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僕(俺)が従魔になるまで  作者: 月猫 美月
18/22

幕間

ローランドの女王目線です

あの人が死んでしまった。

私が子を産んで僅か2ヶ月で

子供を始末させたことで気鬱になったのが原因らしい。

そんなものすぐに治ると思っていた。

たかだか、一人いなくなったぐらいで病になるほど心が壊れるなんて……

そんなことで人が死ぬなんて思わなかったから、1度も見舞いには行かなかった。

行けば良かった。早く元気になってほしいと寄り添えば良かった。


あの人がいなくなって初めて気に病むということを理解した。

私を心から受け入れず、いつも冷やかで素っ気なかったが、それすらも気にならなかった。


思えば一目惚れだったのだろう。


寝ても覚めても浮かぶのは外交で我が国を訪れた折に見せた笑顔。

あの笑顔が私を掴んで離さなかった。


だから私は力を使って彼を王配とした。

ローランドはエルデンよりも規模は小さいが産業も工業も鉱業も農業も漁業も豊かで国力は上だから造作もなかった。


私に笑顔を向けてくれることは無かったけど、時折、庭を散歩している時に花や虫や鳥に笑みを浮かべていると聞いたので庭が見える部屋を執務室に変えた。


彼が笑んでくれるように庭も整備させた。

彼の笑顔を盗み見、心を満たす。


いつだったか、迷い込んだ犬に笑顔を浮かべて撫でて抱きしめていた。


私には1度も向けられたことも無い満面の笑顔。優しく撫でられ抱きしめられている犬が何故か憎らしくなった。引き裂いてしまいたい衝動に駆られた。だから、その日のうちに影に命じて始末させた。


今ならわかる。あれは『嫉妬』だ。


彼の居なくなった部屋に彼の姿絵を置いてもらった。

絵の中の彼は私に向けたことの無い笑みを浮かべている。

心がキリキリと痛む。

こんな私を私は知らない。


死んだ彼にすがりついて泣きたいと思った。

でも、私は女王!

弱い自分を晒す訳にはいかないと必死に堪えた。

涙を流すことも躊躇われた。


会いたい。会いたい。


夜は特にそうだ。


彼の暖かな体温を思い出す。

彼と過ごす夜は他の男と全く違っていた。

私の体と心は悦びに打ち震え満たされた。


子作りを再開できるようになって他の男と後継を産むために励もうと思っていたが、体に触れられた途端に寒気がはしり、身も心も萎えた。


気持ち悪い


それを我慢してキスをされたら、急に吐気を催し、それどころでは無くなった。


この時、私は気が付き始めていたのだろう。

私は彼だけを愛していて彼だけを独占したかった、彼にも私を私だけを愛して独占して欲しかったことに。

でも、まだそれにはっきりと気づけていなかった私は彼が回復してからいつも道理に再開すれば良いと、しばらく1人で夜を過ごした。


そして、彼が死に彼無しに後継を産むことを迫られた。

彼のいない寂しさが心を満たし、何も考えられないのに、新たな王配を迎えろと言われた。

私の隣に立つのは、もうラルセルしか考えられないのに!


お願い。私の所に帰ってきて

心が無くてもいい

以前のように私を………

強く強く願った。


いく日かそうしていると不意に扉が開いた。

私の許しもなく開ける者は、この国には1人しかいない。


私の従兄弟で宰相であるソルティアス!


私はドアの方を睨みつけた。

だが、予想に反してそこにいたのは私が愛してやまない人!

夢にまで見た愛しい人の笑顔があった。


「……ラルセル、ああ、私の愛しい人。帰ってきてくれたのね……」


私は駆け寄り抱きついた。

彼も応えてくれるように私を抱きしめてくれた。


もう、私を離さないで!


彼は貪るように私を口付けてから、そっと耳元で囁いた。


「さあ、私の愛しい子を産んでくれ」


私は歓喜に震え、喜んで彼を受け入れた。

何度も何度も、いく日もいく日も私の体は彼の愛に満たされた。


程なく妊娠して段々お腹が大きくなるとラルセルが私のお腹を愛おしそうに、そっと撫でてくれるのがとても心地よかった。


幸せだわ。


本当は恥ずかしかったけど、出産にも立ち会ってくれて私より先に我が子を抱きしめていた。

光の加減で金色にも見える琥珀色の瞳をことの他気に入ったようだ。


更に待望の女の子。


ラルセルから赤子を受け取り、乳を含ませる。


乳母に任せられるようになったら、また愛し合いながら、ゆっくりと過ごしたいわ。


ウィルテリア


彼が娘にそう名ずけ「ウィル」と甘く囁くように呼ぶ。

私達の愛の結晶を可愛がってくれるのは嬉しいが、何だか我が子に嫉妬を覚える。


私だって愛称で呼ばれた事ないのに!

あれ?そう言えば最近名前を呼ばれたことあったかしら?


何か違和感があったが、優しく微笑む彼を見たら、どうでもいい気がした。


半年があっという間に過ぎ、そろそろ離乳食の時期だ。


私の乳をはみ、満腹になった娘にゲップさせる。

彼が私からそっと娘を抱き寄せ自分の腕の中に移した。

娘は満腹になって眠くなったのか欠伸をして目を閉じた。

ラルセルは眠る我が子の顔を愛おしそうに見つめた。


「もうすぐ、離乳食が始まるから、乳母だけでも良いよね?」


ラルセルの言葉に心が踊った。


乳母を雇って時間に余裕が出来ても、ラルセルは私を求めようとしなかった。


きっと、今夜あたりから


顔と体が熱くなるのを感じた。

きっと、真っ赤になっているに違いない。


顔を上げてラルセルを見れば、冷笑が浮かんでいる。


「おめでたいね、君は」


何が?と問おうとしたけれど声が出なかった。

『うっ』とか『ぐふっ』とかそんな美しくない声だけ。


私は私の手で私の首を締めていて、それしか声が出なかったから


……苦しい。苦しい苦しい……。


私は彼の愛に満たされて、愛しい娘もいて、とても幸せなのに、何故こんな事をしているのだろう?


苦しくて苦しくて手を離したいのに、ますます力が入っていく。


まるで、誰かに操られているかのように……。


「もう、十分に幸せを味わっただろう?」

彼が私に口付けて囁いた。


「……!」


そこにいるのは私の愛しい人ではなく


ソルティアス!


宰相であり従兄弟でもあるソルティアス


死を間際にしてようやく思い出した。

彼が死んだことを棺に入れられ埋葬されたことを。

普通、死んだ者が生き返ることなど有り得ないのだから。

私は偽りの愛に溺れ、目の前の男の子を生んだのだ。

それに、幻想の彼は私に偽りの愛さえ囁かなかった。


『私の愛しい子を産んでくれ』


彼はそれだけを繰り返した。

私達の……とは1度も言わなかった。

そして、今思えば私に向けられていたと思っていた笑顔は私のお腹に向けられ、娘を産んだ後は娘にだけ向けられていたような気がする。


ショックであったが、私は別のことが気になった。


ああ、死んだらあの人に逢えるかしら?あの世で愛し合えるかしら?


最後に浮かんだのは恐怖だったのか喜びだったのか


遠くで扉が閉まった音を聞いたあと、目の前が真っ暗になり、もう、何も分からなくなった。


女王の名前決めてないけどあった方がいいのかな?

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