「遠征前に・・・」 その5
「ただいm―――― 嘘でしょ?」
色々あったけど皆意外と前向きなことに驚いた、家に帰って寝ようと思ったら物が散らばっていた、冗談じゃないくらいに災害にでも遭ったのかというぐらい。
「おかえりなさい、物が見つからなくて困ってるから助けなさい」
「しかも命令!?帰って来たばっかなのに!?謝るとかは!?」
は?とちょっと苛ついた顔をして怖くて止めた。
「あ、えと・・・ごめん・・・いきなり怒鳴って」
「むぅ・・・また癖が出てる」
「うぅ、だって強く言えないんだよ〜!どうしても気にしちゃって・・・」
多分この癖は治ることは無い、十年以上繰り返してるから息を吸うのと同じぐらいの感覚になってきてる。
ユイちゃんの不満そうな顔を見ると尚更腰が低くなる。
「数日後には遠征だから早く寝なさい」
ユイちゃんはそれだけ言って寝てしまった。この時は何を言っても口を聞いてくれない、私は仕方なく作り置きしてくれたご飯を食べ終えると身体を洗い少し休み寝ることにした。
ユイちゃんとの距離は縮まった筈なのに突き放す性格が関係を邪魔してる気がする、後少し・・・あとちょっとなのに。
「ねぇ、ユイちゃん・・・」
いつもの二人用に買ったベッドで先に横になるユイちゃんに声を掛ける。
「なに」
面倒くさそうに此方に身体を向けてくれない。
「・・・」
長くいるのにまだお互いの仲は好ましいとは思えない、だから一歩、踏み出した。
「私・・・ユイちゃんの笑顔が見たい」
向けてくれないならこっちから寄り添う、例え拒絶されてもこのままの関係じゃ満足出来ないんだ。
「ユイちゃん・・・いつか見せて欲しい――― ううん、絶対見るから・・・ユイちゃんの笑顔を・・・見るまで絶対死なないで」
「こっちのセリフ・・・」
少し居心地が悪いこの家で私は一年過ごしたのに未だに他人の家感が残ったまま運命のその日が来るまで過ごすのだった。




