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ハロウィン閑話

ふと思い付いてフライング投稿。本編は零時に投稿します。

百合が足りなかったからね。しょうがないね。

時間軸的には三章開始前です。突然書きたくなって書いたから何も決めてません。

「お菓子を…ケーキを作らねば」


 体を起こしてつぶやく。

 ちなみに、現在夜中の二時。草木眠りゾンビがはしゃぐ時間帯である。


 こうなった経緯はすごくどうでもいいのだけど、先ほどまで見ていた夢が原因なの。


 いつも通りさっちゃんと一緒にベッドに入って寝てたんだけどね。たぶん、彼女の髪の毛から薫る匂いが甘いものだったからかな。夢を見たの。


 お気に入りの喫茶店に一人で行って、パンプキンパイとシナモンティーを注文してウキウキしながら待ってる夢。


 しかし、そこからが良くない。


 注文してから私に提供されたのが楽しみにしてたパンプキンパイじゃなかった。

 いや、提供すらされなかった。


 なぜか、そっから店員が全員ゾンビに変わって襲いかかってきたの。

 もちろん、全部倒したよ?倒したけどさぁ!?


 パンプキンパイは?

 シナモンティーは?


 ええ、何もなかったよ!!そこで目が覚めたよ!!


「この無念…はらさでおくべきか!」


 はい。というわけで、現在食料庫から必要な素材を持ってきて真っ暗な台所にて一人で調理の最中です。

 端から見たら完全に怪しい薬作成の現場だけどね。気にしない気にしない。


 パンプキンパイ…は、カボチャが無いから断念。今から作るのは簡単なブランデーケーキです。


 え?料理作れるのかって?一通りは作れるしお菓子作りは得意だったよ?これでも一応オンナノコですからね?


 まあ、向こうじゃ材料がなくて全くお菓子作りなんてできなかったけどさー。


 ちょっと久し振りすぎて不安を感じつつも、作成を開始。

 召喚される前なら目分量でも作れたけど、さすがに不安だったから頑張って思い出す。


 あ。ちょっとブランデー多く入れすぎたかも…?ま、まぁ大丈夫大丈夫。失敗したら食べるのは私だけさ!!


 うん。さっちゃんにも食べさせてあげたいから失敗してないことを祈ろう。


「これで、よし」


 余熱したオーブンに型に流し込んだケーキのタネを入れてあとは焼くだけ。

 この間にブラッド用のお菓子を作っておこう。サツマイモを乾燥させて粉にして練っただけのモノだけど、ワンコ用のお菓子はさすがに初作成だからね。


 待っている間、【ストレージ】からギターを取り出して弦を弾く。全部の部屋が防音きっちりしてるから出きることだね。何を弾こうかな?


 適当に弦をつま弾いていると、ごそごそと誰かが起き出す気配。うるさかったかな?と首をかしげたけど、その原因はすぐにわかった。


 何せ、今オーブンからすごく甘い匂いが漂ってきているからだ。


「とおるさん…?」


 部屋のドアを目をくしくしとこすりながらさっちゃんが現れる。うん、可愛い。


「ごめんね~。起こしちゃった?」

「えっと、甘い匂いがしたので…。何の匂いでしょう?」


 私がオーブンに目を向けると、釣られてさっちゃんもそちらを見る。そして、なるほど…。とうなずくと、こちらへ目を向けてなぜだか恥ずかしそうにもじもじとし始めた。


 しばらくさっちゃんはそうしてたのだけど、意を決したようによしっとつぶやいてから、小走りで寝室――ではなくて、なぜかマユの部屋へ。


 なんだろうと思いつつ、ギターをいじりながら待つこと数分。出てきたさっちゃんは、なぜかマユの部屋にあった猫の着ぐるみパジャマに着替えて、顔を真っ赤にしていた。


 ……拝んどこう。


 さっちゃんの奇行?に私がありがたや~と手を合わせると、顔を更に赤くした彼女は、蚊の鳴くような小さな声でぽつりとつぶやく。


「と、とおるさん…。トリック・オア・トリート…」

「うん?」


 首をかしげながら、カレンダーを確認。それで、やっとさっちゃんの行動に合点がいった。


 今日はどうやら、ハロウィンだったらしい。



 ◇◇◇◇



 ケーキが焼き上がってから冷めるまでの間。私はさっちゃんを膝の上に乗っけて文字通りの『猫可愛がり』を堪能してる真っ最中である!

 え?服装?変えてないに決まってるでしょ!


「いやぁ、お菓子をくれなきゃイタズラするぞってさ、イタズラしたい場合はどう返事をするべきなのかな?」

「ぅぅ…」


 尚、膝の上のさっちゃんは顔を真っ赤にして小さく縮こまっている模様。


 前は寝惚けながらとはいえ、膝に乗っけたら押し倒してくれたのにぃ…。


「今日は押し倒してくれないの?」

「忘れてください!あの時のことは、忘れてください!!」


 ちょっとからかうと、抗議するようにポフポフと腕をたたいてくるのも可愛い。

 ついついぎゅっと抱きしめると「ぴゃぁ!」とか細い悲鳴を上げるのも最高である。


 私の、恋人は!世界一可愛い!!異論は認めないっ!!


「あの!そろそろケーキも冷めたと思うのですがっ!」

「えー?ケーキはデザートだよ?」

「ひゃぁ!でででで、では何がメインディッシュだと!?」

「さっちゃん?」

「ふしだらですっ!」


 悲鳴の様な抗議の声を上げながら、さっちゃん(猫)が脱出をはかる。

 うん。そろそろ十分堪能したし放してあげよう。ブラッドから感じる視線の温度がそろそろ氷点下を割りそうなのは関係ないのだ。


「仕方ないにゃあ…」


 そう言って背中をなでなでしてから、さっちゃんの悲鳴を堪能したあとに解放してあげた。

 涙目のさっちゃんからのジト目。ごほうびです。


「じゃあ、夜中のティータイムと洒落こもうか」


 尚、どちらかと言えば早朝の模様。

 ふんふんと鼻唄を歌いながらケーキを型から外す。そのとたんに広がる、甘いブランデーの香りが食欲をそそる。

 心配していた失敗も無かったことに内心胸を撫で下ろしつつ、包丁を入れていく。

 残ったぶんは茜さん達に差し入れとして持っていこう。


 紅茶は残念ながらティーパックだけど、お洒落なカップとお皿があれば気分だけでも喫茶店でのティータイムである。


 れーじくん、意外とお洒落な食器多いのはなんでなのかな?女の子連れ込んでた?


 ちょっと邪推もしながらケーキを盛り付けてからテーブルに並べていく。

 さっちゃんも久しぶりのケーキにとてもワクワクしてらっしゃるのか、自分の格好も忘れて楽しそうにソワソワしていた。


 ブラッドのお皿にもお芋を練ったお団子を盛って準備は完了。


「「いただきます」」


 そうして始まったささやかなティータイム。なかなか上手く出来たじゃないと自画自賛しながらケーキを食べていると。


 ―――突然、異変は起こったのである。


「とおるさ~ん」


 異変の中心は、さっちゃんであった。

 なんだか、目をとろんとさせて、突然立ち上がると、私に抱きついてきたのだ!


「と・お・る・さん」


 なんか、語尾に音符かハートか付いてそうな甘い声を出しながら、スリスリと私の胸に頬をすり付けると、ガバッと抱きついてそのまま顔を胸にうずめ出す。


「さっちゃん…」

「はぁ~い。さちです、にゃん」


 そして放たれた言葉に轟沈しかけた。

 え?さっきまで恥ずかしがってたのにいきなり語尾ににゃん!?なんで!?


 私の混乱をよそに更にさっちゃんの謎の行動は続く。そのままよじよじと上へと動いていくと、そのまま首に鼻を寄せてくんくんと臭い始めた。


「えへへ~とおるさんのにおい~」


 なんか幸せそうだけど、これはヤバイ。明らかに私の理性とか自制心とかがマッハで削れていく!下手したら死ぬぅ!!


 しばらくスリスリと首に顔をうずめていたさっちゃんの目線が上に上がる。そして、私と目を合わせるとにへ~と笑みを浮かべて顔を近づけた。


「ちゅ」


 そして、そのまま唇にやわらかな感触と、わざと立てられたリップ音。瞬間、理性が飛びかけて頭のなかが真っ白になった。

 そんな私の耳元にさっちゃんは顔を寄せると。


「とおるさん。好きですにゃん」


 うん。これは、オッケーって事なのでは!?


「さっちゃん!」


 そう言って抱きしめたのだが、途端に彼女は肩にアゴをのせたままで体からくたりと力が抜ける。

 一瞬、このままベッドインかな!?と考えたのだが、どうも様子がおかしい。

 そっと顔を覗き見ると、安らかな息を立てながら幸せそうに眠っていた。


 なんだかおあずけ食らったみたいにモヤモヤしたモノを抱えつつ、ふとテーブルの上に目を向けると、そこには半分ほど食べられたケーキの姿が。


「ああ…酔っぱらったのか…」


 それを見て、ようやく彼女の奇行に納得がいった。やっぱり、ブランデーの分量をミスってたみたいだね……。


「はぁ…」


 溜め息をつきながら、眠ってしまったさっちゃんを抱えあげて寝室へ。結局、さっちゃんが放れなかったのでそのまま私も眠ることにしたのだった。



 翌朝、いや昼。私の上で目覚めたさっちゃんの悲鳴を聞きながら私はひとつの決意を固めた。


 ―――さっちゃんにお酒は飲ませないようにしよう。って。

10/30(水)投稿。

完全にフライングです。ハッピーハロウィーン!

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