だけで行動しないといけない、戻るユイちゃんに私は背中を撫でた。
「・・・たった一日なのに胸が苦しいわ」
ずっと一緒だったからかな、私も同じ気持ちだ。
それでも生きる為に手放そう。
「我慢だよ、これが終わったらまた一緒に調査しようね」
「・・・うん」
いつもなら無言で頷く筈がこんなにも寂しそうに俯くユイちゃんは初めてだ。
「ユイちゃん、もしこのお仕事が一段落したら一緒に近未来区に遊びに行かない?」
“素直な気持ちが一番”、サナエちゃんに耳が痛くなるほど言われ続けた言葉だ。
「いいの!?」
あまりにも突発的なお誘いに驚いた表情と溢れんばかりの胸の高鳴りを感じる。
「毎回無理ばっか言ってるしユイちゃんともっと・・・一緒にいれたらって」
恥ずかしいけど、ちゃんと伝えられた。その言葉もちゃんと反映してユイちゃんも赤裸々に視線をズラした。
「やくそく・・・ね?」
「うん♪」
それでもまだ不安そうな表情を浮かべる。
「まだ不安?」
「・・・うん、貴女は目を離すと簡単に死んでしまいそうだから・・・」
「あぅ、私ってそんなに弱そうかな?」
また然りげ無くディスられると思ったら予想の斜め上の言葉が飛んできた。
「違う、ユカリちゃんは優しいから、人懐っこくて甘えん坊だから。ふとした時に優しくされるとホイホイ付いて行きそうだから怖いの」
何か典型的な親みたいな事を言われて良くわからなかった。
親って子どもを離すと心配症になるらしいけど何でだろう?
サナエちゃんも注意力散漫になるしずっとあたふたしてるし。
私は小さい時から感情を出すのが苦手で伝えたくてもどう伝えればいいのか、身振り手振りも分からなくて・・・どうやって泣けば良いのかも分からない。
そんな時に言われた優しさが何より輝いていて私も誰かを励ませたらと思うようになった。
「えへへ♪ユイちゃんどんどん人間っぽくなってるよ!」
「そう?」
「うん!私も感情なんか無くても笑えばいいって思ってたもん、サナエちゃんに滅茶苦茶怒られたな〜♪」
今はもう気持ちが軽いけど更に私が変わる切っ掛けは間違いなくユイちゃんとの出会いだった。
天賦の才能なんて神から抜き取られたような薄っぺらな私が半殺しにされて感情がグニャグニャだったのに今じゃ冒険者のリーダーやってるなんて人生は何が起こるか分からない事を身に染みて感じた。
「ふふ、なら今度はユカリちゃんが教えてね、私ももっと素直になりたい」
初めてユイちゃんが素直に笑った。
頬が少し赤くて口角が上がるだけで悶絶する程可愛くて何より、とっても幸せそうだ。
「・・・・うん、私に任せて!私ね!もっとユイちゃんの魅力引き出したい!もっと好きになりたいの!」
胸がとても熱い、笑みを見ただけなのにこの破壊力、感情を取り戻したら絶対に美人になる。
でもそうなったら誰かに取られてしまうのでは、そう思うと少し複雑な気持ちになる。
だって既に溺れる程魅入ってるんだから。
「えっと・・・」
「“行ってきます”でしょ?」
「うん・・・またね」
「そこは言う所だと思うよ!?」
「残念、臍曲がりでごめんね?」
結局は言う事を聞かないユイちゃんは舌を出して幸せそうな笑顔でそのままポケットワープで一旦光星に帰って行った。
「まったくもう!私だって頑張ってやるんだから、行くよスェウちゃん!」
私はスェウちゃんの手を引っ張るとその光景が面白かったのか健やかに笑っていた。




