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9 S級冒険者登場と魔法少女

 「“あいつ”には何人もの妖魔ハンターが返り討ちに合っているんです。」


私とジニーはその後立ち寄った喫茶店にて咲夜さんから妖魔ハンターに関してレクチャーを受けていた。


 我々が知らなかっただけで、いわゆる妖怪やモンスターとも呼べる存在は我々が思う以上にたくさん存在し、その怪物どもが引き起こす事件は実は世界中で日常茶飯事なのだそうだ。


 しかし、そのことを公にすると民衆がパニックになってしまうため、世界各国で『妖魔ハンター』と呼ばれる存在が人知れずそれらの怪異を退治しているのだという。


 咲夜さんは代々続いた陰陽師の家系の後継者であり、高校入学時には正式に妖魔ハンターの一人になったのだという。

 

 現在までもこの都市近辺担当の妖魔ハンターとしてそこそこ活躍されているそうなのだが…。


 2週間くらい前から隣町で『あまりにも恐ろしい妖怪』の目撃例が相次ぐ事件が起こっているのだそうだ。


 目撃者がショックのあまりまともにしゃべれない状況が続いており、その目撃者の中に『100戦練磨のはずの妖魔ハンター』二名が含まれているのだそうだ。


 うち1人は咲夜さん同様駆け出しで、もう一人は妖魔ハンターが返り討ちに合ったと聞いて出てきたベテランハンターだという。


 咲夜さんより明らかに実力のある退魔僧があっけなく返り討ちに合い、さらに、一昨日にはこの町でも目撃されたのだそうだ。

 

 自分だけでは対応できずに、応援を要請していたが、『実力者の退魔僧』が返り討ちになったことで、多くの退魔ハンターがしり込みしているのが現状なのだとか。


 そこで、やくざやら武闘派の暴走族を単身撃破した私が『霊能力がある』と分かったことが光明に繋がったのだという。


 「なにしろ、例のやくざ事件も、暴走族事件も単に彼らの暴走を考えるには不自然すぎましたから。妖怪が彼らを操っていたと考えた方が不自然でした。


 妖怪が操ったやくざや暴走族を『霊能力に目覚められた』華蓮さんが華麗に撃破されたのですよね?!!」


 キラキラした目で私を見つめてくる咲夜さんにどう返事をしたものか、私とジニーは思案にくれるのだった。 

 

 

~~☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆~~



 「のわーー!!」

 クリス王子は間抜けな叫び声を上げながら吹き飛んでいき、ユリアン君が必死に王子の元に駆け寄っていく。


 ほとんどの人たちはそのさまを唖然としながら見送っていた。

 あんまりすぎる展開に頭がついて行かなくなっていたようだ。


 だから、エリザベス嬢含むほぼ全ての人が気付くのが遅れたのだ。


 騎士団長の長男の細マッチョのエクシスはおつむは残念だが、こと剣の腕はA級冒険者に匹敵しかねない。


 そのエクシスが虚を突く形でエリザベス嬢に斬りかかったのだ。


 「無礼者!王子に何をする!!」


 だから、誰も対応できなかった。

 オーラの動きから速攻動けた私たち以外は!!


 これで人生二回目の『真剣白刃取り』ですよ!


 腕前自体はあの『妖刀を操っていた剣士さん』より上だったので、少々ビビりました。


 でも、精神は普通の人だったエクシスは私ががっちりと己の刃を受け止めたのを見て、驚愕で動きが止まってしまったのだ。


 だから、私は剣を持ったまま少し力点をずらしてあげると、エクシスは簡単に態勢をくずし、そこを私は蹴り飛ばしてやった。


「騎士の剣は弱い人を守るためのものじゃないのかい?その剣でか弱い女性を傷つけようとするとは騎士の名折れだね!」


 そのままエクシスのみぞおちに掌底を叩き込み、完全に無力化する。


『華蓮、みんなが呆然としているうちに引き上げるよ!』


ジニーの助言に従って、私たちはその場から速攻離脱した。


 

~~☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆~~



 婚約破棄騒動の後日、私とギルドマスターのゲイリー氏、受付のミーナ嬢の3人でワニナの冒険者ギルドで任務の達成報告の話し合いをしていた。


 概略は他の情報源からも伝わっていたようだが、当事者からの報告はやはり違うと、ギルドマスゲイリー氏はうなずいていた。


 「それにしてもクリス王子は悪い人ではなかったみたいだけど、ものすごく残念過ぎてがっかりにゃのです。」


 「まあ、その通りではあるんだが、王族をはく奪されたわけではないし、表でそんな発言をしたら不敬罪になってしまうぞ。」


 ゲイリー氏は苦笑いしながら肩をすくめている。


 「それにしても、見た目は絶世の美男子のクリス王子と美少年ユリアン君の取り合わせは見たかったのです。」


 『そうそう、あれは『一見の価値あり』だよね♪』


 ジニーがミーナ嬢の発言に同意してうんうんうなずいている。

 私にしか聞こえないんだけどね。


 

 「公爵家の令嬢が怪我や死ぬリスクを防いでくれるという大切な仕事をこなしてくれて本当に助かった。

 お前さんをA級に昇進させていた甲斐があったというものだ。

 報酬に色を付けて渡させてもらったよ。

 ところで、これからどうする予定なんだ?」


 ゲイリー氏がじっと私を見つめながら話しかける。


 「魔王軍はあちこちで暗躍しているらしい…という情報はいくつも入ってきている。

 しかし、直接的な大規模侵攻は今のところは起きているという話は聞かない。

 だから、お前さんさえよければ、しばらくこの街のダンジョンアタックをしないか?」


 「ギルマス。わざわざ私にダンジョンアタックを勧められるのは大切な意味がありますよね?」


 私もゲイリー氏をしっかりと見返しながら答える。


 「さすがだね。

 ここワニナの街の近くにはいくつかダンジョンがあるのだが、その中にユニヴァーサル・ダンジョンと言う世界でも指折りに大規模なダンジョンがあってね。

 深い階に出てくるモンスターも非常に凶悪で、魔王軍との強敵との模擬戦闘になるし、深層階で手に入る宝物は古代文明によって作られたような逸品がよく出てくるのだよ。

 冒険者の仕事を続ける限り、いずれ魔王軍とは遣り合う必要があると思うのだが、ダンジョン探索はうまく活用すれば、冒険者を大きく強化してくれるのだ。

 もちろん、それ相応のリスクはあるが、魔王軍との戦いよりはマシだ。」


 『なるほど。高リスク高リターンのダンジョンは上級冒険者にはお勧め…という話なのだね。』


 ジニーが言う通り、この世界での戦闘などに不慣れな私たちはダンジョンアタックでいろいろな常識を身に付けておいた方が良さそうだ。


 私たちはゲイリー氏の提案に乗ることにした。


 

~~☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆~~


 「姐御!ユニヴァーサルダンジョンに挑戦されるんですか?!

ぜひ、俺たちにも協力させてください!」


 パーティ『銀の流星』のリーダー戦士のドレンがきらきらと目を輝かせながら申し出てくれた。


 うん、気持ちは嬉しいのだけれど、むさいおじさんに言われると微妙だなあ。


「あー、ドレンよ。お前さん方が改心してくれたのはうれしいことだし、普通ならB級に近いお前さん方なら先導役にいいはずなんだが、カレン嬢がちょうどいいはずの深層では、お前さん方でも足手まといになってしまうんだ。

 出来れば、お前さん方以上の実力者と組んでもらいたいんだよ。」


 「えええ…。…まあ仕方ないですね。でも、俺ら以上の実力パーティは今このギルド近辺にいますかね?」


 「ギルドマスター、今ちょうどいい探索向きのパーティは出払っていますにゃ。

 B級が一応二組いますが、どちらも『ごり押し戦闘』タイプで、深層探索にはあまり向いていにゃいと思います。」


 「むう。だったら俺が一緒に行けば…。」


 「マスターはA級の実力者だけど、その二組以上の“脳筋冒険者”だったにゃ。同じA級なら、この前戻ってきたベルゼさんだったらちょうどよかったにゃ。」


 「ううむ。ちょうどベルゼは王都に用事があると出かけて行ってしまったしな…。」



 「そちらのお嬢さんのダンジョンエスコートの相手にお困りのようですね。

 よかったら、私がご案内しますが?」


 私たちが受付カウンターで困っていると、後ろからイケメンボイスの男から声がかかってきた。


 「おいおい、何をキザな……。あ!あんたは?!」


「すごいにゃ!!あの“仮面の騎士”様が来られたにゃ♪」


 ミーナさんの言うとおり、その冒険者は軽装の鎧に身を包み、金色の上等な仮面を被っていた。


 ゆるくウェーブのかかった金髪のその長身の青年は仮面を外したらさぞやハンサムだろうことは想像がついた。 

 そして、身にまとうオーラから相当な実力者であり、そして…。


 「ミーナさん、この人は?」

 「S級冒険者にして、恐らくワイズ王国最強の冒険者の“仮面の騎士”様にゃ。

 圧倒的な剣術と強力な法術を自在に使って、凶悪なモンスターもバッタバッタ倒しているのにゃ。

 にゃんと、ダンジョン探索もたった一人でかなりの深層に到達されているのにゃ♪」


 ミーナさんが誇らしげに語ってくれる。

 その傍ら、ゲイリー氏はとても渋い表情をしている。


 「なるほど、S級冒険者様から直接お誘いいただけるとは光栄です。

 ぜひとも“突っ込んだ話”をギルマスと三人で打ち合わせしてみたいですね。」


 「おおっ?!話が早いですね。私としてもギルマスと三人で内密の話ができるのはすごくありがたいです。

 ゲイリーさん、よろしくお願いしますね。」


 ニコニコしながら、仮面の騎士はゲイリー氏に声をかける。


 「……わかりました。では、わしの書斎で三人だけで話をすることにしましょう。」

 ものすごく嫌そうな表情でゲイリー氏が同意している。

 “仮面の騎士”様は悪人ではなさそうだが、なかなかいい性格をしておられるようだ。


 

 「ギルマス、お部屋の用意ができました。」

 

 いかにもできる女性という感じの人がゲイリー氏に声をかけてきた。

 後でわかったけれど、サブマスターの元魔法使いのエミリー氏だそうだ。


 エミリー氏はギルドの奥に私たちを部屋に案内すると、表情を変えずに話しかけてきた。


 「皆様が今からお話しされることは申すまでもないと思いますが、“他言無用”です。

 よろしくお願いしますね。」


 「もちろんだとも。ああ、またストレスが激増しそうだ。」

 「おっしゃるように魔王軍の不穏な動きや王室に関わる騒動に関する話も出そうだからね。

 いやあ、ギルマスは本当に大変だね。」

 

 愚痴をこぼしたゲイリー氏に“仮面の騎士”様は軽口をたたく。


 「いえいえ!少なくとも、王室の騒動に関することをあなたがおっしゃいますか?!

“クリス王子”!!」

 

 私の言葉にギルマスとサブマスは顔色を変え、仮面の騎士ことクリス王子は仮面を外すとにっこりと笑った。


 「さすがですね。カレンさん。魔法の仮面の“認識阻害の魔法”は効果がなかったようですね。

 さすがは“魔王軍13魔将”の1人を倒した真の勇者だけのことはありますね♪」


 クリス王子の爆弾発言にギルマスとサブマスは完全に固まった。


(続く)

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