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ゲーミングチェア探偵がビームで犯人を破壊するまで@2,677,500と900秒  作者: あおいしろくま
第三章_助手が初めてアルバイトゲーマーを倒す(?)まで@××秒
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第30話「大会前週」

登場人物

カンイチ/彼女を探す大学生。リカへリベンジを誓う。

ミノ/ゲーミング探偵。助手バカの気がある。

ヴィヴ/ミノのライバル。ログインは不定期。

 大会が開催されるまでの一週間、カンイチはひたすら特訓に時間を費やした。

 今日は、ミノを相手に正しい行動を選択するためのスパーリングを行っていた。


「……参りました」


 決闘終了後、敗北したカンイチはミノへ頭を下げた。


「悪くないね。……これならモノになるかもしれない」

「本当ですか? ミノさんには武器を変えてもらっても全然勝ててないですけど……」

「私だからね。そう簡単に助手クンに負けるわけにはいかないよ」


 ミノは実戦の相手を想定するために、母数が多いと思われる剣派生の武器を片っ端から使っている。本来の得物ではない武器を使っていても、ミノは強かった。


「それに、ワイルドカードも使っている。リカリカは君相手には使わないと言っていたんだろう」

「どうしてそれを……ああ、視たんですね」


 ミノは悪くないと言ってくれるけれど、このままではリカには手が届かないとカンイチ自身は感じていた。


「どうすれば、ハルのようにカードのポテンシャルを引き出せるんでしょうか?」

「あの子の場合はセンスによる部分が大きいから、あまり見習わないで欲しいんだが……。練習方法くらいなら教えられるよ」

「お願いします!」


 目を輝かせるカンイチを見て、ミノは照れたように顔を背ける。


「正しいフォームに矯正すれば、攻撃技の威力を高められるのはわかるね」


 カンイチは頷いた。


「フォームの矯正には、自分の映像を記録して正しいフォームと比較する方法が有効だ」

「なるほど、客観的に見るわけですね」

「詳しいやり方やお手本は動画サイトを漁ればヒットするだろう。一人で練習できる方法を見つけるのも大事なことだよ」

「了解です! 早速調べてきますね!!」

「地道な練習になるからほどほどにな」


 最後のミノの助言にカンイチは答えず、早速ログアウトしようとする。


「少し待ちたまえ」

「え? 何かありますか?」

「助手に貸しだ。持っておきたまえ」


 ミノは一枚のカードを差し出した。

 それはカンイチの使う“アックス”のカードだった。それも人気かつ高価で先日買えなかったカードの内の一枚だ。


「持ってって……?」


 驚きのあまり、カンイチは言葉に詰まってしまった。


「こんなもらえないですよ……」

「誰もやるとは言っていないぞ。あくまで貸しだ」


 ミノは顔を斜めに背けている。カンイチからはわずかに緩んだ口元だけが見えた。


「優勝したら賞金も出る。それで返してくれたまえ」

「ミノさん……」


 カンイチは丁寧な手つきでカードをしまう。


「……俺、頑張りますよ」


 カンイチは今度こそログアウトしていった。

 その場に残されたミノはどこか嬉しそうに、溜息をついた。


 それからおよそ半時間後。

 ミノはヴィヴと決闘を行っていた。

 ここしばらく忙しくしていたヴィヴは、ミノとの決闘を大いに楽しんだ。一方、ミノもまた楽しそうに武器を振るった。


「今日はやけに嬉しそうね? 何かいいことでもあったの?」

「わかるかい?」

「わかりやすいのよ。あんたは」


 決闘が終わり、二人は武器を収めた。

 ヴィヴは事務所の台所へ向かい、お茶の支度をした。


「聞いたわよ。あんたの助手、闘杯に出るらしいじゃない。随分と気合を入れてるみたいね」

「流石、耳が早いね」

「あんたみたいに、あたしは向こうでも引きこもっているわけじゃないから」


 二人で決闘を行った日は、負けた方がお茶の支度をする。それがいつの間にか決まっていた二人の不問律だった。ヴィヴが探偵事務所の台所に慣れているのもそのためだ。

 ヴィヴは急須と湯呑み、お茶請けをお盆に乗せて畳間へと運んでくる。

 ミノは早くもこたつに足をつっこんでだらけていた。


「で、実際のところどうなのよ? “間に合わない”んじゃないの?」

「だろうね。必要決闘数が全く足りない」

「やっぱり? となると、ワイルドカードなしで挑むことになるのね……。流石に厳しいわね。全国区の大会ってわけじゃないけど、荷が重いのは間違いないでしょう」

「助手クンには負けられない理由があるみたいだよ」

「どうせそれもあんたのせいなんでしょ。想像ついてるわよ」


 ヴィヴはミノの能力を知っている。それを活かして探偵を営んでいることも知っているし、捜査に協力したことさえあった。


「で、ターゲットは誰なの?」

「リカリカ、“デスサイズ”リカだよ」

「……相手が悪過ぎよ。普通に無理ゲーじゃない」


 ヴィヴは湯呑みをちゃぶ台の上に置く、お茶の表面が大きく揺れた。


「厳しいのは間違いない。けれど、いい線まで行くと思うよ。私はね」

「へぇ……?」


 ヴィヴはミノの顔を見つめた。ミノの言葉を心底意外に思っているようだった。

 

「まさか“鴉”の連中が参加している、なんてことはないはずだからね」

「……そうね。ま、楽しみにしておくわ。当日は見に行けないけど」

「人気者も大変だね」

「後でリプレイくらいは見せてもらうわ。解説付きでね」


 


次回は第31話「控室」。2021/04/05(月)投稿予定です。

面白いと思ってくださった方はブックマーク&評価をよろしくお願い致します。


今話より週2回投稿になる予定です。

楽しみにしてくださっていた方々、申し訳ございません。

定期更新は続けて参りますので、どうぞよろしくお願いいたします。


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