米軍新兵教育資料"Z" 全訳①
昨日翠
「さて、ゾンビ設定投稿するンゴ」
↓
「うわ、予想よりとっちらかってる…これ、読み物じゃないわ…ヤベェヨヤベェヨ」
↓
「あ(発想の転換)。幕間として話にまとめたろ!」
そして、仕事中に書き上げたのがこちら←
遅くなって申し訳ありませんでしたぁ!!
≪対"Z"ES部隊新兵を対象とした授業を開始いたします。受講者の方は本コンソールAIをタブレットと同期させてください≫
≪…………≫
≪………≫
≪……≫
≪…≫
≪同期に成功。今から三分後に授業を開始いたします。速やかに席に着き、そのままお待ちください≫
ハロー、新兵の皆様。ワタクシは本授業を担当いたしますAIの【RoM】と申します。座学という短い期間の。そう、皆様方の中から補修を受ける新兵の方が出ない限り短いお付き合いになるとは思いますが、どうかよろしくお願いいたしますね。
さて。あなた方はアップロードされたデータを参照する限り中東地域派遣部隊への内定を受理された方がほとんどですね。
今よりワタクシの行う授業は、配備された皆様が戦うことになる敵。すなわち"Z"に関してのモノとなります。
ああ、席の中座は認められていません。確かに"Z"に関する知識を持たない人類は生まれて間もない赤子ぐらいのもの。
ですが、それはテレビを通じて。またはインターネットを通じてのほんの上澄みの知識なのです。ですから、真面目に聞くことを推奨いたします――二階級特進か遺族年金受け渡しにサインをしたくないのであれば。
……よろしい。それでは、授業を開始いたします。
皆様もご存じの通り二八年前。西暦二〇三四年十二月二十四日のクリスマスイブの日を境に、人類はその生存区域を大きく後退させることとなりました。≪一二二四事件≫。≪ブラッディクリスマス≫。≪極寒の惨劇≫――さまざまな呼称こそあれ、その内容は大きく違うことはありません。
その日、人類の天敵たる"Z"という寄生生物による人類に対しての大規模な虐殺が行われた忌むべき日なのですから。
我らがアメリカは、かねてから"Z"の襲来に備えて訓練を密に行っていたため国土防衛に成功いたしましたが―――ロシアとオーストラリアを除く全ての国々が国土の放棄。または、政府の崩壊という大惨事に見舞われることとなりました。
我が国においても、国土防衛は叶ったもののアメリカ大陸の完全奪還までおおよそ十五年もの月日を費やすこととなりました。
そして未だに、人類は地球の全てを奪還したわけではありません。
今では人類が優位に戦いを進めておりますが、我らがアメリカの終生の友人たる日本において≪三六式戦殻≫や≪抗Zワクチン≫の開発された西暦二〇三六年十一月までの約二年間。人類は常に"Z"の脅威に晒され続けたのです。
そして、それらは≪Z-area≫内にて行われた生存者のおびただしい犠牲の元成り立った叡知の賜物であると英雄たちは確信しております。
ですから、皆様は――未来の英雄たる新兵達は知らねばなりません。自らが戦うべきものを。そのおぞましい生命のことを。
ホームルームが長くなりすぎましたね?それでは今より"Z"に関しての基本知識プログラムを行いましょう。
お手元のタブレットより表示されておりますARホログラムをご覧ください。
現在表示されていますのは"Z"の最も基本的な存在通称≪ゾンビ≫となります。
そして、最も人間を殺害した存在です。
記録によると人類が"Z"を発見したのは西暦二〇三四年十月アメリカ旧マサチューセッツ州にて発生した猟奇殺人事件現場でのこと。
急行した警官の制止を振り切り犯行を続けようとした犯人が射殺された事によって、それまで闇に潜んでいた"Z"の存在を人類は認知することとなりました。
今現在表示されているのは、当時の世界中で発生していた猟奇殺人事件および行方不明者数を表したグラフです。ええ、これ以前にも事件が発生していることが一目瞭然ですね。
一度話を戻しましょう。
射殺された犯人を司法解剖した結果。その犯人が未知の菌糸類生命に寄生されていた事が判明いたしました。
ショッキングな画像を表示いたしますので、エチケット袋の準備をお願いします。ええ、皆様の座っているデスクに予め準備されておりますのでそちらをご利用ください。
バイタルデータは常に観測しておりますので、PTSDの兆候を認められた場合、対象者は即受講を停止いたします事をご容赦願います。
……皆様落ち着きましたか?それでは授業を再開いたしますね。
見ての通り、犯人は脳の大部分。そして、体中に植物の根のようなモノに侵食されていました。
これこそが"Z"――ヒト種寄生菌糸類"Z"の正体となります。言ってしまえばキノコの一種類ですね。
研究が進むにつれ、この菌糸類の恐るべき生態が次々と明らかになっていくこととなりました。
まず"Z"はヒト――霊長類ヒト科ヒト目。すなわち人類にしか寄生することはありません。
パニックムービーのようにアニマル・ゾンビが発生することが無かったことは、数少ない幸運と言えるでしょう。
寄生――いえ、せっかくパニックムービーの話をしたのですから、以降感染と言いましょう。
感染の経路は判明しています。唾液や血液を介したモノおよび粘膜接触。後の項目にて触れる≪ファンガス≫発生後は空気感染もありますが、おおむねこの二つです。
潜伏期間は四時間と大変短く、感染後は三時間以内に≪抗Zワクチン≫の投与をしない限り確実に二十四時間以内に死に至ります。
折角≪抗Zワクチン≫に触れましたので、その説明もここでしてしまいましょう。
皆様も一度は投薬経験があるとは思いますが、≪抗Zワクチン≫通称≪パラケルスス≫は投与から十二時間の間、血中の酸性濃度をギリギリ人体に悪影響が出ないレベルに高める事によって侵入を果たした"Z"の子株の生存を不可能な状態にする薬品です。
その性質上連続投与は認められておらず、投与後二十四時間は再投与は【G6】医療条約にて禁止されています。最悪死に至りますので、必ず守るようにしてくださいね?
年間若干名。連続投与による死亡者が我がアメリカ軍内だけでなく、世界中の軍隊にて確認されておりますので、くれぐれもお忘れなきよう。
え?主成分ですか?
……衛生兵課程へと進んだ皆様から『知りたくなんて無かった』との声が毎年聞かれていますが、それでもお聞きしたいですか?
――よろしい。懸命な判断です。
ES随伴歩兵課程へと進む皆様は、"Z"の完全駆逐が成るその日までお世話になる薬品です。
戦地で手が震えて投与できなければ、その先に待っているのは"Z"と変わる未来だけですから恐れる事なきよう。
さて、話を戻します。
"Z"は感染後三時間で人間の指令中枢――すなわち脳へと到達。そして、その掌握を開始いたします。
その際被感染者は発熱・頭痛・嘔吐の症状を訴えますが――それが出た時点で手遅れです。その後にも痙攣や意識混濁などの症状が出ますが、最初の時点で既に体内からの駆逐は不可能となる事をくれぐれもお忘れなきよう。
症状が見られた時点で、対象者には安楽死法が適用されます。
その後二十四時間以内に被感染者は脳死。そして、その十数分後には晴れて"Z"媒介個体――通称ゾンビの仲間入りを果たします。
たまに≪スクリーマー≫や≪ベヒモス≫といった【変異個体】に転じますが、これらは見た目で判別できないので説明は別項にて詳しく行いますね。
画像を見て分かる通り、"Z"は完全に大脳に根を張ることでその機能を破壊。残る小脳と脳幹を掌握し、人体を意のままに操り始めます。
そうです。ゾンビは"生物学的には"生きた人間と言うことになるのです。
例え、その体に巣喰う全ての"Z"を駆除できたとしても大脳が破壊されているため"人間"に戻ることは無いのですが。
……脳の掌握後"Z"は人体すべてに根を張り巡らせます。これによって【疑似再生機能】をゾンビに付与することとなります。
これが、対ゾンビマニュアルに『指令中枢を破壊しなければ対象の打破は不可能』という一文を加える事となった最大の原因です。
これは損傷を速やかに閉塞・補填する機能を有した根から分化した腋芽と考えられており、どれだけ首から下に攻撃を加えてもほぼ有効打となり得ないのは、これの機能によるものです。
例え下半身の断裂に成功したとしてもジャパニーズクリーチャーの"テケテケ"の様に上半身だけで行動してきますのでご留意を。
よって、ゾンビを完全に撃退するには頭部の破壊か頸部の断裂。もしくはゾンビの身体八割以上を一撃で破壊する必要があります。
一応、絶え間なく攻撃を加えることで失血死させる事も出来なくはないのですが……たいてい、その前にこちらが負けます。
ロシアに於いて凍結させるという撃破方法の提言がありましたが、休眠状態に移行するのみで解凍後普通に動き始めたと研究結果が出ましたのでくれぐれも液体窒素を持ち込むのはお止めください。凍傷によって手足を失いたくなければ絶対に。
またゾンビは水に濡れる事を異常に嫌いますが、撃破には繋がりません。過去に放水車で戦いを挑んだ事例もありますが、放水が止み次第ゾンビによってその愚者らは壊滅しております。
足止めには有効な手立てですが、それ以上の価値は認められませんのでご注意ください。
雨天や降雪時は屋内戦の一切を停止するのは、濡れる事を嫌ったゾンビらが建造物内にて"スシズメ"状態になる危険性を考慮したものです。
遠足は雨天中止ですので、引率の上官が帰投を宣言した時点でその指示に従ってくださいね?命令違反者には軍事裁判からの召還状が発行されますよ?
それでは次に――おっと。室内のイエローバイタル発症者数が六割を越えたので、今より十五分の小休止を取りましょう。
必要のある方は、講義室の隣の部屋にてドクターが待機していますので、そちらまで足を運んでください。
それでは休憩後またお会いしましょう。
11/5(火)投稿。
拙作をお読みいただきありがとうございます。
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