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修平とアルカナイとアドリ

袋……。


エリカに置いていかれた俺は袋と2体の死体に囲まれている。


すぐ様開けてあげるべきなのであろう袋は、先程落とされた時の音が気になり開けられずにいた。


「鳴っちゃダメな音していたよな……」


だが、開けないという選択肢はない。

俺は恐る恐る、袋の紐を解くと針葉樹の様に濃い緑色をした髪の子供が眠る様に入っていた。


麻で出来ている様な軋む一枚の服。まるで奴隷の服の様にも見える。


「おい、大丈夫か?」


返事はない。だが死んでは居ない様だ。


「エリカみたいに状態がわかれば、どうにか出来るのだが……」


俺は考えた末、その子を抱えアルカナイさんの店に向かう事にする。エリカとはぐれてしまうからなるべく動きたくはないのだが、そうは言っていられない。


この世界では硬いせいか、思ったほど重くは感じなかった。だが、体力が帰宅部の一般高校生レベルの俺にはそれでもかなりしんどく、走って店につくまでには息が切れる。


はぁ……はぁ……


ここだったよな。


店の前に着き、ドアをあけると不思議な道具が所狭しとディスプレイされている。


「すいませーん……」


人の気配の無い店に俺の声が響く。

もしかして留守なのか?


「すいませーん!」


俺は声を張り、もう一度尋ねる。


「はい、いらっしゃい……」


すると中から、おばさんがでてくる。


「あの……すいません、アルカナイさんの店……ですよね?」


「ええ……わたしががアルカナイですよ」

「えっと……ファルムスのアルクさんより紹介してもらいました、修平と言います、いきなりなんですがちょっとこの子を見てもらえないでしょうか?」


「ファルムスのアルク……アルクが言ってたのは女騎士さんではなかったかい?……でも、まずその子をみましょうかねぇ……」


俺は子供を入り口の側にあった長椅子に寝かせ、アルカナイさんに見てもらう。


「この子は……魔法で眠らされているだけだねぇ……でもダメージはあるみたいだから道具を持ってこようかねぇ、ちょいと服を脱がせといてもらえるかい?」


俺は返事をし、アルカナイが奥へ行く間に麻のふくを脱がせようとする。


よく見るとかなりまだ10歳にも満たないくらいだが整った顔つきの様だな……なかなかイケメンに……ちがう。美女になるな……。


髪が短くボサついていたので男の子だと思っていたが、服を脱がせると綺麗な肌に女の子だということがわかり俺は少し気まずくなった。


「あらあら、女の子かい?」

アルカナイさんはそう言って毛布を被せ、石の様な道具でその子を撫でた。


「これはちょっと強めの打撲だろうねぇ……これで怪我の方は大丈夫だよ」


アルカナイさんは石の様な道具を俺に渡すとそれで女の子の頭や顔などを拭いておく様に言う。石は思いの外柔らかく密度の高いスポンジの様だ。


「すごい、髪が綺麗になって行く……」

「それは魔道具の再生の石、撫でる事で回復魔法と似た効果を出す石ですよ」


なるほど……俺は女の子を膝枕し、撫でながらアルカナイさんに経緯を話すことにした。


「そう言う事なのかい?それで、女騎士さんはそれで来ていないのねぇ……ただねぇ、その子、ドライアドの気配がしますよ」


「ドライアド? ドライアドってなんですか?」

「森の精霊ですよ、純血の子ではないのですが、木の香りがしていますねぇ」


確かに檜の様な香りがする。


「その子をどうするおつもりですか?」

「うーん、俺はどうしようもないからエリカと相談してみます……」


アルカナイさんは微笑むと、

「そういえば、わたしに見せたい魔道具があるとアルクから聞いてたんだけど、もってるかい?」


そう、そもそもこれが本来の目的だ。

「はい、自分のなので持ってます!」


俺はスマホをアルカナイさんに渡すと驚いた様に言う……。

「なんだいこりゃ? えらく複雑な術式だねぇ……」


「やっぱり魔道具みたいな物なんですか?」

「これは魔道具としか言えないねぇ……だけど、あんたはこれでどうしたいんだい?」


「一応自分の世界の通信機器なんで、連絡取れたり出来ればいいと思ってます」

「通信かい……確かにこの術式は通信の為と言われれば分からない事もないねぇ……ちょいと時間がかかるかも知れないけど預からせてもらってもいいかい?」


「あ、はい。わかりました……」


「それじゃあ、女騎士さん来るまでその子と待ってな!」


そう言うとアルカナイさんはスマホを持って奥の部屋に消えた。


エリカ、大丈夫かなぁ……。

俺は後を追ったエリカが心配になりながらも女の子を撫で続けた。



「もしもーし!もしもーし!」


聞いた事の無い声で俺を呼ぶ。

あれ、確かアルカナイさんの店で……えっと。


寝てしまったのかな?


「お兄さん? 今、起きましたね? 起きましたよね?」


「えっ? 誰?」


「あの、それはアドリの方が聞きたいんですけと?」

「あぁ……」


意識がはっきりし助けた女の子だと理解する。


「あのぉ、別のお兄さんがご飯奢ると聞いて付いて行ったらよくわからない部屋で眠らされて気づいたら裸でお兄さんに膝枕されて寝ていたんですけど、これは乙女としてはかなりまずーいとおもうんですよね? それでお兄さんは何者でアドリを裸にして何をしようとしていたのか教えてもらっていいですか?」


目覚めそうそうにめちゃくちゃ喋ってくるな。

だけど、この状況何から説明しようか……。

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