1.
誰かの声がする。
「...ディアさん、リディアさん」
ぐっと意識が引き戻される。
「リディアさんっ、大丈夫ですか...?」
「え...」
まばたきを数回。
わたしが居るのは見知った職場。
肩を掴んで軽く揺さぶっているのは後輩。
「あ...ああ、ごめん。...なんだっけ?」
「顔色が悪いですよ」
「え」
「少し休んだ方がいいです。休憩室行きましょう」
あれ?この金髪の美少年は誰だっけ?
立てますか?足元気をつけて、などと言いながら、手を貸して肩を抱いてわたしを部屋の外へ連れ出す。
いや、まじで誰だ。
後輩...なんだけど、名前が思い出せない。
ていうかわたしって、リディ...?
えっと...ここって日本じゃないよね。
ふらつく体を支えられ、ぼんやりした思考のままたどり着いたのは狭い部屋。
「さ、少し休みましょう」
ベットとサイドテーブルがあるだけのシンプルな室内。
ベットに座らされ、なんとなく手のひらで額を抑えるとすかさず声がした。
「頭痛します?風邪かな?」
美少年は甲斐甲斐しくわたしの世話をする。
「横になってください。少し眠りましょう」
いつの間にか靴を脱がされ、体を横たえられている。
なんという早業。何がなにやら分からない。
でもこれだけは言える。
美少年よ、お姉さんはそう簡単には眠れないんだ。
それでも目を閉じていると、少ししてそっと額を撫でられた。
冷たい手。
その時ふわりと漂った香り。
あ...いい匂い。
そう思ったのを最後にわたしは意識を手放した。