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僕(俺)が従魔になるまで  作者: 月猫 美月
17/22

船旅

ラルセル視点です

俺の葬儀から3日してからローランドを離れた。

ウィルはいつも転移魔法で移動しているそうだが船旅をしてみたいという理由でラスティをローランド国に来るよう仕向けたようだ。

まあ、俺の具合も考慮に入れてのようだが……。


でウィルの転移魔法で移動しても良いが、折角だからと船旅を楽しんでいる。

目的地はアルステラ国。

エルデン国とは違ってギルドが色々仕切っている。

弟のディレイトが目指した冒険者という職業も一般的で、そのうち弟に会うかもしれない。

俺はそっち方面は無理なので商人ギルドに所属しようと思う。


ラスティは本来ならば直帰でエルデン国に戻るべきであるが、表向きは俺の見舞いだったのと、ついでに外交官をアルステラ国に送る予定を隠れ蓑に俺を送ることにしていたので問題無かった。

ただ、表向き俺は死亡しているし、他の者は俺が死亡していると思っているので船内で明るい雰囲気をだすわけにはいかない。


なら俺はこの船の中でどういう位置かと言うと俺の古くからの友人ということになっている。

俺の葬儀に集まっていた民衆の中に偶々いてラスティが声をかけ、その流れで娘と一緒にアルステラに行こうとしていたのをついでに送るという設定になっている。

名前も同じで顔が少し似ているという設定もあり、ウィルの魔術で別人と認識されている。

一番戸惑うのはラスティで、他の者の前で兄上と言いそうになる。

それもあって、俺はなるべく船室に篭っていた。


「はい、あーん」


ラスティは相好を崩してウィルの口元にクッキーを持って行く。

ウィルは小さな口を開けてそれを食べる。

ただ、「何が楽しいの?」と言いたげに僅かに首を傾げている。


船室を出て自由に動き回っていると船員達がニコニコして抱き上げたり頭を撫でられている時も不思議そうな顔をしている。

皆はそれを人見知りと認識しているようだ。


「もう、いらない」


ウィルは更に口元に差し出され、首を振る。


「ウィルは少食だなぁー」


ラスティはガッカリと肩を落とした。


ウィルの食べる量は平均の半分ぐらい。

以前、ほとんど食べなかったのを思えば多いが、「あーん」にハマっているラスティには物足りないようだ。

帰ったら好きなだけ息子にやってくれ!


「パパ、お散歩」


親子設定ということもあり、ウィルは俺の事をパパと呼ぶようになった。

何だか擽ったくて嬉しい気持ちになる。

ラスティはそれを羨ましそうにしている。

息子には「ちーうえ」とか「とーたま」とか呼ばれているらしいが、それはそれで可愛くて良いと思うが……。


いつも魔術で移動するウィルは船旅が新鮮らしく、よく甲板に出て海を眺める。

1人で行くと誰彼と声をかけられることに戸惑いを感じているようで弾除けに俺と行くようにしているようだ。


「髪を結ったらな」


女の子らしく見えるように髪を少し長くしているのでサイドを編み込んでみたりしてる。

この辺は時々妹がやってもらっているのを観察してたので何となくできる。

自分で言うのはなんだけど手先は器用な方だ。


「うんとこれ着けて」


ウィルは青い髪ひもを出してきた。


俺はそれを受けとって編み込んでいく。


ラスティは不器用でできないので余計に羨ましいようだ。


「さ、できた」


俺はウィルを抱き上げ、外に出る。

後ろをラスティがついてくる。

一応、友人を亡くしたばかりの設定だから笑顔にならないように気をつける。


「今日も良い天気だな」


船旅は快適に進んでいる。

この船も魔道具で動いていて、昔のように大勢の人間が漕いで進んだり、風任せに進むというものではない。

スピードも何段階かに調整出来ることもあり世界で一番早い船だ。

明日の朝にはアルステルラに到着だ。


ラスティは俺達と外交官を降りしたらすぐにでもエルデン国に戻る。

既に魔術による手紙は出してあるので、戻ったらすぐに俺の葬儀が執り行われるだろう。


俺が生きていることは王と王太子殿下と父上は知っている。

場合によってはディレイトとアリシアには話す可能性があるが、それは王の判断にまかせる。

ただ、母上には知らされない可能性が高いので申し訳無い気持ちになる。

時期を見て母上には話してもらおうか……。

その選択は父上に任せるしか無いが……。


「アルステルラに着いたら、まずは宿と買い物だな」


「僕、宿屋に泊まるの久しぶりだ」


「今まではどうしていたんだ?」


「野宿とか空き家をこっそり借りたり? 自分で簡易の家を造ったり……かな?」


「俺も宿屋はほぼ初めてかな?」


外交で行く時は外交官専用の屋敷がある場合が多いし、宿を取るにしても安宿ではない、設備の良い高目のところだったし。

庶民の生活水準てどんな感じだ?


「僕がだいたい把握しているから、そんなに考え込まなくても……」


顔に出ていたのだろう。

俺の顔をしばらく見つめてからウィルはそう言った。


「……ねえ、パパ」


「ん?」


「僕と旅するの嫌じゃない?」


ウィルは珍しく心配そうな顔をしている。

こんな顔は初めて見るかもしれない。


そして、女の子になっても僕なんだな。


「嫌じゃない」


「そう」


ウィルは少し微笑んで安心したように俺に擦り寄ってきた。

こんな姿を見ていると本当に子供のようだ。

少し長くしたウィルの黒髪が腕にあたって擽ったい。


「アルステルラには外交で何度か行ったけど、城下町以外はあまり行ったことがないんだよな。まずは何をしよう」


「何でもいいんじゃない?」


ウィルはそう言ったあと、注意してないと聞こえないほど小さな声でこう小さく呟いた。


「人の生なんてほんの一瞬なんだし」


表情も声も変わらないのに、どこか寂しそうに見えた気がする。


どれだけ生きているかは分からないけど数千年単位で間違いなく生きているだろうウィルから見れば人間の一生など一瞬だろう。


「はぁー。僕もウィルと旅がしたいな」


「国内なら何とかなるだろうけど、俺がいるから……」


俺の存在が魔道具で誤魔化せても、中には誤魔化せない人間も稀にいるらしいのでエルデン国には入らない方が無難だし、ラスティと一緒にいる所も極力見られない方が良いだろう。


「ウィルは何かやりたいことあるのか?」


「んー、別に無いよ。強いていえば歩いて見る?」


「「?」」


「大体の場所は転移で一瞬だし、買い物するわけじゃないから町を歩くこともほとんど無いし。知識としては知っているけど実際には見たことないもの多いから」


「まあ、ゆっくり考えるか」


「そうだね」


ウィルは小さく欠伸した。


以前より眠くなる体質になったらしく、日に何度も寝落ちしている。

本当に小さな子供のようだ。

いずれは治るのか、このままなのかは分からないけど、ウィルの気が済むまで一緒にいたいと思う。


「おやすみ」


2人の旅の話もいつか書きたいな。

この後はさらっとエピローグに向かいます。

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