表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
苦労人副騎士団長と最強女公爵による思い出話  作者: 波望
第一章 学園時代の思い出話 〜剣術大会
8/14

第6話 悪役令嬢の話③

暫く馬車を走らせれば見えてくるのは立派な王城。

うちもかなり大きいけれど王城は比にならないくらい大きい。

装飾なども凝っており、前世で見たお姫様の出てくる映画のようだ。

本当にすごい。

ゲームで見るよりもずっと圧巻な王城を見つめていれば、隣に座るお兄様から声をかけられた。


「カリーナ、そろそろ降りようか」


「はい、お兄様」


門の前で馬車が止まり、お兄様のエスコートで馬車からおりた。

お兄様は何度か王城に足を踏み入れているらしいが、私は初めてだ。

そのため、右も左も分からない私はトコトコと迷うことなく歩くお兄様についていく。

はぁーっ、王城広すぎでしょ。

流石、国のシンボルってところか。

暫く歩けば、庭園のようなところに辿り着いた。


「わあ、綺麗!」


思わず声を出してしまうほどに庭園は美しかった。

緑色の芝をベースに咲き乱れる色とりどりの花、輝く太陽に照らされ、水がキラキラと光る噴水。

何より!

そこにものすごーく美味しそうなスイーツたちが並ぶテーブルがあることによって素晴らしき空間へと化しているではないか!……ではなくて。

うっかり食べ物の方へいってしまった視線を真ん中に集まっている数人の少年少女の方へと向ける。


くっ、やっぱりスイーツやこの景色と並んでも遜色ないわ……。

来ると思ったわよ、攻略対象に悪役令嬢!

別に貴方たちよりも花とか噴水とかスイーツの方に気を取られてたとか! そういうんじゃないんだからねっ!

か、勘違いしないで!


……と、一人脳内でそんなしょうもない茶番を繰り広げていれば、お兄様がそっちに向かって穏やかな笑みを浮かべ近づいて行く。


「久しぶりだね、シリウス、プリアモンド」


「カインさん!」


「カイン」


私は目を見開き、その場でかたまった。

お兄様が声をかけたのは、紛れもなく攻略対象の第二王子ーーシリウス・グランタード。

現国王と同じ漆黒の艶やかな髪にアメジストのような紫色の瞳という王子に相応しい特徴を持って生まれてきた少年。

ゲームではほんの少ししか公開されていない幼少期の姿ではあるが、その特徴とやけに整った顔立ち、それに第二王子という立場からすぐにシリウスその人だと分かった。


ただ、異なる部分がひどく目立った。

ゲームとは明らかに顔つきが違うのだ。

ゲームでのシリウスは、優秀な兄である王太子への妬みや嫉妬ですっかり卑屈な性格になっていた。

それは幼少期からで影のある暗い表情が多かったというのに。

今のシリウスはまるで太陽のように明るくニコニコと満面の笑みを浮かべているではないか。

何があったんだ、シリウス!


そして、私がその場でかたまってしまった理由は別にある。

目の前にいるのは、茶色の髪を半分後ろに撫で付けた澄んだ緑色の瞳の少年。

お兄様と同い年くらいだろうか。

長身で涼し気な切れ長の目に、ひどく端正な顔立ちの彼から私は目が離せなかった。

プリアモンド、そう呼ばれた少年を私は知らない。


それはつまり、ゲームに登場しないということだ。


有り得ない、ここにいるのは本当に一部の貴族の子息令嬢。

そんなところに呼ばれるなんて絶対にゲームの攻略対象になりうる身分の人間だ。

何よりも、こんなにイケメン。

これで攻略対象じゃないなんてあり?


「なんだ、女の子じゃん」


そんな私を他所に二人の後ろから顔を出したのは深緑の髪と瞳の美少女、おそらく悪役令嬢のアリシア・レイニーであろう人物。

彼女は、ゲームの中ではいつも派手な化粧で装飾品もジャラジャラとつけていた。

でも今は、シンプルだが間違いなく一級品のドレスを身にまとい、装飾品も最低限のものしか身につけていない。

だが、それが逆にアリシアの美貌を引き立てていた。

しかも、言葉遣いが貴族令嬢にしては少々宜しくないのでは?


おかしい。

すっごくおかしい。

転生した私が言うのもアレだけど、まさかバグってる?


取り敢えず気を取り直し、私は三人に向かってドレスの裾を掴み礼をする。


「皆様、初めまして。私はカリーナ・サラヴィラと申します」


「初めまして、僕はシリウス・グランタード。で、こっちは」


シリウスはニコニコしながらそう言い、横にいるアリシアに挨拶を促す。


「私はアリシア・レイニー。よろしく、カリーナ」


腰に手を当て、やはりゲームとは違って貴族令嬢らしくないアリシアに「よろしくお願いします」と返す。

自然とその横へと視線が流れ、そこにいたのはプリアモンド。

ゲームに出てこない、イレギュラーな少年。

彼は私が凝視していることに気づいていないのか、平然とした態度で口を開いた。


「俺はプリアモンド・キース。カインとは同い年だ。よろしく。アリシアは……少し口と態度が悪いが仲良くしてやってくれ」


「うるせぇよ、プリアモンド!お前は私の兄貴かよ。つか、お前もそこまで口良くないだろ!」


「いや、そういうところだぞ」


キレるアリシアにプリアモンドはどこか呆れたように返す。

……ていうか、キースって宰相と同じ家名じゃん。

ゲームでカリーナの婚約者だった攻略対象もキース家の嫡男。

……はい?

近くでシリウスとのほほんと喋っているお兄様の服を私はちょいちょいと引っ張る。


「ん?どうしたんだい、カリーナ」


「お兄様、プリアモンド様は宰相様のご子息なのですか?」


「え、そうだけれど。プリアモンドは双子の弟でね。双子の兄の方が家を継ぐ予定だけどプリアモンドは頭がいいうえに剣技の才能があるからね。どうなるかは正直不明」


不思議そうにしつつも聞いてないことまでバンバン答えてくれるお兄様。

双子設定……そんなものゲームにあっただろうか。

私はふぅと息を着く。


どうやらこの世界は私が知ってるゲームの世界とは少し違うらしい。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ