7.
小高い丘の上の集合墓地。
見晴らしがいいからここにした。
世界を巡るのが好きな2人だったから。
心地よい風が吹いている。
見慣れた墓石の前に立つ。
お墓参りは毎月しているけど、こんなに凪いだ気持ちでここに立てる日が来るとは思わなかった。
「お父さん、お母さん」
ずいぶん長くかかってしまったけど、ようやく2人のことを受け止められたみたい。
気づけば2人がこの世を去ってから5年の月日が流れていた。我ながら情けない。自分がこんな風になるなんて思ってなかった。でも必要な時間だった。そう思うことにする。
夜ぐっすり眠れるようになったわけでも、鼻が利くようになったわけでも、ご飯が美味しく感じるようになったわけでもない。何も改善されていないけど、不思議と気分は晴れやかだ。
人懐っこい後輩の笑い顔を思い出す。
「きっともう、大丈夫」
お行儀は悪いけど、墓石の前によいしょと座ってたくさん話をした。
仕事のこと。
フィーやその家族のこと。
最近できた後輩のこと。
昔ほんの少しの間飼っていたトカゲのこと。
体調のこと。
それから前世のこと。
たくさん話して喉がカラカラで、持ってきた水をゴクリと飲んだ。
「...はぁ、おいし」
心からそう感じた。
空が青い。久しぶりに見上げた空は綺麗だった。