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勇者として召喚された武闘派系魔法少女の異世界無双  作者: はなぶさ 源ちゃん
第1部 異世界召喚された魔法少女は冒険者になる
5/19

5 冒険者登録とテンプレ・イベントと魔法少女

「あらためて、舎弟としてお願いします!」


 待て?!あんたは誰だ?!!

 学校帰りにつなぎを着た、長身の童顔の青年がいきなり土下座を始めたのだ!


 数日前にも暴走族の元総長が同じように舎弟になろうと土下座を……声がとても似ているんだけど?!


 「はい、元烈風会総長の土門です!暴走族からは完全に足を洗いました!見た目もきちんとした一般人になりました!ですから、ぜひ舎弟にしてください!」


 待て!一般人は他人の舎弟になんかなろうとは思わないぞ!そもそも私は舎弟とか募集していないから!!


 私は『自分は弟子を取らない主義だから』とか、懸命に主張して、なんとかその場から逃れた。


 「そうか、もっと精進したら弟子として認めてもらえるのですね?!」


 土門氏よ、人の話を聞け!

 ただの女子高生が弟子や舎弟なんか取るはずがないと言っているんだ!!

 …ああ、もういなくなっている!!


 この事件も目撃者が多く、「さすがは“特攻狂戦士”だ!」と学校のあちこちでささやかれたのだった。ちくしょう!


 

 さらに数日後、家の用事で北見剣道場に寄ったところ…なぜ、土門氏がここにいるのだ?!


 「自分自身を磨きなおそうと思いました!」

 とても元暴走族総長とは思えないさわやかな笑顔でこちらに話しかけてきた。


 「華蓮ちゃん、彼いいね!」

 朽木師範代がニコニコしながら私に話しかけてくる。


 「それにしても華蓮ちゃん、すごいじゃん。暴走族の総長を正道に立ち戻させるなんて、誰にでもできることじゃないよ!」

 

 土門氏よ!そんなことまで告白したのか?!


 師範代の言葉に周りの道場生さんたちもうんうんうなずいているんだけど?!


 「俺、華蓮さんのおかげで真人間に戻れたんです!まずは立派な剣士になって、少しでもそのご恩に報いたいと思います!」

 

 ニコニコ言い切る土門氏になぜか、道場生さんたちが暖かい視線を向けながら、拍手を贈っている。


 「剣の筋もいいし、根性も座っているし、土門君は絶対にいい剣士になれるよ!

 華蓮ちゃん、いい門下生を紹介してくれてありがとう!」


 いや、私全然土門氏を道場に紹介なんてしていないし!


 「華蓮さんに認められるくらいの剣士に絶対なるっす!」…て、土門氏も何を言っちゃってんの?!


 『わああ、いい話だなあ♪』

 ニコニコしながら言い切るジニーに私の精神は完全に止めを刺されたのだった。



 

 関東最大の暴走集団が解散し、総長他何人もの幹部が『真人間に生まれ変わった(BY土門)』という素晴らしい状況になる一方、私の学校生活はさらに過酷なものになった。


 ほとんどの生徒も教師も私を腫物を触るように扱いだしたのだ。


 『やくざや暴走族を一人でボコボコにする狂戦士』をいじめたり、どうこうする人はいなかったのが不幸中の幸いではあったが、ただでさえ友達らしい友達がいなかった私は校内ではほぼボッチだった。


 そして、校外では…。


 

 「あの、北見華蓮さんですよね?!」

 

 どこかで見たような制服の、どこかで見たような女の子が声をかけてきて…。


 「あっ!河井さん!!」

 「覚えていてくれたのですね!嬉しいです!」


 やくざの事務所から助け出した美少女高校生の河井美奈さんが嬉しそうな顔で私を見つめていたのだった。



 

~~☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆~~



 『へえ、ここが冒険者ギルドか。ラノベなんかの定番だね。いよいよだね。華蓮。』

 

 私たちは城を脱出すると、ゲストランドの王都から隣国で魔王国により近いワイズ王国の商業都市ワニナの街へと行き、そこで冒険者ギルドに登録することにした。


 身分証明の代わりになるものを作っておきたかったのと、生活費などを稼ぐのにちょうどいいと判断したのだ。


 ワニナの街はそこそこ大きく、ゲストランドの王都と比べても遜色のないくらい栄えていて、人通りも多いようだ。


 ワニナの町まで普通の旅人なら歩いて1週間くらいの距離だったのがが、『私たち』の足だと、道なき森の中を滑るように走っておよそ4時間くらいだった。


 街の門で仮の身分証明書を作り、私たちは剣と魔法の杖の紋章の掲げられた石造りの立派な建物に入っていった。

 


 夕方になる少し前くらいの時刻のせいか、かなり広めのスペースにはまばらにしか人がいなかった。


 おおっ?!あれが、ラノベでよく見る冒険者ギルドの受付なのだね。

 美人の受付嬢さんの比率が高いようだけど、時々、男性職員さんもおられるようだ。


 『華蓮、かわいい女の子のとこへ行こう!あの左から2番目の子が特にかわいくていい!』


 猫耳のかわいい系の受付嬢さんを見つけて、ジニーがはしゃいでいる。

 たしかに、むさいおっさんよりは私としても可愛い女の子の方がいい。

 ダンディーなイケおじとかだったら、ちょっと考えちゃうんだけど…。


 

 「あのう、よろしいでしょうか?」

 私より少し年下に見えるショートヘアの猫耳受付嬢さんに声をかける。


 「はい、にゃんでしょうか?」

 

 キター!!語尾とかに『ニャン』が付く、かわいい猫系女子!!

 私とジニーはついつい、我を忘れて盛り上がってしまった。


 「あの、もしもし?」


 「おっと、失礼。冒険者登録をお願いしたいのです。」

 

 私は門番さんに教えてもらったように、受付嬢さんに冒険者登録をお願いする。


 「ふむふむ。魔法の水晶にかざしても大丈夫にゃので、犯罪歴はなしですにゃ。身のこなしも素人ではにゃさそうですので、傭兵でもされていたのですね。」


 猫耳受付嬢さんミーナさんはてきぱきと書類作業を進めてくれている。


 名前:カレン 人種:人間 年齢:16歳 職業:魔法剣士


 「にゃんと?!魔法剣士とは珍しいのです。そして、私よりも年下にゃのですね?!

 魔王軍が動き出したという話もあるなかで、期待の新人さんが出てくれるのは心強いのです!」


 おっと、ミーナさんは私より年上だったらしい。

 

 「カレンさんもFランクから始めてもらうのですが、この町の周辺にも魔物が増えてきたという情報が入っているので、早めに昇格して魔物退治をしていただきたいですね。

 実力のある人は昇格できる試験が明日にもあるので、ぜひ参加して欲しいのにゃ♪」


 ミーナさんがキラキラした目で私を見上げている。


 冒険者ランクは(よくあるラノベのように)Fランクから始まり、E➡D➡C…と昇格していくのだが、実力の目安として

F:入りたて E:初心者 D:一人前 C:ベテラン B:一流 A:超一流 S:世界ランク SS以上:伝説

 なのだそうだ。


 『よし、とっととSランクになって、魔王を討伐しちゃおう♪』

 

 さすがはジニー。とっても前向きなコメントありがとう。


 

 「おいおい!そんなひょろっこいおねえちゃんが期待の新人だって?!」

 

 柄の悪そうな男性だけの冒険者らしき集団が罵声を飛ばしながら私たちに近づいてきた。

 

 「あにゃたたちは『銀の流星』の人たち?!にゃんの用ですか?!冒険者ギル語内ではケンカはご法度ですよ!」

 

 ニーナさんが明かに警戒している。

 

 『雑魚が絡んでくるなんて、本当にラノベのテンプレ通りの展開だね♪』

 ジニーさんや。確かにあなたと比べると圧倒的な雑魚だろうけど、連中の雰囲気から『北見一刀流道場』の師範代クラスの実力はありそうだ。

 少なくとも、一般人にとっては剣の達人に準じる実力のある、要警戒な人たちなわけですね。


 「もちろん、ケンカなんかする気はないさ。

 ただ、初心者のお嬢さんにベテラン冒険者の俺たちがちょっと『講義』でもして差し上げようかと思っただけだよ。」

 

 銀の流星のリーダーらしき戦士と思しき男はにやにや笑いしながら近づいてくる。


 こんな人相の悪いおっさんたちとはお近づきになりたくないんだけどね。

 どうやってお断りしようかな…。



 「おい、そこの男ども!その辺にしておけ!!」


 女性の力強い声がギルド内に響き渡り、私たちや多くの人の目が声を発したと思しき女性の方に集まった。


 「なんだと!…うっ……。」

 

 女性の声に反応して怒鳴ろうとした暁の流星の戦士はその女性を見て、声を途きらせた。


 私よりさらに背が高い、頑強そうな赤い長髪のその女性は使い込まれた装備、圧倒的な存在感と共に目にした人たちの目を釘付けにした。


 「あ…暁の死神…ここに帰ってきてやがったのか…。」


 「そんな変なあだ名で呼んでほしくないな。私にはベルゼビュートという立派な名前があるんだ。

 ところで、間もなくBランクに届こうかという『銀の流星』のメンバーともあろう方々がまさか、初心者に絡むという恥ずかしいことをされているわけじゃあないよな。」

「も…もちろんだとも…。」

 

 ベルゼがひと睨みすると、銀の流星のメンバーたちはすごすごと引きさがっていった。


『うわー、この人かっこいい♪さしずめ、ワイルドイケメン系女子と言った感じかな♪

 この人ならあの『機械化鵺』でも相手にできそうだね。』


 うん、ジニーの言うとおり、とってもかっこいいね。出ているオーラも人柄のすがすがしさと戦士としての強者ぶりが感じられるね。

  


 「ありがとうございますにゃ!助かったのです!」

 「ありがとうございます。変なトラブルに巻き込まれずに済みました。」


 ミーナと私がお礼を言うと、ベルゼは大したことないという風に手を振りながら答えた。


 「ギルド内でもめ事なんかご免だからね。

 まあ、私が介入しなくても、そちらのお嬢さんなら自力で切り抜けたような気はするけどね。」


 ベルゼは私の方を意味ありげに見ながら言った。


 『すごい!この人、私たちの実力をうすうす察しているよ!』

 「そうなのにゃ?!カレンさんはそんにゃにすごい人だったのにゃ?!」


 「そうだね。きっと遠からず私と同じA級冒険者になると思うよ。」


 言いながらベルゼは去っていった。


 『かっこいい!かっこいいよお姉さん!』

 うん、私もジニーに同意します。


 「よし、未来のA級冒険者の門出を祝福して、今晩は私がご飯をおごるにゃ♪」

 

 おお?!早速トラブル転じて福となすだ!変な冒険者が絡んできてくれたおかげでいいご縁ができてくれました。



 

 「そんにゃ風に今、この国はすごくごたごたしているにゃ。

 そんにゃ時に魔王軍が動き出した…というはにゃしがあって、冒険者ギルドを含めて、市中は大騒動になっているにゃ。

 それにゃのに、暫定皇太子さんは行動を改めようとしにゃいのにゃ…。」


 ミーナさん、王室のことを酒場でどうこう言うのはヤバいのでは?!

 それにしてもミーナさんは絡み酒だったようで…。


 2人で乾杯すると、最初はミーナさんは陽気にしゃべっていたけれど、飲みが進むにつれて、だんだん仕事…それも治安悪化による心労が増えたことへの愚痴がどんどん増えだしたのだ。


 ただの打ち上げだったら嫌な展開だけど、この国の内情を裏情報に詳しい冒険者ギルドの受付嬢がどんどん話してくれるのは冒険者を始めた立場としてはとてもありがたかった。

 

 そんなわけで、どんどんミーナさんに話の先を促しているのだ。


 なんでもこの国・ワイズ王国は現在後継者騒動が起こっているのだそうだ。


 元々は長男であるリチャード第一王子が暫定皇太子だったのだが、優秀すぎる弟のクリスタレス第二王子が頭角を現すと貴族たちが第一王子派、第二王子派に割れて争いだしたのだという。

 さらに第二王子が剣も魔法も抜群の才能を見せだして、とうとう第二王子が暫定皇太子になったのだそうだ。


 問題が混迷していることには、最近あれだけ優秀だったクリスタレス王子の言行がおかしくなっているのだそうだ。


 婚約者のエリザベス・スチュアート公爵令嬢を粗略に扱いだし、自身の学園での側近たちと一緒にどこぞのかわいい系の子爵令嬢に夢中になっているのだという。


 『最近はやりの“悪役令嬢もの”のような展開だね。』

 ジニー、適切なツッコミありがとう。

 

 近いうちの魔王軍の侵攻もささやかれる中、ポンコツ化しつつある第二王子と第二王子派の貴族たちの行動が改まらないと、ワイズ王国が滅びてしまうかもしれない…とミーナはだんだん表情が暗くなっていったのだった。


 「だからこそ、カレンさんのような英雄候補の登場は本当にありがたいのにゃ!」


 『そうだ!魔王軍をぶちのめす前に、そのポンコツ王子と派閥の貴族たちもぶっとばしちゃえ!』

  

 ジニーさん、その発言は私にしか聞こえなくて、よかったです。



(続く)

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