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苦労人副騎士団長と最強女公爵による思い出話  作者: 波望
第一章 学園時代の思い出話 〜剣術大会
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第12話 双子と親友

一言で一、二年のトーナメントを言い表すのであれば、圧勝だろう。

白髪、ユーリとかいう馬鹿は意外にもちゃんと実力があったらしく決勝まで勝ち進めたがカリーナに一瞬でのされ準優勝だった。

特にカリーナは剣術大会なのにセレナ・ランスターの取り巻きに向かって笑いながら精神攻撃で攻めていてカインと濃い血の繋がりを感じた。


二年はシリウスが黄色い歓声を浴びながら終始優勢で優勝した。

剣術大会には体裁を考慮して参加していないアリシアをチラチラ見ては破顔していたが、それでも優勝出来るのは謎だ。

とはいえ、そのうち王太子から王太子の座とアリシアを略奪して結婚しそうなだけある。

アリシアのためだったアイツはそのくらいやるだろう。


そして、そうこうしているうちに三年生のトーナメントが始まろうとしていた。

王太子に騎士団長の甥、宰相の嫡男。

やけに大物が揃った学年であるため観客の期待値は高いだろう。

まあ、ただいつも通りやるだけだ。

初参加な訳でもないし、リラックスしていこう。


「プリアモンドさん、トーナメント表貼り出されてましたよ」


軽くウォーミングアップをしていれば、先程優勝したシリウスがわざわざそれを伝えに来てくれた。


「悪いな。と、その前におめでとうと言うべきか」


「ありがとうございます」


純粋な笑顔をみせるシリウスに俺は苦笑する。

アリシア絡みでもこんくらい余裕持ってたら俺がフォローする必要も無いのにな……。

トーナメント表を確認するため、俺は貼り出されている廊下を歩く。

そして、トーナメント表を確認した俺は青ざめることとなる。


「なんで初戦がヨティアスなんだよ……!」


初戦からヨティアスなうえに当たり前だが順調に勝ち進めば王太子かガイナスと当たる。

残ればの話だが準決勝では王太子とガイナスがあたり、王太子は分からないが面子からしてガイナスは普通に準決勝に残りそうだ。

王太子を倒したガイナスと対戦する方がまだ気持ちが楽なので是非そっちでお願いしたい。

剣技よりも俺のメンタルが負けそうだ。

トーナメント表の前から動けずにいれば、背後から鋭い視線を感じだ。


「……ヨティアス」


「ふん、私が初戦で悪かったな」


耳の下で結われた赤色の長髪は酷く人の目を引いた。

そして、久しぶりに言葉を交わしたが相変わらず嫌味な感じだ。

とてもじゃないが自分と双子だとは思えない程に似ていない。

こんな奴と婚約してたら鍛えられるよな、マーガレット嬢も……。

ヨティアスと無言は気まずいので俺は無難な話題を選んで話し始める。


「……お前、なんで公務に来ないんだ。授業もサボりがちだと先生方が言っていたぞ」


ただ、無難も何も話題がこれくらいしか見当たらなかった。

俺とヨティアスの仲は幼少期から最悪で、というかヨティアスが俺のことを一方的に嫌っていたため気がついたら仲が拗れていたという方が正しいかもしれない。

物心がついた頃から双子の兄に拒絶されたのは幼少期の俺にとって結構ショックな出来事だったと記憶している。

だが、成長するにつれてそんな感情はどんどんなくなっていき、関わりも薄くなっていった。

双子だというのに好きな食べ物も趣味も知らない。

父上と母上には申し訳ないが、ヨティアスと和解する日が来るだなんて思っていない。

なんてったって、ヨティアスは俺の事をゴミを見るような目で睨んでいるのだから。


「お前如きが私の事に口出しするな。鬱陶しい」


口から出てくる言葉は罵詈雑言。

明らかに俺を見下した発言ばかり。

コイツと一緒にいるのは息が詰まるようだった。


「そうか。まあ、確かに俺には関係ないことだしな。……俺はちゃんと忠告したからな?」


しかし、言われっぱなしは気に食わない。

気がつけば頭に血が登っており、俺は最後にヨティアスの胸ぐらを掴みそう言うと、さっさとその場から立ち去った。

どうやら俺はヨティアスと喋っていると途中から情緒不安定に陥るらしい。

いまいち冷静に話せた記憶が無い。

途中までは穏便にやり過ごそうと思ってたんだけどな……。


「今日も大荒れだね、プリアモンド」


「本当にな……は?」


自然な流れで話しかけられ返事をしたが、そこにはいるはずのない人物がいた。


「カイン……なんでお前がここに」


病気は治りかけらしく、そこまで顔色は悪くない。

元気な時とあまり変わらない姿でカインはそこに立っていた。


「なんでも何も、親友の晴れ舞台を見に来たんだよ」


そう言って微笑むカインの表情は王太子が関わっていない分柔らかかった。

昔、ヨティアスの冷酷な顔を見た後にカインの笑顔を見ると少し心が楽になったことを思い出す。

いや、カインだけじゃない。

誰でも良かった。誰かの笑顔を見ると救われたような気持ちになれた。

そんな幼い頃の朧気な記憶。


「いや、駄目だろ。ちゃんと休んでなきゃ」


「私は大丈夫。それより、プリアモンドの方こそ大丈夫なのかい?」


「そんなの、」


大丈夫に決まってる。

そう言いたかったのに喉にへばりついたみたいに言葉が出てこない。

俺はカインを睨んだ。


「魔法だな」


「うん、正解」


カインがパチンと指を鳴らせば、へばりついたような違和感は無くなった。


「ごめんね、どうせ嘘をつくと思って魔法をかけておいたんだ」


「便利だな闇は」


闇と光は特別で物理攻撃だけでなく精神攻撃も出来る。

とはいえ、馬鹿は使えないらしいので器用なコイツだからこそ出来ることなのだろう。

カインは近づいてくると掴みどころのない様子で俺の肩に手を置いた。


「ヨティアスの言うことなんか気にしなくていい。私はアイツなんかよりもずっとプリアモンドのことを見てきたからね」


近くで見るカインの目は何かを訴えかけているようだった。

瞳の奥が、普段とは違う。

真剣に、真っ直ぐに何かを伝えようとしている時の目。

長い付き合いからそれだけは分かった。

と、その時。肩からカインの手が離れ、背中を勢いよく叩かれた。

バシンッといい音が廊下に響き、俺は「いっ!」と声を漏らす。

カインを見れば、元の掴みどころのない表情に戻っていた。


「いつも通りでいい。何も気を負う必要は無い。全員ぶっ倒して来な、プリアモンド」


コイツはこれを伝えたかったのか。

珍しく言葉遣いが乱れているカインに俺は「ああ」と短く返事をする。

ヨティアスでもガイナスでも王太子でも、他の奴らでも。やる事は変わらない。

カインのお陰でようやく落ち着くことが出来た気がした。

試合はこれからだ。

今回の一言コメント

「登場人物の性格と言葉遣いが迷子(今回は特にカイン)」

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