2 過剰
金曜日は夕方辺りにPVが伸びるので、ためしに投稿時間を変えようと思っただけで決して遅刻ではない(キリッ)
遅れて申し訳ありませんでしたー!!!
マユを乗せたヘリコプターを見送った次の日から、私はマンションの改築作業に従事することに相成った。
うん。私そっちのけで話は進んだよ?完全に私の魔法を宛にした改装計画のハズなのに主力抜きで話が進められてたよ?不思議だね!
まあ、それに関しては文句を言うつもりはないよ。確かに、見ず知らずの人たちのために私が力を振るうことには抵抗はある。
だけど、骨折が治ったらマユもここを拠点にするって話だし。叔母さんもはるちゃんも将来的には利用するって話だ。"誰か"ではなく、私の"大事な"人たちのために力を振るうのに忌避感なんてないさ。
それでも言わせてほしい。
いやね?≪メディカルエリア≫再稼働を一日でも早く実現したいのはわかるよ?それに、私の希望もあって不特定多数の人の前で力を使いたくないって事に配慮してくれたのもわかるよ!?
それでも、ほとんどの作業を私任せとはどういう了見ですか叔母さん!!
そういうことだからよろしく!って言われた次の日にマンションに訪れたのがはるちゃん一人って!!
そして、渡された工事の予定表に『魔法でどうにかしてね♪』ってメモを貼るのはやめてね!?予定表って言っても完成予想図だけ渡すのも私どうかと思うよ!?
かなり大きく範囲を広げないといけない関係で朝から晩まで工事にかかりっきりだからさっちゃんとのふれ合いとかブラッドとの狩猟とかの時間が、無い!!
夜にくたくたになって戻ったら二人とも甘やかしてくれるけどさー。
さっちゃんに膝枕されながら頭よしよしされるのは至福だし、ブラッドが抱き枕になってくれるのは嬉しいけどさー。
どっちをしてるときもはるちゃんが居るんだよ!すっげぇ笑顔でスマホ(の進化系)で写真連写されるんですけど!?
報告先は!?叔母さんとマユとエッコとココ?うん?後ろ二人とは未だに再会できてないよね?なんで私の情報だけが拡散してるんです?
へへっ。プライベートも油断ならねえや。
うん。そんな毎日を送っていたせいだろう。私の頭は湯だっていた。一日でも早い労働からの解放を求める余り魔力を普段より回しすぎたためにかーなーり"ハイッ"になって作業を進めたんだよ…。
着工から二週間後。
無事に改築に成功したマンション。その正面玄関の前で今私は―――
「とーる?」
「は、はい!」
「何か申し開きはあるかしら?」
「えーっと…。てへぺろっ!」
バチコーンと音がしそうなウィンクと共におどけると、ゴッという音と共につむじ付近一帯に痛みが走る。ぐぉお…とうめき声を上げながらも目線を上に向けると、叔母さんの冷たい笑顔が…。
はい。ただ今腕組みして仁王立ちしながら般若を背負う叔母さんの前で現在絶賛正座中です。
うん。なんというかね。ちょっとテンションに任せるままに行動しすぎたよ。
マンションの周囲――以前に行った簡易的なそれと比べると周囲を囲う堀も壁も大幅に形を変えた。
前の物を上から見ると二重丸にも見えたであろうそれらは完全に形を変えて、漢字の凹に見えるだろう形にマンションの周囲一帯を囲う物となっている。
空堀の深さや壁の高さは変えてないけどね?ラフィールでよく使われていた≪汎要塞寸法≫というのに合わせてあるよ。
ただ、壁の厚さとかはいじった。上で人が戦えるようにね。内側には階段も増設したよ!
あ。あと壁は整地で沢山手はいった金属を打ち込んで疑似鉄筋コンクリート建築にバージョンアップしたけどね。
うん。広さで言えばどれぐらいだろう?結構広げた自覚はあるよ。たぶん、私のスポーン地点のショッピングモールふたつぐらいなら余裕で入ると思う。まぁ、防壁拡張作業中にゾンビも敵とも遭遇したせいで思ったよりも時間が掛かったのは予定外だったかな?
一回生理中で頭がボーッとして、しゃべったらリバースしそうな時に自衛隊の人たちとも出会った気がするけど。
一週間かけて建設?拡張?予定地を一掃してから全力で勤しんだよ!
凹の左側は今までマンションが立っていた位置だったことから、生活エリアとして拡張した。
具体的には無人の二階建てのアパートを地面から引っこ抜いて三棟移築したよ?【ストレージ】ってサイズ無視して物が仕舞えるからね。出たり入ったりする光景はなかなか気持ち悪いけど。ズルンって感じだから。
そして、全ての建物に≪ウーズ槽≫完備させたからトイレもお風呂も使えるのだ!!
水もちょっとした装置を取り付けたから困ることも無い上に山あいからかっぱらってきた太陽光パネル完備と至れり尽くせり仕様だぜっ!マンションにも自重せず取り付けたよ!
右側はヘリポートを完備させた軍需施設予定地にしたよ!大型の機材だろうと何だろうと持ち込めるぜぃ!
そして、凹のへこんでる部分が外と中との唯一の出入り口として橋を設置したよ。建築の本を読み込んで作り上げた自慢の逸品である!跳ね橋の機能はオミットしたけどね。
その代わり、壁で囲んであるからゾンビだろうと賊だろうとフラフラ近付いてきたら設置予定の機関銃で蜂の巣に出来るよう考えてあるのさ!あっちの砦だと≪防衛構≫って呼ばれる形状で、上から投石したり油を投げたりする足場なんだけどね。
まだ防衛する人員が揃ってないから壁に穴開けて無いけどね。
正座したまま自慢の双丘(見栄)を張るという器用なことをしながら、若干早口で叔母さんに説明をすると、頭を抱えたままうずくまってしまった。
「岡崎三尉、どうして止めなかったの?」
「本気になった透ちゃんに付いていくのは無理です。それこそ【試製戦殻】無しじゃ生身ですら追随不可能です」
地の底から響くようなうめき声を発した仕事モードの叔母さんとはるちゃんの言葉を聞いて、あの有名なフレーズ『何かやっちゃいました?』が一瞬喉元まで出かかったけど、何とか飲み込んだよ。今それを言ったらやぶ蛇どころじゃない気がしたからね。
はるちゃんと二、三何か言葉を交わしていた叔母さんだったが、深く。それはもう深く溜め息を漏らすとスマホを取り出して誰かに電話をかけ始める。
不思議とその横顔が煤けて見えたんだけどどうしてかな?
それから一時間後。【身体強化】を使い忘れていたために正座した私の脚がしびれて感覚が無くなった頃。
この壁と堀に囲まれたマンション一帯が日本で二番目となる【Z区内居住地】として、≪メディカルエリア≫より先に認定されたのは私のせいじy――ごめんなさい。私のせいですね、ハイッ!!
◆◆◆◆
「あのね、とーる。私は確かに貴女にお任せしたわよ?そうね、全部任せたわ!間違いなくね!でも、ここまで非常識とは思わなかった!!」
説教を受けながら小さくなるバカ義娘を睨み付けながら酒精で熱くなった息を吐く。
礼司くんの遺した高いお酒だけど、真弓ちゃんから許可は得てきたんだから気にはしないわ。
「えっと、ちょっと興が乗ってしまいまして…。はい、反省しております…」
「えっと。とおるさんもこう言ってますし、お母様もその辺りでいいのでは…」
台所でおつまみの追加を作っていた幸ちゃんが配膳をしながら苦笑と共にバカを擁護する。
ダメダメ。この子は調子に乗るとロクな事しないんだから。
「ダメよさっちゃん!貴女もとーると付き合うなら覚えておくべきよ。この子は誉めると伸びるんじゃなくてブレーキが外れるタイプだから。やり過ぎたら徹底的に反省を促さないと」
そうグチグチと言いながら、幸ちゃんが持ってきてくれたおつまみを一口。あら、美味しい。鯖缶のアレンジ料理なのにこんなに美味しくできるんだ。あとでレシピ教えてもらおうっと。
「さっちゃーん!かあさんの為に頑張ったのに怒られてるよぅ!慰めて!」
「とおるさん。さすがに、やりすぎです。今回は大いに反省してください!めっ!!」
「さっちゃんにも怒られた!?」
目の前で繰り広げられる茶番を眺めつつ、グラスに注がれたウィスキーを飲む。
ストレート特有の消化器官を焦がすような熱さが心地いい。
……本当に、何も変わってない様に見えるのにね。性癖以外は。
―――私の義娘である透が、突然行方不明となって十七年。どれだけ必死に捜索しても、わずかな手懸りすら見つけられないままに日本は――世界は未曾有の大災害に巻き込まれた。
透の捜索の為だけに通幸さんが発起人となり立ち上げられた【特務部隊】は、その性質ゆえに否応なく災害沈静化の為動くこととなり、その初志を果たす事が出来なくなった。
そして、調査員として一〇八Z区に配置されていた潮音一尉――真弓ちゃんの素性が良い噂を聞かないコミュニティにバレたため、彼女までも行方不明となって生存が絶望視され始めた折り。
突然。行方不明だった透が帰ってきた。
通幸さんに告げられて、逸る気持ちを抑えながらドアの窓越しに彼女を目にした瞬間。
―――彼女は、誰だ。
私の胸中に渦巻いたのはそんな言葉だった。
再び姿を見せた透は、行方不明となった日から姿が変わっていなかったのに、すっかりと身にまとった空気だけが変わり果てていた。
十七年の時が過ぎているハズなのに、大して歳を取っていない見た目。受験に受かるまでの願掛けと言いながら伸ばしていた髪の毛だけが短くなっているだけの若々しい姿。
だというのに、その身にまとうのは足がすくみそうな程冷たい空気。
まるで、世界そのものを呪うような――それでも目を離した瞬間にそこから消えて居なくなってしまいそうな気がして。
気付いた時には、貴女はここに居て良いの。居場所はここにあるの、と。万感を込めながら透の体を抱きしめていた。
そこで、やっと。やっと私は透が。私と通幸さんの間を繋いだ大切な義娘が帰ってきた事を実感した。
どこに行ってたのかと聞いた時に、異世界と言われて妙に納得してしまった。
それと同時に、それを告げた時の透の泣きそうな目を見て怒りが込み上げてきたのを必死に抑える余り真顔で返答してしまったのは義親としてどうかとは思う。
心中は大荒れだったけどね。よくも大事な義娘を傷付けてくれたな。って。
彼女の得た。望まずに手にした戦闘力も目にした。指揮車輌の中で悔しさと怒りの余り通信機を握りつぶしそうになって同席していた隊員に全力で止められてしまうほどに怒りは尾を引いた。
その時に、岡崎三尉――透の親友の一人。 悦子ちゃんの妹の晴美ちゃんに言われたのだ。
『そんなに深刻そうな顔は、絶対に透ちゃんの前ではしちゃいけませんよ』と。
だから今回の"女子寮"の件も、あえて軽い調子を装って依頼したのだ。依頼したんだけど……。
「とーる。やっぱりやり過ぎ」
「ふへっ!?またその話!?」
幸ちゃんから慰めてもらえないと知るや、彼女にしなだれかかり甘え始めたとーるにジトっとした視線を投げながら溜め息を吐く。
「興が乗っただけで、なんで要塞作ってるのよ…。ねぇ、バカなの?」
「いいじゃん、いいじゃん!住みやすいよ?夜も安心だよ!?」
ぶぅっと頬を膨らませて口を尖らせる子どもっぽい抗議に、ついつい苦笑が漏れた。
「あのね…上に説明する私の身にもなって?豊臣さんちの太閤様でもたった二週間で要塞を作り上げるなんてできるわけないでしょ!常識を異世界に置いてきたの!?貴女は!!」
「異世界じゃこれが常識ですぅ!砦の建設に魔法使いが携わると短期間で砦が建つんですぅ!!」
なんだろう。わずかに頭痛を感じてこめかみを押さえたら『いえ、透さんのそれは大分非常識です…』ってつぶやく幸薄そうな女性の姿が頭をよぎったんだけど……。
「やっぱり、家族にはいい格好したいじゃん」
ポツリと透が漏らした言葉を耳にして、言葉に困る。
……そんな事言われたら、叱りにくいじゃないの。
それでも、私はしっかりと彼女を叱らなきゃいけない。
だって、間違えた事をした娘を叱るのも家族の務めだから。
「……明日から、言い訳でっちあげるから手伝いなさい。終わるまで引っ越しは認めません!」
「え゛…」
「絶対ですからね?」
ニッコリと笑みを浮かべながら言い放てば、透の顔が凍りつく。
辻褄を合わせる必要が出たんだもの。元凶にはしっかりと付き合ってもらわないとね。
久し振りの家族の時間も持ちたいし。
喉まででかかったその言葉は、結局口にすることは無かった。
11/15(金)投稿
拙作をお読みいただきありがとうございます。
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