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眠り猫は抱き枕を離さない  作者: しんら
8/30

7.

 

 小高い丘の上の集合墓地。

 見晴らしがいいからここにした。

 世界を巡るのが好きな2人だったから。

 心地よい風が吹いている。


 見慣れた墓石の前に立つ。


 お墓参りは毎月しているけど、こんなに凪いだ気持ちでここに立てる日が来るとは思わなかった。


「お父さん、お母さん」


 ずいぶん長くかかってしまったけど、ようやく2人のことを受け止められたみたい。


 気づけば2人がこの世を去ってから5年の月日が流れていた。我ながら情けない。自分がこんな風になるなんて思ってなかった。でも必要な時間だった。そう思うことにする。


 夜ぐっすり眠れるようになったわけでも、鼻が利くようになったわけでも、ご飯が美味しく感じるようになったわけでもない。何も改善されていないけど、不思議と気分は晴れやかだ。


人懐っこい後輩の笑い顔を思い出す。


「きっともう、大丈夫」


 お行儀は悪いけど、墓石の前によいしょと座ってたくさん話をした。


 仕事のこと。

 フィーやその家族のこと。

 最近できた後輩のこと。

 昔ほんの少しの間飼っていたトカゲのこと。

 体調のこと。

 それから前世のこと。


 たくさん話して喉がカラカラで、持ってきた水をゴクリと飲んだ。


「...はぁ、おいし」


 心からそう感じた。

 空が青い。久しぶりに見上げた空は綺麗だった。

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