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10 S級冒険者からのパーティへの勧誘と魔法少女

(くだん)の相手は“口裂け女”ではないかと予想されています。」


 夕方に街を歩き回りながら咲夜さんが説明してくれる。


 「口裂け女…て、あの有名な都市伝説の妖怪ですよね?」

 『へえ、土門君も知ってるんだ?』

 「有名な妖怪ですからね。一応グループのリーダーの時もネットサーフィンで“ツーリングのルート”とかいろいろ調べてたんすよ。」

 

 そして、土門氏がいるだけならまだしも、いつの間にかジニーと仲良く話をしてるんだけど…。


 え?何が起こったかって?


 土門氏が自らをさらに高めるために『滝行』に行っていたのだそうだ。


 1週間ほど滝に打たれているうちに、『見えないものも見えるようになった』のだとか。

 心身ともに絶好調になった土門氏が嬉しそうに私に自身の修行を報告に来たところ、咲夜さんと話している私と『宙に浮いているジニーを目撃』したのだそうだ。


 最初は自分の目や耳がおかしくなったかと疑ったけど、私たち三人がしっかり会話しているのを確認して、『これは事実だ!』と確信したのだとか。


 「守護霊と一緒に悪と戦うなんて、姐御はさすがすぎます!!」


 興奮した土門氏がいつも以上にキラキラ目線で迫ってきたので、結局全部バラしちゃいました。下手に隠そうとするとかえってボロが出そうだし。


 自分やジニーの性格を踏まえると、義理堅そうな土門氏なら公言しないだろうと見越したうえで。


 「なんと?!華蓮の姐御はジニーの姐御と二人三脚で『宇宙からの侵略者から地球の平和を守っていたのですね!!凄すぎます!!

 及ばずながら、不肖、この土門龍二、お手伝いさせてください!」


土門氏の勢いと、土門氏の同行を歓迎する咲夜さんの懇願で、結局三人で行くことになったのだ。


 ちなみに道中土門氏はことあるごとに『私がいかにすごいか』を咲夜さんに全力で伝えようとしており、咲夜さんもそれにいちいち感心されて、いつしか私を土門氏同様に尊敬するようななまなざしになっているんですけど?!


 すごいと言えば、ど素人が滝行をした挙句、本当に霊能力に目覚めちゃった土門氏の方がよほどすごいんだけど?!

(※よい子は真似をしないようにしようね♪)


 とかなんとか言いながら散策しているうちに、咲夜さんの『妖気探知機』が反応を示した。

  見た目は江戸自体の寄せ木細工の箱の上に針金で小さな水晶球を吊り下げたような外見だ。 箱の上には羅針盤のような円が幾重にも書かれており、各円にはメモリが付いている。

 

 妖気の方角と強さを測定できる優れものだそうだ。

 

 現在ぶら下がった水晶球がびんびんに振れており、相当ヤバい相手だと想像がつく。


 現に咲夜さんの表情はひきつっていた。


 ほぼ同時に私とジニーも隠されているが、かなり凶悪な妖気を感じだす。


 こいつはヤバいぜ!と土門氏を先頭に三人が小走りに水晶球の差す方角へ行くと…。



 白いジャンバーを着た女性が向こうを向いて座り込んでいた。


 「お姉さん!大丈夫ですか?!」


 おおい!土門氏よ!あなたの人がいいのはわかった!だが、その女性は隠しているようだが、妖気が漏れているぞ!うかつに近寄るんじゃない!


 とか言おうと思ったら、マスクをかぶった女性が振り返り、土門氏を見つめる。


 かなりの美形であるようだが、その眼には我々にはかすかな『狂気』がはらんでいるのが見受けられる。


 「……私きれい?」


 おおっと、口裂け女の『定型句』が出てきたよ!


 「ええ、とっても」


 土門氏よ!ネットで口裂け女のことを調べたんだろ!きっちり思い出せよ!


 「これでも、きれい?!!」


 そう言って、露呈した口裂け女?の正体の恐ろしさに、我々は震え上がったのだ。


 

~~☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆~~



「さすがですね。カレンさん。魔法の仮面の“認識阻害の魔法”は効果がなかったようですね。

 さすがは“魔王軍13魔将”の1人を倒した真の勇者だけのことはありますね♪」


 クリス王子の爆弾発言にギルマスとサブマスは完全に固まった。


 「やれやれ。見たときからただものではないとは思っていましたが、そこまでご存じだったのですね。

 ところで、どうしてその情報をご存じなのか教えていただけますか?」


 普通なら冷や汗ものの暴露なのだが、この王子が善良かつ、敵意がないことは様々な言動やオーラから推察している。

 だから、様子見と本題に移ってほしいのとを兼ねて、話を進めてみると…。


 「なるほど、『爆弾情報』を流しても動じられないとは、素晴らしい胆力ですね。

 ちなみにその話は『国家機密』なので、覚悟のある方だけ、聞いてくださいね。

 出来れば、ギルマスは聞いてほしいのですが。」


 ニコニコしながら、クリス王子はギルマスとサブマスを眺めている。


 しばし、ギルマスが『お前も聞いてくれ』と目で訴え、サブマスが『そんな危険なことに私まで巻き込まないでください』と拒否っていたが、ギルマスが半泣きになっていったので、恐らく面倒見のいいサブマスが仕方なく折れたようだ。


 「わかりました。2人で極秘事項を『墓場まで持っていき』ますね。」


 2人で部屋に残って、話を聞くことにしたのだった。



 「ゲストランドにいた、ワイズ王国の密偵からの魔法通信で分かったのですよ。

 13魔将を名乗る高位魔族の話は他でも得たことがありますが、13魔将を退治した…という話はカレンさんの例が初めてです。」


 クリス王子は兄のリチャード王子同様に、国の意向を受けて、冒険者として、裏方としてすでにいろいろと動いていたのだそうだ。


 もちろん、冒険者になったら、クリス王子は目立ちすぎるので、高性能の認識阻害機能の付いた金色の魔法の仮面を着用することで、“仮面の騎士”として活動していたのだとか。


 王都やワニナなどの主要ギルドのマスターたちはもちろん、そのことを知ってクリス王子の冒険者活動のサポートをしていたそうだ。


 幸いなことに冒険者になった段階からクリス王子はA級に近いくらいの実力があったため、ダンジョン内での事故はほぼ無かったそうだが。

 

 「そうだ。大切な幼馴染でもある、ベス(エリザベス公爵令嬢)を助けてくれてありがとう。危うく、酷いけがをしかねないところだった。」


 話の途中で真摯な表情になり、クリス王子が私に頭を下げてきた。


 「いえいえ、これも任務でしたから。…それに、私が助けなかったら、あなたが助けていたのでしょう?」


 「確かに私が動けば、命までは失っていなかったでしょうが、ベスがかなり酷いけがはする可能性がありました。

 それに、私が全力で動いたら、せっかくの『芝居』が台無しになる恐れがありましたからね。

 あの時は本当に助かりましたよ。」


 私がとっさにエリザベス嬢を助けに入った時に、必死に助けに動こうとするクリス王子の姿がちらっと視界に入ったのだよね。

 私が助けに入って、『明らかに安堵していた』のが見えたから、あの時から今回のような結末もある程度読めていたのだよ。


 なお、例の『婚約破棄の芝居』の舞台裏のことも教えてもらった。


 片田舎の子爵家に子爵の庶子が急に養子になり、学園に入った後、なぜか『クリス王子の側近』たちがその女の子、アリーナ嬢になぜか夢中になりだしてから、王子も王室の人たちも怪しいと思いだしたのだそうだ。


 案の定、クリス王子にも“効果は弱いが感知は非常に難しい”魅了の力を掛けてきたことから、裏に深い陰謀があると想定でき、しばらくアリーナ嬢を泳がせることにしたのだという。


 最初は違和感を感じつつも、あまりにも微弱だったので、アリーナ嬢が何をしているのかわからなかったが、宮廷魔術師に作ってもらった専門の解析の魔道具を身に付けることで、ようやくアリーナ嬢が“隠蔽に長けた魅了の力”を使っていることが分かったのだという。


 「いろいろな貴族たちの政治的な動きから、バックに宰相の政治的なライバルのクロマーク公爵家がいるらしいことは推測できたのだがね。

 アリーナ嬢もクロマーク公爵もなかなか尻尾を出さなくて苦労したよ。」


 苦笑しながらクリス王子が話している。


 蛇足ながら“あの事件”に対する捜査でクロマーク公爵も関与していた証拠を押さえ、逮捕まではいかないまでも、第二王子派の貴族の活動はほぼ壊滅状態なのだそうだ。


 「それで、婚約破棄という芝居を打ったわけですね。

 ところで、私を護衛任務に付けたのはもしかして?」


 「あの時は勇者という情報までは入っていませんでしたが、S級相当の冒険者がワニナのギルドに現れたという情報をもらって、“万が一の備え”も含めて、ぜひともお会いしてみたいと思って護衛任務をお願いしたのですよ。

 その後、魔王軍13魔将の1人を単独で撃破されたと聞いて、心底びっくりしましたが。」


 相変らずニコニコしながら、クリス王子は話しているが、その視線は…。


 「すみません!非常に内密の話があるのですが、ギルマスとサブマスは一時席を外していただけませんか?」


 私の提案にギルマスたちは今まで以上に渋い顔になり、クリス王子は“私の意図”を察したためか本当にうれしそうな顔になっている。


 

 『それで、邪魔者に一時席を外してもらったんだけど、そんなに私のことが気になるかな?』

 「ええ、非常に気になります。特にギルマスとサブマスにはあなたが見えていなかったようですから。」


 ここにも咲夜さんや土門氏の同類がいたよ?!

 クリス王子がジニーの立体映像の方をちらちら見ながら話していると思ったら、やっぱりしっかり見えていただけでなく、声まで聞こえてたよ!!


 『そうだねえ。もし正式にパーティを組むことになったら詳しく説明するけど、今は“勇者華蓮の守護霊的存在”と認識してくれればいいかな。』


すごく嬉しそうにジニーが笑っている。

元来ジニーは社交的でおしゃべりだからね。

クリス王子と話ができて本当にうれしそうだ。


「それは楽しみだな。ぜひとも一緒にパーティ活動ができるようにしなくっちゃ♪」


クリス王子も破顔して笑っている。



「待ってください!今内密の話が!!」


ん?ドアの向こうからサブマスが誰かを制止する声が聞こえるんだけど。


「ちょっとクリス!開けなさいよ!あなた一体何を考えているの?!!」


どこかで聞いたことがあるような若い女性の声が聞こえるのだが…。


「おっと、ベスじゃないか。これは開けないと収まりそうにないな」


言いながら、クリス王子は部屋の扉を開けた。



 「予定通り、魔王軍13魔将の一人を撃破した、真の勇者さんと一緒にパーティを組むように説得に来たんだよ。」


 「“予定通り”じゃないでしょ!!あなた1人ならともかく、“ユリアン君”も一緒にパーティに加えようとかどういうことなのよ?!」


 「はっはっは、安心したまえ。ユリアン君には振られたから、本来の予定通りに私一人でカレンさんとパーティを組むように変更したんだ。」


 待て!!ちょっと待て!!ユリアン君…て、あの婚約破棄会場にいた、“真実の愛”の対象の美少年だよね?!!


 どう聞いても“信じがたい(信じたくない)事態”が進行していたとしか思えない会話なんだけど?!!


(続く)

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