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お久しぶりです。
色々と滞ってる気がしなくもないですが、新作を投稿したいと思います。
それと、今回は書き方を変えてみました。基本的に主人公の視点から物語が進むことになります。
……リメイクもガンバってますよ?ホントダヨ?
数多くの命を育む多元宇宙。その中に『ラフィール』と呼ばれる世界があった。
地球では伝承にのみ生きる様々な【人類種】や生物がその生命を謳歌する、魔法により象られた美しい文明を有する世界。
――しかし、今やそれは見る影もなく荒れ果てていた。
其は、伝説にのみ語られる存在のはずだった。
其は、創世の折りに神々によって滅ぼされたハズのモノであった。
名を棄てた邪神。根源たる魔。
神話の時代に神々に反旗を翻し、ありとあらゆる魔物を産み落としたとされている其は恐怖と絶望を以て次のように言い表された。
――≪魔王≫と。
復活した魔王は、瞬く間に眷族たる魔物達を掌握した後。神々の写し身たる人類種を絶滅させんと動き出し、一年と経たぬうちに幾つもの国を滅ぼしていく。
圧倒的な力の前に人類種は、様々な蟠りやしがらみを捨てて一致団結して立ち向かうも、魔物達に敗戦を重ねるばかりで。いつの間にか打ち捨てられた彼らの屍すらも牙を剥き始める。
そうして、人類種がその生存域の六割を消失した折り。彼らを憐れんだ神の一柱が只人にひとつの秘術を与えた。
――【救世主招来の秘術】。
ラフィールよりも上位階に存在する世界から、世界を救う力を持つ若者を召喚する奇跡。
呼び出されるのは、圧倒的な力を持ちながらも半ば恒久的な『平和』の中に生まれた者で、決して戦士ではないと言うことだが、必ずや世界を救う一助となるという謎かけのような言葉と共に。
神の言葉に、人々は困惑する。
しかし、既に"使わない"という選択肢を採れる余地は残されていなかった。
藁にもすがる思いで実行された秘術は、果たして世界に一人の若者を召喚する事となる。
男性としては矮躯で、まるで少女にも見える美しい顔。
居合わせた姫が溜息を吐く程に美しい肌に彩られた四肢も又、たおやかな淑女を想起させる頼りない。
しかしてこの世界に存在しないひとつぐくりにされた長い黒髪と黒い瞳は、確かに彼が『異世界』より呼び出された者であることを示していた。
初めは突然の召喚に狼狽えている彼を見て、誰もが失望の念を抱いた。
こんな頼りない者が神の云う救世主なのかと。
困惑しながらも悲痛な訴えに是と応じる彼を見て、誰もが人類種の滅亡を。暗い未来を予想して苦々しい思いを抱いた。
――しかして、彼は人々の予想を尽く裏切っていく。
召喚されて間もない頃は騎士団の訓練に付いていけずに嗚咽を漏らしていた彼だったが、半年もせずにどの騎士も勝てぬ程に成長した。
彼の噂は年を跨がぬうちに、只人だけでなく他の人類種にも広がっていき、様々な試練を与えられることとなったが、その全てを彼は乗り越えた。
戦場へと送り込まれた彼は、騎馬よりも疾く駆け抜け、常に誰よりも前を征き、戦場を切り裂いていく。
決して臆せず。決して怯まず。絶望的な戦場ですらも切り拓いて行く彼を、いつしか懐疑的な目で見る者は誰一人として居なくなった。
絶望を照らし一筋の希望となった彼を。常に先陣を切る姿を見て、誰もが口々にこう呼んだ。
人々を勇気付ける者――即ち≪勇者≫と。
そして勇者が召喚されて五年の月日が流れ、とうとう雌雄を決する時が訪れる。
後の世に【エルネ・ケイド大平原の聖戦】と伝わる勇者の率いる人類種連合軍と、魔王の率いる地平を埋め尽くす程の魔物達の戦い。
大平原を屍山血河で覆い尽くし、昼夜無く続いたその戦争は、最終的に三日三晩にも及ぶ勇者と魔王の壮絶な一騎討ちの果て。魔王が勇者の手にした聖剣で討たれた事によって終結することとなった。
誰もが歓喜に咽び泣いた。
かつていがみ合っていた事を忘れて、生きる喜びを分かち合った。
――だが、勝利の貢献者でありこの世界を救ってくれた勇者の姿はもうそこにはなかった。
魔王を討ち取った聖剣だけを残して、忽然と姿を消した。
懸命な捜索を誰もが行ったが、彼の姿はどこにも無い。
誰かが言った。
彼は元居た世界へと還ったのだと。
誰もが願った。
救世主の幸せを。
大平原に、ひとつの荘厳な神殿が。全ての人類種達によって建てられる事となった。
それは、聖戦にて散っていた全ての生命を悼む為の慰霊碑であり。
そして、一人の若者の偉業を讃える為の記念碑であり。
全人類種にとって永遠の平和を誓った聖域であり、後に人類種連合国の礎となる勇者の名を冠した都となった。
吟遊詩人達は今日も歌う。
人々の絶望と、それを切り拓いた希望の光を。
勇者を讃え、その名を忘れぬようにと。
――黒き髪と黒き瞳。美しい童女の様で居て、しかして彼は逞しき戦士。
精霊に託された聖剣を手に、常に誰もの前を行く。
竜の如く尽きぬ魔力で、その力は万の軍も及びつかない。
しかして、驕らず誰もを愛して。そして誰からも愛される。
勇気ある者。勇気を与える者。
彼の名は『トール』。救世の徒。
今日もラフィールのどこかで、勇者トールを讃える歌が響き渡る――――。
◇◇◇◇
突然だけど私の事を語らせてほしい。
私は『大柿 透』。どこにでも居る女子高生――だった。
卒業式を明日に控えて、大学から独り暮らしを始める予定だった私はその日一人で買い物を楽しんでいたわけ。
それで、粗方買い物を終えて帰ろうかな~ってス○バでだらだらしてたらさ。
ピカッと光に包まれて、気が付いたらなーんもない白い部屋。
なんだなんだって混乱してたら、すっごい綺麗な女の人が現れてさ。いきなり私に頭を下げてこう宣ったのよ。
『救世主となって、私の世界を救ってほしい』
ってね。
その瞬間ピンと来たね。あ、これは異世界召喚で目の前におわす美人さんは女神様だって。
フィクションだと思ってた異世界ですよ、異世界。
そりゃあ、最初は断ったよ。次の日卒業式だし、別に今の生活に不満なんてないし。
テンプレ的に言えば、そーいう願望を持った人が呼ばれるもんだと思ってたし。
でもねー、違うんだって。女神様曰く、逆にそういう願望のある人の方が適性低いんだって。
そんでもって、もしも私が断ったらその世界の滅亡までチャンスはもう無くて、次の召喚は間に合わないんだってさ。
勝手言ってるなーって思ったし、女神様だってそれは理解してた。
でもさ、涙ながらに訴える女神様とさ、私が小学校の時に亡くなった母さんがだぶって見えたの。
だからかな。気が付いたら彼女の震える手をとってた。
わかったよ。って溜息混じりにお願いを聞き入れてた。
うん。よく腐れ縁の友達からは怒られる。お人好しも過ぎれば病気だとまで言われて。
それでもお世話になった叔父さん叔母さん夫婦とか、明日卒業式後に遊ぶ予定だった友人たちに二度と会えないのは嫌だったから、必ず世界を救ったら地球に返して貰うことを条件にしたけどね。
綺麗な顔をくっしゃくしゃにして何度も、何度もお礼と謝罪を繰り返してた女神様に加護とか貰って、見送られるままに旅立ったんだけど。
――『男』にされるとは聞いてなかった。
こう、何て言うのかな。召喚の間?それとも神殿?に降り立ったときは、いきなりこれまた美人な(後々お姫様だと教えられた)女の子が息も絶え絶えにしなだれかかってきたことに混乱してて気付かなかったんだけど、私にあてがわれた部屋で侍女さん?メイドさん?にひんむかれて強制的にお着替えさせられたときに気付いたの。
上半身に有るべきモノが無くて、下半身にあるハズの無いモノが付いてることに。
いや、今はさ。仕様変更は正しかったんだろうと思う。基本的に戦士、騎士って男所帯だし、月の物に体調が左右されないし。
……何より、女性の悲惨な姿も沢山見る機会があったからね。
でも、気付いた直後はすっごい混乱してさ。悲鳴を上げるわ、狂ったように泣き叫ぶわで最終的に【鎮静】って魔法(正しくは魔術だけど)をかけられるまで暴れちゃったりした。
確かに女としては長身の部類だし、胸だってBカップあるかないかぐらいだったけど、こりゃないよ。あんまりだって、気を使われて一人になった部屋で涙したさ。
そんなこんなで始まった異世界での生活が順調な滑り出しを見せるはずもなく、次の日からは有無を言わさずに騎士団の訓練に叩き込まれる事になった。
召喚されたからか、体はすごい頑丈になってたけど、武器を持ったこともなければ武術なんて体育で習った程度の一般人の私が何を出来るわけでもない。
叩きのめされて、痛みでボロボロ泣いちゃったとしても仕方ない事だと思うんだ。
そりゃ、世界滅亡の危機だったし皆気が立ってたんだろうけど、そんな私に浴びせられたのは罵倒と暴力だった。
情けない。男の癖に。何が救世主だ、騙したのかって。私刑されて、気絶しても水ぶっかけられて叩き起こされて、また気絶しての繰り返し。
その日の夜は、痛みとか悔しさとかで寝れなかった。
で、そんな扱いされてるの見られたら他の人も同調するのが人間ってもんでさ。
……今となっちゃ言っても仕方ないけど、まぁ地獄の様な日々でしたとだけ。
何度も心が折れかけたし、ホームシックで何度も涙したさ。
でも。その度に女神様の泣き顔が脳裏に浮かんでさ。折れるに、折れることができなかった。
だから、頑張った。誰も褒めてくれなかったけど、負けるもんか!って自分を奮い立たせて、どんなことされても昔読んだ漫画の主人公真似して、演技して。
どんどん無感動になって、悲鳴を上げてる心に蓋をして。誰かと会うときは頼りがいのある"勇者"を演じて。
女神様の加護の後押しもあったんだろうね。半年もしたらどの武器を使っても、使わなくても誰にも負けないぐらい強くなってた。
私が戦争に投入されてから、人間達は負けなくなった。
そしたらどうなったと思う?
今まで私を軽んじてた連中全員が掌返して私を讃え出した。
吐き気がしたし、実際誰も見てないところで吐いた。気持ち悪かった。
しかも、やたらモテたよね。女の子に。気持ち悪かったけど、我慢して彼女らに甘い言葉を囁いた。
何を得たか?……ストレスの発散方法が出来た、とだけ言っておくね。
その頃には人間以外――エルフとか、ドワーフとかね――の世界の住人達とも顔合わせが始まってさ。
誰も彼も、私を見て溜息つきやがるの。さも失望したと言いたげに見下しながら。
腹立つから言われるままに試練とやらを提示させて、それをこなした。
そしたらまた全員が掌返す。英雄だとか、真の救世主だとか言ってね。またひどい吐き気がした。
でも、ドラゴニアって言うめっちゃ高圧的でこっちを見下してる奴らの試練だけは久しぶりに楽しかった。
この世界ってさ、魔法を誰しも使える訳じゃないの。私も勿論使えなかった。
生まれつき【炉心】って特殊な心臓を持つ人だけが自由自在に魔法を使える。
一応、魔方陣とか魔法触媒とかがあれば魔術って魔法によく似たのは使えるけど、コレジャナイ感がすごいの。
やっぱさ、異世界来たら使いたいじゃん魔法。
で、その試練ってドラゴンと一騎討ちする物だった。勝ったらひとつだけドラゴンから加護を刻んでもらえる。
ぶっちゃけると、ドラゴンは魔王より強かった。後々知ったけど、ドラゴンはモンスターじゃなくて神様の使徒で。世界がどうしようもなくなったときにリセットするために用意されたシステムのひとつなんだってさ。そりゃ、強いハズだよね。
一週間ぶっ続けで戦って、なんとか勝って。
それで、私は彼女の加護を。【竜炉心】を貰って魔法使いになった。
初めて魔法を使ったときは、すごく感動したなあ……。
それで、年甲斐もなくはしゃいでた私は彼女と。ドラゴンと仲良くなった。
初めて、この世界でできた裏表もなく私を認めてくれる友達。
すごいね、頑張ったねって言ってくれた。その言葉が温かくて号泣した私に付きっきりで愚痴を聞いてくれた。
人間じゃなくてドラゴンだったけど、もしまた会えるなら会いたい。
この世界に来てそう思えたのは、女神様と彼女だけだ。
この頃から私は勇者って呼ばれ出した。
誰とも歩調を合わせずに、ひっどい顔して戦ってたのを見られたくなくて、半ば投げやりの早く帰りたい一心で敵を蹴散らしてただけなのにね。
いつの間にか、私は御輿にされてた。旗印にされてた。
魔物を沢山殺した。
世情が荒れてるのを良いことに、好き勝手してる賊も、沢山、殺した。
流石に同じ人間を切ったときはクルものがあって一人で泣きながら吐いた。
いっぱい、いっぱい殺した。
剣で切り殺した。槍で突き殺した。鎚で叩き殺した。素手で絞め殺した。
ありとあらゆる方法で殺して。殺して、殺して、殺して殺してコロシテコロシテコロシテコロシテコロシテコロシテ……。
いつしか、慣れてしまった自分に気付いたとき。ひどい自己嫌悪で苦しむこととなった。
でも、立ち止まれなかった。
帰りたい。その一念だけが、私を支えてた。
でも不思議と地球の知り合いと会いたいとは、思わなくなってた。
召喚されて五年経って、やっと魔王と対峙した時。もうね、見た瞬間視界が真っ赤に染まった。憎くて憎くて、止まれなかった。
それで、やっと。やっと。
魔王の首を掻き切った時、確かに、私は、歓喜した。
帰りたい一心で足掻いて、藻掻いて、重ねてきた努力が報われたと思ったから。
魔王の首が飛んで、その体が崩れ落ちた瞬間。私は光に包まれた。
帰り道は誰にも会わずに一瞬だったけど。確かに女神様の『ありがとう』って言葉が聞こえた気がして、ちょっとだけ嬉しかった。
それでね、私は帰ってきた。
……帰ってきた。
なのに……。
「なんで、誰もいないの?」
私の目に飛び込んできたのは、廃墟と化したかつての故郷だった。
10/9(水)初投稿①
15:00にもう一話投稿します。
お気に召しましたら、ブクマ等々お願い致します。




