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ゲーミングチェア探偵がビームで犯人を破壊するまで@2,677,500と900秒  作者: あおいしろくま
第四章_探偵がビームで彼女誘拐犯○○を破壊するまで、あと900秒
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第41話「潜入②」

 「びっくりした?」


 突然背後に現れたちびっ子は、嬉しそうに飛び跳ねた。外見は小学校中学年くらいだろうか。その様子はイタズラの成功に喜ぶ子どもそのものだ。


「お兄さん、新しいアルバイトの人?」

「ああ、うん、よくわかったね」

「ほんとに!?」

「ホント、ホント」


 実際はまだ面接前なので、正式に採用されたわけではないのだが、嘘ではない。イタズラの驚きからなかなか抜け出せない貫一をよそに、ちびっ子は椅子の周りをぐるぐると回って、貫一を観察した。


「お兄さんはなんだかフツウって感じだね」

「それは褒めてくれてるのかな」

「どっちだと思う?」

「う~ん、それじゃあ、こっちの方が嬉しいから、褒めてくれてるに一票」

「せいかい! ボクはフツウな方がうれしいよ。だってそっちの方が楽しいでしょ。じいやはぜんぜんびっくりしてくれないし」

「ははは、なるほどね……」


 貫一は目の前の男の子をもう一度注意深く見た。

 服装は短パンにシャツ、そしてサスペンダー。いかにも私立の小学校の制服といった雰囲気だ。すそが汚れているのは天井裏から侵入してきたからだろうか。

もしそうだとすれば、かなりのおてんばだ。そして、いたずらをしても悪びれることなく堂々とした、どこかふてぶてしささえ感じるような態度。

 おそらく、この子が家庭教師の相手なのだろう。

 だとすれば、心証を悪くするのは得策ではない。


「お名前を聞いてもいいかな?」

「うん、ユウだよ。一文字でにんべんにあるって書いて『侑』」

「僕はカンイチだよ。つらぬくに数字のいちで貫一。せっかくだから何かして遊ぼうか?」

「うん! 何して遊ぶ?」


 貫一はすぐにチャンスに気が付いた。

 この子が彼女へ続く手がかりを握っている可能性も十分にある。だとすれば、今のうちに……。


「VRゲームはどうかな?」

「いいよ。ゲームは好き! 勉強より楽しいし」

「じゃあ、ADGsはどう?」


 侑の表情が一瞬で曇る。その時、貫一は今回の調査も一筋縄ではいきそうにないことを悟った。


「もうやったけど、つまんなかった」

「どこがつまらなかったの?」

「だって、勝っちゃうもん」

「勝っちゃう? じゃあ強いんだ?」

「そうだよ、ボクはすっごく強いの」

「それなら、お兄さんがすご~く強かったら、戦ってくれるかな?」

「お兄さんならいい……かな。あんまり強くなさそうなカオしてるし」

「うぐっ、ま、前に大会で優勝したこともあるんだからね」

「大会がショボかったんでしょ。だけど、ホントにめちゃくちゃ強い人とはやりたくないよ。だって負けちゃうもん」

「えぇ……強い人とも弱い人とも戦いたくないの?」

「そう。だからやんないんだ。……あのオモチャも弱いし、もうつまんなくなっちゃったし」


 その時、扉が開き、向こうから執事がやってきた。貫一をここまで案内してきた執事だ。


「おぼっちゃま、ここにいらっしゃったのですか」

「見つかっちゃった」

「屋根裏を通るのは危ないですからおやめくださいと、何度も申したではありませんか」


 執事は天井に空いた穴と汚れた侑の衣服を見て、ため息を吐いた。

 ちびっ子はとてとてと執事の方へと歩いていく。


「この後、直接面接をしていただく予定でしたが……」

「気に入ったよ。じい」

「それは何よりでございます」


 貫一はイマイチ話が飲み込めない。だが、悪い話ではなさそうだと感じ、一息つく。

 侑は貫一へと向き直って、笑みを浮かべ、右手を差し出した。


「ボクの新しいオモチャになってよ」


 その時、やっと貫一は理解した。

 侑の言うところの“オモチャ”がモノではなく、人間だということ。

 そして、このちびっ子が彼女へつながる手がかりなどではなく、渦中の当事者で、“オモチャ”が彼女である可能性について思い至ったのだった。



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