表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/19

19 スタンピードの後始末と魔法少女

(SIDE土御門咲夜)


  「なるほど、強力な助っ人になってくれた華蓮さんがさらに何人もの助っ人を連れてきてくれるということなのだね。」


 私の話に陰陽師の師匠でもある父の土御門重成がとても興味を示してくれている。


 “服裂け女事件”他のいくつかの事件を解決してくれた華蓮さんの活躍に“妖魔ハンター”の本部は大いに期待しており、一流の陰陽師であり、非常に忙しいはずの私の父が華蓮さん、土門さんや今回の助っ人たちと会えるように都合をつけてきてくれたのだ。


 夜も8時を回り、そろそろ待ち合わせ時間が近くなってきたとき、いくつものバイクの音が聞こえてきた。


 「随分とたくさんのバイクの爆音が聞こえるね。この辺は夜は人がいなくなる倉庫街だから暴走族でも出るのかねえ?」

 

 父がのんびりと言っていると、だんだんバイクの集団の音が大きくなってくる。


 そして、私たちの前に特攻服を着たバイク集団が次々と現れた。

 全員の体から強烈な“オーラ”が確認され、その身のこなしもただものではない感じだ。


 歴戦の猛者のはずの父が思わず固まってしまっている。


 強力な“霊能力”を扱う武闘派暴走族?!父も確かに強力な陰陽師だが、これだけの“霊圧”を放つ集団とやりあっては絶対にただでは済まない!

 勝てるかどうかも微妙だ。


 彼らはバイクを降りると涼しい顔で私たちに近づいてきた。

 ひいいい!あの“服裂け女”を相手にした時より迫力があるんだけど?!!!


 「ちょっと、どういうことなの?!」

 辺りに若い女性の声が響き渡った。


 あれは華蓮さんの友達の河井さんだ!

 恐るべき“霊能暴走族”に対してもまったくひるみもしないとは凄すぎる!


 そして、“暴走族”達はそのまま河井さんに向かっていき…。


 「河井さん、ごめんごめん、なんとか待ち合わせに間に合ったようだね。」


 暴走族の一人がヘルメットを脱ぐと、細身のイケメンのお兄さんだったけど、河井さんと知り合い?!…というか、“待ち合わせ”って言ったよね?!!


 「風間さん!!なんて格好で来られているんですか!!土御門さんがドン引きされているじゃないですか!!」


 …もしかしなくても、今回来られる“助っ人”の人たちだったみたい…。

 

 「すみません!!ぎりぎりまで“修行”をしていて、遅れないかと必死だったんです!」

 「え?!もしかして、その恰好で修行していたわけ?!」

 「どうしても“この恰好”の方が“気合い”が入るものでして。」


 他の人たちもヘルメットを取って、まくしたてる河井さんにペコペコ謝っている。

  

 うん、ヘルメットを取ったらみんな優しそうな人たちだよね。


 助っ人の皆さんはいい人たちぽいし、実力的には問題なさそうだけど、別の意味で心配になってきたよね。




 そして後日、私たちはとある旧家でいくつもの妖怪らしき物がでるという話を相続した人からの依頼を受け、その確認に乗り出した。


 辺りがすっかり闇に包まれ、私と華蓮さんが江戸時代後期のものと思しきお屋敷の敷地内に足を踏み入れたその時、私の背中をすさまじい悪寒が走った。


 「お嬢様がた、ここは今では完全に我々妖怪の領域(テリトリー)と化しているんだよ。」


 私たちの前に一つ目の青い肌の大きな鬼が姿を現した。


 それだけではなく、屋敷のあちこちからいくつもの異形の姿が音もなく現れた。

 玄関の中には無数の黒い影が見え、屋根の上や茂みからも爛々と凶悪な視線が私たちをねめつけている。


 これはいわゆる“百鬼夜行”というやつだ。

 一体でも凶悪な妖怪が数百体が束になっているのだ。


 並みの妖魔ハンターが何人いたところで命がいくつあっても足りたものではない。


 華蓮さんはけた違いに強いとはいえ、ここまでの数がいたのでは…。


 「へえ、そちらのお嬢さんは我々を見ても動じていないようだね。

 もっとも、そんな勇気のあるお嬢さんの方が“食べた時”は美味しいのだがね♪」


 鬼がにやりと笑ったその時、屋敷をいくつもの“ヘッドライト”の光が照らしあげた。


 「野郎ども!!華蓮の姐御に続け!!」

 「「「ヒャッハー!!」」」


 バイクや改造車に乗った集団が敷地に殴り込みをかけてきた。


 色とりどりのヘルメットをかぶり、黒いボディースーツをきた男たちがその手に木刀や金属バットを持って、妖怪たちに殴りかかっている。


 どの得物にも強大な“霊力”がまとってあり、ぜい弱な妖怪なら一撃で吹き飛ぶような攻撃を全員遠慮なく、目の前の妖怪たちにぶちかまし続けている。


 私たちの目の前を“阿鼻叫喚”の光景が広がっている。やられているのは“妖怪たち”だけど。


 

 「てめえが(ヘッド)か?!」

 

 ひと際凶悪な霊力(オーラ)をまとった青年が木刀を構えながら自分よりずっと背の高い青鬼を睨みつけている。


 その迫力は完全に“ラスボス”だ!

 …て、この人土門さんだよね?!


 「…そ、その迫力…。貴様!何者だ!!」


 土門さんのド迫力に後ずさりながら青鬼がそれでもなんとか言葉を発している。


 「俺たちは“妖魔退治の烈風会”だ!最強の妖魔ハンターの華蓮の姐御の舎弟だ!!」


 土門さんがスゴイ名乗りを上げているよ!

 横にいた華蓮さんを見やると、必死で首を横に振っている。


 「よっしゃー!いくぜ!!」


 土門さんはあっという間に青鬼との間を詰めると、恐ろしい勢いで木刀を振り下ろし続けた。


 …間もなく、一方的な蹂躙劇は終わった。


 辺りには冷静に周りを確認する“烈風会”のメンバーと、死屍累々と横たわる妖怪たちが残った。

 

 『すごいなあ。さすがは土門君たちだ。妖怪たちはボコボコになっているけど、ちゃんと生きているよ。 “手加減”しながら制圧するのにも慣れているんだね。』


 ジニーさんが感心しながらうなずいている。


 「この程度の連中、わざわざ華蓮とジニーの姐御の手を煩わせるほどのことでもありませんよ。」


 快活に笑っている土門さんたちを見ながら、私はとても複雑な気分に襲われたのだった。



~~☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆~~



(SIDE華蓮)


「まさかこんなところで華蓮とジニーの姐御に再会できるとは!!」

「お二人に出会えて、本当に安心です!!」


ええと…どうしてこんなところで土門氏と河井さんと再会なんかしているのでしょうか?


 「はっはっはっは!この二人はとある王国で異世界召喚された後、『勇者じゃない』からと言って、城から放り出されていたんだ。


 冒険者ギルドで登録しようとしていたところをちょうどわしらと出会って、わしが一緒のパーティにスカウトしたんだ。

 まさか、勇者どのの知己とは知らなんだ。


 ドモンは既に完成された戦士でな。

 もはやA級冒険者並みの実力があるぞ!


 ミナは実戦経験こそあまりないが、才能があり、冷静にいくつもの魔法が使えるのがいいな。

 B級冒険者並みの実力だが、実践が伴えば、A級もすくだろう。」


 トールさんがにこにこしながら土門氏と河井さんをほめている。


 「勇者カレンさんとのご縁があったことも含めて、本当にパーティになってよかったと思いますね。


 リーダー(トール)とドモンが暴走気味なので、ミナが冷静に魔法でサポートしてくれるのが本当にありがたいのです。」


 白いトーガのような衣装をまとった銀髪美女の女性神官の人、アデールさんが淡々と話している。


 この人、なんと、エルフだよ!!

 ファンタジーの王道エルフさんとようやくご対面できたよ!!


 言われて、河井さんは照れたように微笑み、土門氏とトールさんはばつが悪そうな顔をしている。

 

 なお、土門氏は黒ずくめのライダースーツにヘルメットをかぶり、得物は“霊刀”と化しつつあった使っていた黒い木刀だ。

 河井さんが普通の?ファンタジーぽい紫色のいかにも魔法使いぽいローブを羽織っているのと比べると、イカモノ感が強いよね。


 

 「よっしゃあ!!想像以上に戦力も増えたことだし、ゲストランド王城へ殴り込みだ!!」


 酒場で打ち合わせを兼ねて、夕食を取った後、トールさんが立ち上がるといきなり武器を担いでうごこうとしているんだけど?!


 「師匠。いくら何でも気がはやり過ぎですよ。今日はゆっくり休養を取って、明日の朝いちに元気に殴り込みをかけましょう♪」


 あの、クリスさん?!トールさんよりはマシだけど、話の傾向がほぼトールさんと変わらないのだけれど…。


 「2人ともバカ言っていないで!まずしっかり話合いをしてからに決まっているでしょ!

 誰が行って誰が街の防衛に残るかとか決めないとだめでしょ!

 さすがに今晩はみんなへとへとみたいだから、明日の朝一番に冒険者ギルドで会議だわ。」

 

 さすがはエリザベスさん!クリスの暴走をずっと制御し続けてこられただけのことはあるね!


 「素晴らしい!さすがに才女の誉れの高いエリザベス様!

 おかげでこの“破戒のハンマー”の出番がなくて済みました。」


 アデールさん!!その青白く光ってるバカでかい凶悪に見えるハンマーはなに?!

 たおやかなエルフの美女はそんなもん使ってはいけませんよ!!


 そして、それを見たトール氏が冷や汗を浮かべながら

「さあ、もう一杯ひっかけるかな」とか言っているし、土門氏も青い顔をしている。


 ちょうどそばにいた河井さんに聞いてみると…。


 「…あれはハンマー型の“スタンガン”という代物ですね。

 何しろトールさんが頑丈極まりないですから、電撃の威力もさることながら、純粋なハンマーとしての威力もすさまじいものがありますね。」


 ねえ、どうして“トールさんが頑丈極まりない”が枕言葉になっているの?!

 普通は“凶悪なモンスター対策として”だよね?!


 ねえ、どうしてさらに問いかけようとしたら河井さん、目を逸らしちゃうわけ?!


 本当にこのパーティ、大丈夫なの?!


(続く)

いつもお読みいただき、ありがとうございます。


予告通り、物語が大きく動き出す…動いたのは“地球の過去話”の方でしたね。

(;'∀')


次回からこそ、本当に大きく動きます。

その“予定”です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ