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ゲーミングチェア探偵がビームで犯人を破壊するまで@2,677,500と900秒  作者: あおいしろくま
第二章_探偵がビームで後輩ビギナーを破壊するまで@××秒
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第10話「先達」

登場人物

貫一/依頼人から依頼人兼助手へジョブチェンジした。はじめてのおつかい中。

蒲田/刑事。箕の知り合い。

 箕と決闘を行った翌日の午後三時頃。

 カンイチはとあるラーメン屋の前にいた。


「『ラーメン刻屋』……ここが箕さんの言ってた店か」


 昨日、カンイチはログアウトした直後に、箕から初めての指令を言い渡されていた。

 それはこの件について警察に相談すること。当たり前と言えば当たり前のことではあった。しかし、当のカンイチはあまり気乗りしていなかった。


「相談するって言っても、一度断られてるもんなぁ」


 カンイチは自分で聞き込みを始める前に、一度、交番に相談していた。その時は、半ば門前払いのような形で、真剣には取り合ってもらえなかったのだ。

 ただし、今回は箕から事前に話を通してもらっている。少しは真剣に聞いてもらえるかもしれない。

 カンイチは両頬を叩いて、ラーメン屋の戸を開いた。


「らっしゃいませ~」


 店内には客は一人だけ。カーキ色のジャケットを羽織った男。

 カンイチは男の隣のカウンターに腰を下ろした。


「蒲田さんですか?」

「倉門さんっスね。初めまして、蒲田っス」


 男はジャケットの内側から、警察手帳をちらりと覗かせた。

 どうやら、この男が箕の知り合いだという刑事で間違いない。


「長月さんから聞いてますよ、何か話があるとか」

「そうなんです、実は……」

「へい! つけ麺激辛一丁お待ちっ! そちらのお客さんは何にいたしましょう」

「きたきた、申しわけないっスけど、話は食べた後にしましょうか。うまいんすよ、ここのつけ麺」


 店員が、カンイチの注文を待っている。蒲田の前のつけ麺が湯気を立てている。赤いつけ汁からの、濃厚な肉とカプサイシンの匂いがカンイチの鼻孔をくすぐる。


「……同じものをお願いします」

「あい! 辛つけ一丁!」


 ほどなくやってきたつけ麺は、とてもおいしかった。でも、もし今度来るときは辛さを一段階落とすだろう。


「うまかったでしょ。長月さんのところに寄った日は、ここのつけ麺を食べるのが決まりなんスよ」

「箕さんとは長い付き合いなんですか?」

「それなりっすかね。たまにウチの捜査に協力してもらう代わりに、警察……というより俺がちょいちょい面倒を見るって感じっす」

「警察に協力ですか!?」

「なんだかんだ、すげー人なのは間違いないっすからね。いろいろとあれな部分もあるっスけど。ほら、大変でしょ、長月さんの相手は。雑用とか押し付けられたり」

「そうですか? 別に気になるほどじゃないですけど」

「あれ、そうっすか? ……実はこっそり反省してたんスかねぇ」

「でも、いきなり助手をやれって……。自分に務まるか……」

「あぁ……長月さんのいつものヤツっスか」

「やるしかないのはわかっているんですけど、どうしても不安で……」

「大丈夫じゃないっすか。もっと自信持てばいいんスよ。あなたは長月さんのお眼鏡にかなったんスから。不安になる前にまずは話しましょ。あるんでしょ、話」

「……そうですね。ちょっと長くなりますけど大丈夫ですか?」

「他のお客さんが来るまでにお願いしまっス」


 カンイチは頷き、空になった鉢を握りしめながら、彼女と最後に会った日のことを思い返した。


 それから十数分。


「なるほど、行方不明者の捜索っスか」


 概ねの事情を聴き終えた蒲田は、目を閉じて頷いた。


「捜査していただけるんですか」

「申しわけないっスけど、それは厳しいっすね。警察として動くには事件性が低いっス。……なんだかんだ警察は忙しいっすからね。俺はともかく」

「そうですか……」


 正直に言えば、カンイチもあまり期待してはいなかった。それでもショックは大きい。蒲田が悪いわけではないけれど、お門違いの苛立ちがカンイチの胸に湧き上がってしまう。


「なんで、個人ではちょいちょい調べとくっス。進展があれば長月さんを通してお伝えするってことで」

「えっ!? 捜査はできないんじゃなかったんですか!?」

「あくまで警察としてはっスよ。長月さんとこからの話ッスからね、大手をふってとはいかないっスけど、俺の空き時間くらいは提供するッスよ」

「ありがとうございます!」

「そんな大げさに感謝する必要はないっス。これも俺の出世のためっスよ。長月さんから話をもらって、思わぬ大手柄! ってこともあったッスから」

「蒲田さん……」

「そんなに目を潤ませないでほしいっス。やりづらいなぁ……」


 蒲田は頭をポリポリと掻いた。


「あ、そうだ、せっかくだから、先輩として長月さんとうまく付き合うコツを教えるっス」

「そんなものがあるんですか?」

「ずばり、長月さんとうまくやっていくコツは『適当』っスよ」

「え、そんな適当な……」

「付き合いが長くなれば、いつかわかるっスよ。それじゃ」


 そう言い残すと、蒲田はニヤリと笑って席を立つ。

 そのままひらひらと軽く手を振りながら店を出て行った。



 カンイチが刑事の蒲田とあいさつした翌朝。

 箕のマンションの一室へ、カンイチはやってきていた。


「眠い」

「寝起きでしたか? それはすいませんでした」

「違う、これから寝るところだったんだ」

「今、朝の九時ですよね」

「何か文句でもあるのかい」

「……いえ。昨日警察の方とお会いしてきたので、次は何をすればいいか確認したいと思いまして」

「自分で考えたまえ」

「もうちょっと具体的にお願いします」

「一昨日言ったじゃないか、君は犯人なり参考人なりをここに連れてきてくれればいいんだよ」

「ですからその方法は……」

「それを考えることも含めて助手くんの仕事さ。」


 箕はゲーミングチェアにもたれて、眠たげに目をこする。

 箕がこれ以上答える気がないのは、誰の目にも明らかだった。

 カンイチは箕に聞こえないように、小さくため息をついた。


「さぁ早いとこ行った行った! 私は眠いんだ。おやすみ」

「寝るって、まさか床で寝るつもりですか」


 ベッドや布団が用意されている様子はない。

カンイチがここを初めて訪れた時、箕は床に転がって眠っていた。まさか、いつもそんな状態で寝ているのか。それはそれで逆に尊敬してしまいそうだ。


「いや、椅子の上で寝る」

「良かった……。いや全然良くない、体壊しますよ」

「別にこっちの体が多少壊れても構わないさ」

「良くないです。彼女を探してもらわなくちゃいけないんです。いざって時に倒れられたら困ります。ちょっと待っててください。ベッドメイクしますから」

「はは、強引だな、君は」


 床に散らばるゴミを脇によけて、部屋の隅から折り畳み式のベッドを引っ張り出す。

 カンイチがベッドを準備している様子を、箕はあぐらを組みながら眺めていた。


「……ベッドの上で眠るのは10日ぶりだ」

「もっと体を大事にした方がいいんじゃないですか」

「それは余計なお世話だね。調子に乗らないように」

「調子に乗ってなんかいませんよ。俺がやりたかったからやっただけです」

「そういうのを余計なお世話というんだよ」


 箕は元々着ていた部屋着のまま、ベッドへと向かった。


「俺は事情を知ってそうな人を探してきます。……ぜんぜん当てはないですけど」

「……まずは彼女の友人を探すといい」

「え?」

「私は寝る。早く出たまえ。デリカシー不足の助手め」


 あなたには言われたくない。そうカンイチは思ったが、口には出さなかった。


「……ありがとうございます」


 代わりにお礼の言葉だけを返して、カンイチはマンションを出た。


「友達を探せ……か」


 カンイチは、箕からもらった助言をもとに、大学へと足を向けた。

月、水、金の週3回投稿予定。

次回は第11話「聞き込み再チャレンジ」。2021/02/17(水)投稿予定です。

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