米軍新兵教育資料"Z" 全訳③
登場人物紹介とかいりますかね…?
≪……同期に成功。三分後に授業後半を開始します。すみやかに席に着き、そのままお待ちください≫
ハロー、新兵の皆様。昨日振りの再会を嬉しく思います。
本日も昨日と変わらず【RoM】があなた方の授業を担当させていただきます。
さて。本日は"Z"の種別について説明をさせていただきましょう。
本日は室内にてイエローバイタル発症者が六割を越えない限り休憩時間を設けない予定となりますので、受講者番号四七と六九のお二方は今すぐにトイレに行くことをおすすめします。
はい。皆様お揃いですね。それでは本日の授業を開始いたします。
タブレットに表示されるARホログラムをご覧ください。
まず、最初に説明いたしますのは昨日もさんざん見たとはお思いですが、最も基本的な個体である≪ゾンビ≫です。
これを基本として、様々な【変異個体】や【進化個体】が発生していくわけですね。
基本的なスペックは人間だった頃に準拠すると言われています。ゆえに雌雄や幼体と言った見た目の差異が生じるわけですね。
単純なスペックから見た駆除のしやすさで言えば、圧倒的に子どもをベースにした個体が簡単だと言えます。
ただし、 ワタクシのようなAIと違い人間が持つ"メンタル"から考えると、同時に最も駆除の難しい個体だとも言えますね。
ためらった場合は、間違いなく自らだけでなく仲間の命を危険に晒します。
加えて、全ての個体に共通して言えることですが見た目に関わらず彼らは残らず"Z"という寄生体によって既に殺された後です。
躊躇うことなく眠らせてあげてください。それが、生者にできる犠牲者への献身だとよくよく理解をしておいてくださいね?
そして、もうひとつ。これは、我がアメリカ軍において報告事例は一度もありませんが――好みの外見をした個体を見つけて囲うなんて真似はやめてくださいね?
旧ブラジル領内にて女性ベースの個体を捕獲したバンディット・チームが性交に踏み切った結果。チーム丸ごと壊滅した事例が少なくとも一件以上は確認されています。
死体愛好家は人間としてどうかとワタクシは思いますので、自重を勧告させていただきましょう。
冗談だとお思いですか?そんな方は寮に戻り次第動画サイトにて"ゾンビ セックス"と調べてみると良いでしょう。人間の業の深さにワタクシ閉口するばかりであります。
ワタクシ、口がありませんけどね。
さて。話が逸れてしまいましたね。
ともかく、どこぞのカルト集団の様にゾンビ保護などは一切考える必要などありません。
サーチ・アンド・デストロイの鉄則をお忘れなきようお願いいたします。
それでは、次に行きましょう。
これ以降はすべて恐るべき【変異個体】となります。
まずは、やはりこの個体でしょう。
夜にのみ姿を現す≪スクリーマー≫です。
ゾンビを率いる統率個体としても有名ですね?
日中は他のゾンビに紛れてしまうため、発見することは不可能です。全く見た目では判別がつきません。
昼間にゾンビを駆除したと思ったら実はスクリーマーだった…なんて事もまま起こりうる変異個体となります。
それでは画像を表示いたします。例によってスクリーマーの解剖写真ですので苦手な方はご注意ください。
はい。見てわかる通りに肺に当たる器官が肥大化していますね?これにより膨大な肺活量を誇るスクリーマーは、名前の通り巨大な叫び声を上げることができます。
なんと、叫び声の大きさは最大で二〇〇デシベルにも達する事が確認されています。
更に、その上げた叫びはそれが届く範囲全てのゾンビを集める効果を持ちます。
スクリーマーは≪パッシブ≫の状態で音を耳にすると、すぐさま猿のような悲鳴を発します。そして、それを耳にしたゾンビを集めることで人間への攻撃を開始するわけです。
この時。その叫び声によって別個体のスクリーマーと合流すると、次々と叫び声を全ての個体が発する事で加速度的にゾンビの大集団を結成するのです。
そう。この複数体のスクリーマーに率いられたゾンビの大集団こそが≪波≫と呼ばれ恐れられているモノの正体です。
更に、この叫びには他のゾンビを興奮させる作用があると言われており、スクリーマーに率いられたゾンビの集団は非常に狂暴な代物となっていますので対処の際は必ずESを用いて行ってください。
圧倒的な物量によって屈強な戦車部隊がいくつも壊滅させられた事実を、決してお忘れなきよう。
ただ、このスクリーマー単体の対処はそう難しいものではありません。
次の画像を表示します。ムービーからのキャプチャ画像のため見づらいモノではありますが…。
はい。今画像に映っている個体が膨れたように見えるのはわかりますか?これが、スクリーマーが叫ぶ前に見せる特徴的な行動です。
肺活量を増やしたことによって、スクリーマーの肋骨は大きく開く為このように膨れて見えるのですが…今は関係ありませんね。
スクリーマーは叫ぶ前にこのような"溜め"を見せますので、見かけ次第とりあえず銃撃してください。数発銃弾を浴びせれば空気が抜けますので、少なくともゾンビパレードは防ぐことができるでしょう。もちろん、腕に自信がおありでしたら一撃で頭を吹き飛ばせばすみやかに無力化も可能ですよ。
身体能力はゾンビと遜色ないため、落ち着いて対処すれば倒すことは難しい個体ではありません。
出会いたくない。ですか?ならば、日中に行われている掃除作戦への参加を推奨いたします。いくら見分けが付かずとも、区域内に存在するゾンビを全て倒してしまえば関係ないのですから。
それでは、次の説明へ移りましょう。
ゾンビの飢えを解消するための被捕食変異個体と考えられていた≪ベヒモス≫ですね。実際には最も危険な個体へと進化する前の蛹だったわけですが。
正直に申しまして、ベヒモスはゾンビの中でも最も倒しやすい個体です。
なぜなら、全く動かないのですから。
しかも、キスを交わす距離まで近付かなければ人間を見かけても全く反応を示しません。
ただし、この個体は非常に厄介な性質を持つため銃による対処ではなく近接武器か爆弾を用いた処理が推奨されています。
近接武器にて首を切り落とすか、爆弾によって粉々に吹き飛ばす事が最も簡単な無力化の方法なのですから。
超再生能力とでも言いましょうか。生体サンプルを調査したところ、その肉体の細胞すべてが癌細胞へと置換されていることが判明しておりますので、もしかしたら関連があるかも知れませんね。
ともかく、この個体は攻撃される端からその傷を再生させていくのです。手足を切っても生えてきますよ?さすがに骨は再生できないようですが。
ともかく、発見も容易ですので見つけ次第すみやかな処分を心がけてください。
特に、建物内にて発見した場合は他の個体を無視してでも優先して倒してください。
後述する≪ファンガス≫への進化が秒読みの個体となりますので。
そして、頭部を銃で破壊する場合は必ず原型を失うまで破壊してください。
通常のゾンビや≪スクリーマー≫ならば一発撃ち込めば沈黙しますが、この個体はそうではありません。
最悪、外部刺激によって急速に"Z"が成長を開始してその場で≪ファンガス≫に進化することとなりますからね?
さて。それでは≪ファンガス≫の説明に――と、言いたいのですが既に駆逐の終了したと言われている変異個体の説明をさせていただきましょう。
自爆個体とも呼ばれている≪リムペット≫です。画像を表示しますが……気分が悪くなった方は恥ずかしがらずに挙手を。
はい。見てわかります通り一歳以下の幼児が"Z"に寄生された存在になります。
その特性は極めてシンプルで、発見した人間。または、抱え上げた人間にしがみついて文字通り"爆発"します。
その威力は大したことがありません。精々飛んできた骨の破片で切り傷を負う程度です。
しかし、その本質は爆発範囲に飛び散った血液による集団感染を引き起こす点にあります。
ゾンビ発生初期は、大多数の医療施設や保育施設にてこのリムペットによる被害が発生しました。
さいわい。その個体の特性もありゾンビ発生一年を待たずに全滅したのですが―――
やはり、室内のイエローバイタル発症者が急増しましたね。
それでは、今より十五分休憩を取りましょう。
ドクターには昨日と同じように待機していただいていますので、必要であればメディカルケアを受けるように。
これは、フォローにはなっていないかもしれませんが……。
正規軍人の方々もこの個体の存在を知ったとき、皆様の様に急激なバイタル悪化が見られました。皆様の反応は正常であると、ワタクシが保証させていただきます。
……ゾンビの脅威に皆様の後ろに居る民衆が晒されることが無ければ≪リムペット≫はこの世界に二度と現れないのです。
あなた方の尽力により、このようなおぞましくも悲しい存在が、二度と生まれないことを願っております。
それでは、また休憩後お会いいたしましょう。
11/7(木)投稿。
拙作をお読みいただきありがとうございます。
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