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勇者として召喚された武闘派系魔法少女の異世界無双  作者: はなぶさ 源ちゃん
第3部 ダンジョン狂騒曲と魔法少女
13/19

13 様々な出会いと別れと魔法少女

 学校帰りに“偶然”河井さんと一緒になって歩いているときのことだった。

 この流れは我が家まで河井さんが一緒に来る流れなのだが…。


 気が付くと、何台ものバイクに乗った男性たちが我々の道をふさぐように集まってきていた。


 しかも、そのバイクの多くはスピードを重視した“改造バイク”であり、乗っている人たちは特攻服と思しきギンギラギンに輝いたど派手な服を着ている。


 ひと際派手な服を着た長身の男がバイクから降りて、私に向かって真っすぐ歩いてくる。


 河井さんは脅え、私に寄り添ってきた。

 私がくらくらするような気分の中、男は私の眼前でヘルメットを脱いだ。


 「すみません!実はみんなで“華蓮の姐御”に相談したいことがありまして…。」


 「だったら、まずはその恰好をやめい!!」


 私は“暴走族・烈風会の元副長”風間猛(かざまたける)さんに思い切り文句をつけた。



~~☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆~~



 翌日、家に風間さんと烈風会の元幹部3人が我が家に来ていた。3人とも若者らしいごくごく普通の服装だ。

 そして、普通の服装の風間さんは細マッチョのイケメンだった。今の格好で街を歩いていたら相当もてそうな雰囲気だ。


 そして、なぜか河井さんも同席していた。


 「最近は華蓮ちゃんが友達をたくさん連れてきてくれてうれしいわ。」


 母がニコニコしながらお茶菓子を出してくれる。


 しかし、母よ!彼らは友達ではない!!断じて違う!!100歩ゆずっても“ただの知り合い”だ!!

 

 しかし、そんなことを口に堕したら彼らが傷つくのが目に見えているので、あいまいにうなずいておいた。


 「実は相談したいことと言うのは我々が“烈風会”を解散した後の話なのです…。」


 風間さんは以下のようなことを教えてくれた。


 元々烈風会は家庭や学校に行き場をなくした高校生や高卒しても正規の職に就けなかった青年たちのたまり場からなんとなくまとまった集団だった。


 ケンカが非常に強い上に、情に厚く、面倒見のいい土門氏を中心に暴走族に変わっていった。


 “ケンカ上等”とはいえ、“一般人には手を出さない”烈風会は当初はそこまで目立った存在ではなかった。


 しかし、土門氏以外にもけた違いにケンカが強いメンバーがそろっていたこともあり、結果的に多くの暴走族や不良集団、場合によってはやくざともケンカをすることになり、“土門氏の軍門に下った強者(つわもの)”もあり、構成員も増えていった。


 ただ、人数だけ増やせばいいという姿勢も取らず、また、土門氏が“去る者は追わず”主義だったこともあり、烈風会は“少数精鋭”の最強集団として恐れられていった。


 そして、とある暴力団を完膚なきまでに叩き潰した後、“例の事件”があり、烈風会は解散したのだった。


 だが、行き場をなくした青年たちは、会がなくなったらまた行くところがなくなってしまう。


 そこで、風間さんを中心にケンカはしない“ツーリンググループ”を作ろうという話になったそうだ。


 元々バイクなどで走るのが好きな青年たちが集まって出来たグループだったので、ツーリンググループになること自体は全く問題がなかったのだが…。


 「それが、ただのツーリンググループになっても我々が走るだけでみんなが怖がるんです。」


 「「あの時の格好で走ったら怖がられて当たり前です!!」」


 私と河井さんは思わず突っ込みを入れた。


 

 それからは河井さんの独壇場だった。


 普通の女の子はどんなバイク乗りだったら受け入れられるかを河井さんがこんこんと説き、元暴走族の青年たちが最初はうなだれながら、そのうち、必死にメモを取りながら聞き出した。


 すごい!すごい図だよ!!


 現役女子高生は元暴走族のお兄さんたちに“まっとうな人の道”を渾身で説き、それをお兄さんたちも懸命に取り入れようとしているのだ。


 『なんだかすこく尊い物を見ている気がする』


 私もジニーの見解に全面賛成だ。


 そして、ツーリングサークル“風を感じる会”には女性の参加者も増え、男女を問わず交流する楽しいサークルになったのだとか。



~~☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆~~



 「クリス王子!どうしてこんなところに?!」


 びっくりして声の方を見やると…なんで、ユリアンくんがこんなところにいるわけ?!!


 「何を言っているんだい?!私は“仮面の騎士”と言うS級冒険者さ。

もしかして、私が王子と似ているのかね?」


「何をおっしゃっておられるんですか?!クリス王子!仮面を被っておられるとはいえ、私が王子を見間違うわけがないじゃないですか!!」


 『うわー。すごいねこの子。仮面の“認識疎外の魔法”が効いていないんだね。』


 「ええ?!王子様には妖精様が守護についておられるんですか?!』


 なんてこったい!ユリアン君には認識疎外の魔法が効かないだけじゃなくて、クリス王子同様にジニーの姿が見えるんだね?!!


 「待ってください!ユリアンを強引に連れ出したのは私です!!ユリアンは何も悪いことなんかしていないんです!」


 そう言っているのはベルゼさん……えええ?!!ユリアンと駆け落ちした幼馴染の女の子ってベルゼさんのことだったわけ?!!!


 「安心して!2人とも。今回の件はやらかしたのは全部“クリス王子の責任”で、ユリアン君やそのご実家のサットヴァ子爵家には何のお咎めもないわ。もちろん、ユリアン君と一緒に旅に出ただけの友達であるあなたにも。」

 

 おおっ?!さすがはエリザベス嬢!すかさず二人のフォローに入っている!なお、エリザベス嬢も冒険者活動をするときは同じく“銀色の仮面”を被って、“白銀の術師”の異名でA級冒険者として活躍しているそうだ。


 「ええ?!エリザベス様までがどうしてこんなところに?!!」


 ユリアン君はエリザベス嬢の仮面による認識疎外魔法もやはり聞かなかったようだ。しかし、その辺はさすがに察してほしかったのだが。


 「そうね。そのことも含めて、ここにいる皆さんには“お話ししなければならないこと”があるの。

ここにいる冒険者の皆さんは私たちと一緒にギルドに来てもらえるかしら。」


 エリザベス嬢がベルゼさん、ユリアン君やこの場にいた冒険者たちに真剣な表情で訴えかける。

 私たちに命を救われたこともあり、この場にいた私たち以外の全部で10人の冒険者たちは私たちと一緒にギルドについてきてくれた。



 「なんですって?!それでは“婚約破棄”とか全ては国内の“獅子身中の虫”を炙りだすための“お芝居”だったのですね?!!」


 「ええ、ベルゼさんにユリアン君。あなたたちにはこちらの都合で大変ご迷惑をおかけして、申し訳ありません。

 ですから、先ほども申しましたように、あなたにもユリアン君にも国からは一切お咎めがないどころか、むしろ 被害者なのです。かならず国からユリアン君にもサットヴァ子爵家にも償いをさせていただきます。

 冒険者の皆様もできれば、この件はご内密にお願いしますね。」


 「もちろんですとも!

 もともと俺たちは“仮面の騎士”様と“白銀の術師”様をとても尊敬していたんです!

 そして、国のために“自分達が悪名を背負って”でとお芝居をされたうえに、公爵令嬢様が俺たちに心身に頭を下げて頼まれるなんて、本当にすごいことです!絶対に誰にも話しませんよ。

 なあ、みんな!」


 エリザベス嬢の頼みをベルゼさんたちと共にミノタウロスたちを相手に踏みとどまっていたパーティのリーダーが快諾し、ここにいた他のメンバーも全員うなずいていた。


 「そうか、やっぱりお芝居だったんですね。僕なんかがクリス王子に選ばれるなんて、おかしいと思っていたんですよ。」


 ユリアン君が安心したようながっかりしたような複雑な表情で淡々と話す。


 「……いやいや、ユリアン君が人間性がとても素晴らしく、しかも魔法の仮面の認識障害をはねのけるような才能の持ち主だからこそ、無理を言って付き合ってもらったのさ。

 本当に申し訳なかった。」

 

 意味ありげにエリザベス嬢に肘で突かれた後、クリス王子がユリアン君に向き合って真摯に答えていた。


 「そんな風におっしゃっていただいて、嬉しいです!

 それから、エリザベス様に魔法を教えていただけるなんて、すごくありがたいし、本当に光栄です!」


 さらにユリアン君が認識疎外が効かなかったり、ジニーが見えたりと、想像以上に魔法の才能があることが分かったため、このダンジョン探索の間限定で、我々のパーティにベルゼさんとユリアン君も加わることになったのだ。

 迷惑をかけたユリアン君への償いとともに、ユリアン君が魔法の才能を開花させることは明らかに国益にもつながるということで、エリザベス嬢がユリアン君の魔法の指導にもあたるのだ。

 

 ベルゼさんは“魔法も扱える”非常に優秀な冒険者であるが、“いくつもの魔法を自在に扱える”エリザベスさんが短期間とはいえ、マンツーマンで指導した方がユリアン君の才能を正確に見極めたうえで、適切な指導ができるのだそうだ。


 我々は泊まっていた宿屋に戻ると、明日からの簡単な打ち合わせを済ませ、男女別に部屋を別れた。


 「全部お芝居だと聞いて本当にびっくりしました。考えてみたら、大勢の人の前で婚約破棄なんて非常識なことをするわけがないですもんね。

 そして、それ以上にユリアンとの“真実の愛”のために婚約破棄とか、そのままユリアンを連れて旅に出るとか、部隊喜劇でもなければありえないですもんね。」


 ベルゼさんがほっとしたように話を始める。


 「ベルゼさん。大変言いにくいのだけれど、婚約破棄自体は確かにお芝居だったの。

 でも、クリスがユリアン君に一目ぼれして、一緒に冒険に出ようとしたのはまごうかたなき本気だったのよ。」


 エリザベス嬢の衝撃的な発言でベルゼさんは完全に固まった。


 「しばらく一緒に冒険したらわかるでしょうけど、クリスはよくも悪くも“まったく裏表がない”から、あなたくらいの人なら私が言わなくてもわかったでしょうけど…。

 “公平かつ誠実”で、“思いやり深く”、“勇気があって”、“すごく頭がいい”クリスだけれど、同時に“信じられないくらいバカ”なのよ。」


 「じゃあ、さっきの発言は冒険者たちに向けた“対外用”の発言ですか…?」


 「ええ。それと、ユリアン君に対してもね。

 すっごくおバカだけど、リチャード王子に万が一があったらクリスには王様になってもらわないと国が収まらないと思うのよ。

 だから、少しずつ婚約破棄、ユリアン君への求愛は“茶番だった”という情報をあちこちに意図的に流しているの。」


 「待ってください!では、クリス王子とユリアンを一緒に部屋にしたら、危なくないですか?!」


 「ベルゼさんのご危惧はもっともだけれど、クリスはすごく紳士だから、相思相愛のカップルを壊すようなことはしないし、必ず“相手の心からの同意”がなければ、不埒な行動はとらないはずよ。」


 エリザベス嬢の言葉にベルゼさんは胸をなでおろしたようだ。


 『個人的には2人がいろいろ絡むのを見たかったような気もするんだけど♪』


 「ジニーさん!嫌なことを言わないでください!!」


 翌日からの本格的なダンジョンアタックを前に、夜の女子会は盛り上がったのだった。


(続く)

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