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僕(俺)が従魔になるまで  作者: 月猫 美月
16/22

幕間

ローランド国の宰相の目線です

リズベット・ローランド


それが私のかつての名前だ。


もう何年前になるのだろうか?

私を含めた8人が世界を統一し、7人で分けるという計画を実行したのは……。


その頃のこの世界は無秩序

もちろん、自分のテリトリーを作り、統治するということは行われていたが正式に誰かが管理してる訳では無い。

国とも呼べない小規模な縄張りが無数に存在していた。

小競り合い、殺人、そんなのは日常茶飯事だ。


あちこちから流れ着いた7人はそんな世の中を憂い、意気投合し、理想の国を話し合った。

もっとも、そのころに国という言葉は無かったが、最後に加わった仲間が国と名づけた。


私達は7人で人助けをしながら旅をしていた。

行った先の土地の所有権を主張する奴らに統治について話す事もあった。

まあ、だいたいが胡散臭そうにして話も聞かない者がほとんどであったが……。


彼と出会ったのは宿屋の食堂でいつものように話している時だった。


黒髪に金の瞳

神秘的な男性だった。

一目見た瞬間に恋に落ちた。

それは仲間にいた、あと二人の女も同様らしく、頬を赤く染めて惚けたように彼を見つめていた。


「あの、お名前は?」


そう尋ねると「ウィル」と名乗った。


「そんなに世の中を憂えているなら、君達が統治してみたら?」


事も無げに言うその言葉に私達は身震いした。

興奮だったのか恐れだったのか。

少なくとも私は興奮だった。

そんなことは考えたことも無かった。

確かに自分達で統治してしまえば旅をしながら布教活動のように話をして歩かなくてもいい。

だが、力が無ければ誰もついてこない、誰も黙らせることも出来ない。


「そんなの無理だ」


エルナンドが難しい顔で唸る。


「何かを成すにはそれに見合った力が必要だ」


ダリウスが困惑した顔でウィルを見つめた。


「力を得られるならやる?」


全員が息を呑む。


そんなことが可能なのか?

意志を確認し合うように、それぞれの顔を見つめた。

普通なら不可能だと思ったが何故だかウィルの言葉が本当だと根拠の無い確信を全員が抱いていたと思う。


「誰がどこの土地を治めるかで必要な力も変わってくるから、まずはどう分割するか決めようよ」

その無邪気な笑顔に私の胸はドキドキと高鳴った。

私達は頷き合い、エルナンドとダリウスの部屋で話し合うことにした。


きっちり7分割するという簡単な物ではないので色々話し合い、境界を決める。

そして、それぞれの得意な魔法や性格などを考慮して話し合った。

なかなか結論が出なかったが、話し合っていくうちに自分が神様にでもなった気分になっていく。


結論から言えば、私は資源が豊かで比較的温和な性格の人間が多い南の土地になった。

他の6人に比べると社交性にかき、気が短い性格だったから、その方が統治しやすいだろうというのが理由だ。


私達はウィルに力を授けてもらった。

その力を使って時には話合い、時には有無を言わせず捩じ伏せた。

魔法で、開墾して農地を増やし、水路を一夜にして作り上げた。

産業にも力を入れた。

7人で話合い、それぞれの国の特産物を交易することで国の収入を増やして行った。


そして、力を示したことで皆が納得し、私がローランド王国の初代女王となることに異を唱える者はいなかった。


いや、いたのかもしれない。

その辺のことは昔過ぎて、もう思い出せない。

まあ、いたとしても力で捩じ伏せたはずだ。


ウィルの授けてくれた力は一代限り。

国の行く末を見守る為に死を目前とした私は最後の力を振り絞り、自分の血の中に生まれ変われるようにした。

この国の存在が私とウィルを繋ぐ、唯一の絆だから……


ただ、女で無く男として生まれるようにした。


私はウィルの伴侶となりたかった。

でも、それは適わず、友にもなれなかった。

それが死ぬまで悔しくて悔しくて。

国の存続の為に好きでも無い男の子を産み育てた日々の屈辱。

力を持ってしても得られないものがあることへの虚無感と絶望。

それでもウィルとの接点が欲しかった。

好きでもない者の子供など二度と産みたくない。そんな思いが強くて男に生まれることに固執した結果だ。

でも、もしかしたらいつかは受け入れてもらえるかもという思いもあった。

男同士でも愛し合うことは可能だし、友になることも可能だ。

どんな形でもいつか受け入れてほしい。


傍から見ればそんなことが無いのは容易に想像できるが私はそんなことに思い至る余裕さえないくらいウィルという存在に執着していた。


「生まれ変わってまで国を守るって以外だったなー」


今の私の部屋に懐かしい声が聞こえた。


今の私は先王の兄の長男として生まれ、宰相をやっている。


ソルティアス


それが今の私の名だ。


女王とは従兄弟にあたる。

そして、影達を教育し、使役している。


「……ウィル」


私はこれでもかと目を見開いた。

そこに立っていたのは10歳くらいのウィルにそっくりな男の子。

声は記憶にある、少し低めの声で、かなり違和感がある。


「エルデン国には今後関わるな」


不快そうに眉を顰めた。


エルデン国はウィルが一番仲良くしていたアズベルトが治めた東の国だ。

彼は飴と鞭の使い方が上手く、一番平和的に国を治めた。

一番気が合ったのか、統治後も国を訪問していたらしい。


私が、どんな形でも得られなかったウィルの心をアズベルトは親友という形で得ていた。


どれだけ悔しかったか!


「アズベルトの国だからか?」


当時の悔しい思いが蘇る。


「それもあるけど、僕の生まれ変わりに必要な血筋だから」


生まれ変わり?

アズベルトの血の中に生まれる?

ウィルは不老不死だったはず。

なんでなの?

なんでアズベルトの血の中に生まれ変わる必要があるの?


今はもういないアズベルトに憎悪が溢れ出す。


「今回はタイミングが悪くて君の血の中に生まれることになっちゃったけど」

不服そうに顔を歪めた。


言外に私が大嫌いだと含まれている気がして、気が落ち込んだ。

でも、私の血の中に生まれたとはどう言う意味なのか?


私は答えを求めてウィルを見た。


「この間生まれた子供はこの僕だよ。お前の血とアズベルトの血が流ているわけだ」


生まれてすぐ埋葬されたはずの子供

あれから2ヶ月だが、ウィルなら急激な成長も可能なのだろう。

そして、地中深く埋められた棺から出ることも。

たぶん、あの男も本当は死んでいないのだろう。

別にどうする気持ちも無いが。


「黒髪が禁忌だったおかげで上手くいったよ」


黒髪が禁忌

私がなるべくウィルのことを思い出さずにすむように、国にいた黒髪の人間を一人残らず、あらゆる方法で抹消したことからの言い伝え。

ついでに言えば金の瞳も禁忌だ。

理由は同じ。

黒髪や金の瞳であっても、それはウィルではない。

ウィルでなければ私にとっては意味の無い腹立たしいだけの忌むべき存在なのだ。


「何を感じて思うのもやるのも構わないさ。ただ、僕の邪魔は許さないよ」


冷たい刃のような声音


この声を聞くのは2度目……


1度目は私がリズベットだった時

あの時も酷く怒らせた。

それが何だったのかは、もう思い出せない。


「話はそれだけ」


不意にウィルの姿が消えた。

愛しいあの人はもう永遠に私の前に現れることはない気がした。


それにしても


私はフツフツとした怒りが湧いてきた。


あの女がアズベルトの子孫に入れ込んだせいで 、とんだとばっちりだ!

だが、そのおかげでウィルと再会できたというのも何だか腹立たしい。


それよりも許せないのは!


私の愛しいウィルを10ヶ月もその身に宿らせて独り占めしていたなんて!

そのうえ、ウィルを見て恐れ始末させようとするなんて!


女王への殺意が湧くが後継を産んでもらう迄は死なせる訳にはいかない。


そうだ、私の子供を産ませればいい

ウィルのいた同じ場所から生まれた子供ならば、今度はきっと愛せる。


ラルセルが病気になってから子作りを拒否るようになり、死んでからは魂が抜けたようになっていると聞いたが影に操らせるか、私がアイツだと思い込ませれば上手くいくだろう。


あの女は私と違って、ちょっとでも気に入った男がいれば直ぐに床を共にした。

ラルセルが死んでから何が大事だったのか気がついたようだが後の祭りだ。


あの女は偽りの真実の愛に溺れるだろう。


生まれるまで何度でも可愛がってやるよ。

私が愛せるかもしれない子供のために!

できれば女がいいな。


何だか楽しくなって女王の部屋に向かった。


さあ、私の愛しい子を産んでくれ

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