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別れ、新たな出逢い、それぞれの想い

〝玄武〟のソロ討伐から帰ってきたチアさんの容態は酷いものであった。

両脚を大きく損傷。今後歩くことはできないと医師から告げられ、車椅子での生活になってしまったチアさんに対して、マスターは「再起不能認定」つまりはギルドの強制脱退を言い渡したのであった。


──ギルドマスターの言うことは絶対。


誰もが口を紡ぐだけで、何も言おうとしなかった。それは、サブマスターであるヤーニングさんでさえも。あんなに仲良く狩りに行っていたザインさんでさえも。


私も何も言えなかった。何か言わなきゃと思うほどに、言えなかった。


チアさんがブラック・アカデミーを出ていく日、私に向かってこう言った。


「私みたいにはならないでね」


そう言って悲しい笑顔を見せると、車椅子で雑踏の中に消えてしまった。私は追いかけることもできなかった。

_______________


「ドロシー!後ろ!危ないぞ!」

「すみません!ヤーニングさん!」

チアさんがギルドを強制脱退させられてから、私への指導はより一層厳しくなった。きっと早く次の戦力が欲しいのであろう。ヤーニングさんは、どう考えているんだろうか……。そもそもヤーニングさんは、何を考えてマスターと一緒にいるのだろう?


ヤーニングさんとの修行が一段落すると、私たちギルドメンバーはギルドホームに集められた。


「紹介する。新たなギルドメンバーの、ズイーゲル・シェイムレスちゃんと、クラナガン・ダミアンくんだ」

マスターが言ったそこには、妖艶な雰囲気を纏ったロングスカートの女性と、ドレッドヘアに焼けた肌の男性が立っていた。

「ズイーゲル・シェイムレスです。長く二刀流剣士をしております。皆様のお役に立てますよう、精進して参ります」

「クラナガン・ダミアンっす!盾持ち片手剣士やってます!頑張ります!よろしくお願いします!」

パチパチパチ、と拍手が湧き上がる。

新しいギルドメンバーを、二人も……。チアさんが、あんなことになったばかりなのに……。

「シェイムレスちゃんの部屋は、ドロシーちゃんの隣だ。よろしく頼む」

「え……」

私の隣の部屋って、チアさんの部屋……!!

「何か言いたいことがあるのかい?」

「いえ。何もありません。かしこまりました」

_______________


「ドロシーさんは、機械術士なんですね?」

シェイムレスさんは、話してみるととても穏やかな方で、私の心も幾分落ち着いた。

「お若いのに偉いです!私なんてずっと剣を振ってきましたから……戦闘狂ズイーゲル、なんて二つ名も、あながち間違いではありませんね。ふふっ」

前言撤回。ちょっと怖い人なのかもしれない……。

「このギルドには二刀流剣士さんがお二人いるとお聞きしました。ぜひお手合せを願いたいのですが……」

「ああ、それだったらサブマスターのヤーニングさんと、その弟子のザインさんです。頼んだら断られないと思いますよ」

「本当ですか?! ドロシーさんありがとうございます~」

シェイムレスさんはにこやかに剣の素振りを始める。

こ、怖いからやめて……。

_______________


「では本日の作戦だ」

マスターが大きな紙を広げる。

「ドロシーちゃんは後衛に。そのドロシーちゃんを守るのがザイン。最前線に僕とノイトラール、ダミアンくん。その後ろにヤーニングとランス、シェイムレスちゃんだ。少し大きな戦いとなる。覚悟しておいてくれ」

「かしこまりました!! 」


私は機械術士の性質上一番後衛。そして近接に弱いため護衛も必要となる。

「ザインさん、よろしくお願いします……」

「ああ。ドロシーちゃん。頑張ろうな」

「ザインさん……?」

「俺、この作戦が終わったらギルドを抜けようと思ってる」

「え?! 」

思ってもいなかった発言であった。ザインさんがギルドを抜ける……?! だって、ヤーニングさんの弟子なのに?!

「師匠からは破門だろうな。……彼女がいるんだ。そこのギルドに移籍しようと思ってる」

「ザインさん彼女いたんですか?! 」

「驚くところそこかよ!まあいいけど。んで、薄々マスターも師匠もそれに気づいてる。だからこそ、わざわざ二刀流剣士を新メンバーに迎えて前衛に、そして俺をドロシーちゃんの護衛に回したんだと思う」

「なんだか……私のせいですみません」

「いや、ドロシーちゃんのせいじゃないんだ。俺の問題なんだ。すまなかったな。あと少しの間だけど、よろしく頼むぜ。……よし、攻撃いくぞ!」

_______________


後日、ザインさんは本当にギルドを辞めて、別ギルドへ移籍してしまった。ヤーニングさんは破門を言い渡していたらしい。

「今日からドロシーちゃんとノイトラール、二人でペアを組んで仕事をしてもらう」

「えーっ!! 」

マスター命令に対して、二人とも同じ反応をしてしまった。

「ノイトラールは前衛、ドロシーちゃんは後衛の動き方を練習してもらう。ちょうどいいだろう?」

そ、そうかもしれないけど……。


「ドロシー、お前サブマスターのことが好きなんだろ?悪かったな。狩りの相手が俺で」

ノイくんがぶっきらぼうに言う。

「そんなことないよ。確かに私はヤーニングさんのことが好き。だけど、ノイくんといると安心するの」

「……んだよソレ」

「何か言った?」

「いや、なんでも。……ほら、行くぞ!」

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