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僕(俺)が従魔になるまで  作者: 月猫 美月
13/22

ラルセルの憂鬱と再会

ラルセル視点です。

俺は今、ローランド国にいる。

外交でも旅行でもない。

2年前に結婚したのだ。

そう、この国の女王と…


この国は代々女王が国を治めている。

この国に外交で来た時に見初められてしまったらしい。

最悪だ。


我が国より力のある国で断るのは幅かれると王である伯父上に相談された時、苦笑しか浮かばなかった。


後継問題があるわけでも無いし仕事も楽しかったから26になっても気楽に独身のままだったのもいけなかった。


政略結婚で他国に嫁ぐ王女や令嬢の気持ちってこうなんだろうか?と思わず考えてしまう。

女性の方が男より腹を括ったり諦めたり妥協したりするのが早いのだろうか?


当時、彼女は16歳だったので2年程は何とかかわしていたが結局断りきれずラスティの結婚を見届けてから結婚した。

俺は側室ではなく王配。

王族の教育は受けているし、外交もしていたし、色々勉強は必要だろうけど、何とかなると思っていたし、実際、何とかなってる。

正直、女王も王配もお飾りで実権を握っているのは宰相閣下だ。

まあ、そんな国はここだけではないし国民が理不尽な目にあっていなければ別に良い。

王配である俺はどちらにしても政治介入できないし。

ただ、俺が一番理解出来ないのが夜の閨のことだ。

女王と閨を共にするのは交代制であること。

彼女にはたくさんの側室がいてその中から7人選ばれる。

その中に俺も入っている。

つまり各自週一回閨を共にするわけだ。

俺以外の6人は時々変わるが、できれば俺を外して欲しい。

俺の国でも側室を持つこともあるが、大体は1人に集中するものだ。

王が男なら不義をしていない限り誰の子供か分かるが逆だと女王に似ると生まれても父親が誰か分からない。

まあ、魔道具を使えば簡単に分かるけど、基本的にははっきりさせないのだとか。

敢えて誰の子か分からなくして父親が権力を持たないようにする風習らしい。

父親役は王配がすればいいことだと。

自分の子供である確率を含ませることで拒否しきれない気持ちを持たせる思惑もあって、ローテーションに王配が必ず入るらしい。

どんな容姿でも隔世遺伝と言い張ればいいだけだ。

たとえ、大きくなって誰かに酷似した容姿になったとしても……

とんだ貧乏くじな気がする。

女王は基本的に授乳以外の子育てを一切しないし、女王によっては、それすらも乳母に任せてしないこともあるらしい。


俺の国の現王も王弟である俺の父親も王太子も弟も正妻だけで、子供も乳母に任せ切りにしないで出来る範囲で夫婦で子育てしている。

だから、余計にこの風習は受け入れ難い。

他の国でも女王の国はあるが、こんな馬鹿げた風習は無い。

それも女王本人が嫌がることなく当たり前に受け入れている。


彼女が即位したのは15歳。

初体験も即位した夜に側室と済ませていると聞いた。

王配を迎えるまでは避妊をするらしく、後継を早くに作りたいローランド国は俺を早く寄越せと何かとせっついていたようだ。

2年の間に女王が心変わりしてくれないかとなるべくローランドには行かなかったんだが俺の何がお気に召したのか……。


結婚した夜から俺の義務が始まった。


女王が懐妊したと聞いた時、敢えず夜の方は収まってくれないかと、真っ先に思ったものだ。

実際、大事をとってお呼びは無かった。


安定期に入ってまた呼ばれるようになったが、子種は必要無いはずだと断った。


女が生まれたら、そのまま断り続けることができないだろうか……。


そして、今日の明け方近くに産まれたのは黒髪の赤子。


女王の相手には誰一人として黒髪はいない。

そもそも、この国では黒髪は異端で不吉な存在とされているからだから。


誰も近づこうとせず、取り上げた女医でさえも気味悪がりベットに慌てて置いた。


赤子はまだ産声をあげていない。

何の処置もしなければ、このまま死ぬのだろうと思うと複雑な気持ちになる。


だが、ここで生き残っても幸せな人生は無いということも容易に想像できる。


「そんな薄気味悪いものどこかへやってちょうだい」


女王は半狂乱で叫んだ。

だが、誰も動かない。

この部屋にいるのは6人の側室、女医と侍女。

どうしたものかと顔を見合わせるばかりだ。


黒髪と言うだけで何故そこまで畏怖しなければならばいのかが分からない。


しばらくそんなやりとりが続いて気がつけば全員の視線が俺に向いていた。


汚れ役も王配の仕事なのかよ!


ため息をつき赤子にそっと近づいた。

その容姿は女王を始め、誰にも似ていないが見覚えがある。


ウィル?


お包みごと抱き上げ、見えないように背を向けてからしばらく見つめていると目が静かに開いて俺を見つめた。


その色は金色だ!


そういや俺もエルデン国の王族だったことを思い出した。


俺の子供として生まれるなんて考えもしなかった。


思いがけない再会に頬が緩みそうになるのを何とか抑えて無言で部屋を出た。

すぐに王家の暗部を担う影が2人がついてくる。

影に属している者は闇の魔術を得意としてる者が多い。

彼らは影に潜んで移動する。

建物や物や人の影

光がある所には影ができ、無ければ暗闇という影がある。

兎に角、影さえあればいい

人の影に潜めばそれを使って操ることもできるかもしれない。

それを裏づけそうなできごとがあった。

結婚式の夜だった。

式のあとの初夜に渋々応じて待ている時に鈍い音と地を這うような叫び声がした。

多分、俺に施されていた光の魔術の加護に弾かれたのだろう。

もしかしたら必要になるかもと王を含めた数人に数年前ウィルが施した。

俺の父親も弟も含まれていた。

まさに備えあれば憂いなしだなと苦笑したもんだ。


着替えている今も視線を感じる。

覗き見なんて趣味が悪いよな。


目立たない服装にフードを目深に被り金を持つと俺は密かに城を出た。

影がついてくるから厳密には密かじゃないけどさ。

とりあえず、ウィルを死んだと思わせることが必要だ。

まあ、産声をあげていないし、生きているとは思っていないかもしれないが……。


街に出ると葬儀屋が開くのを待った。


「赤子用の棺が欲しいんだが」


主人の姿を確認するなり、そう切り出した。

俺の言葉に俺の抱いてるものに視線を移した。

見えないようにお包みで頭まで隠しているので何も見えないはずだ。

ウィルもピクリとも動かない。


「まさか、その子の棺かね?」


固太りの禿げた親父が悲しそうに顔を歪めた。


「そうだ!死産だったんだ。妻が余りにも悲しんで眠ることなく7日間離そうとしないから漸く寝た隙をついて、そっと連れ出したんだ」


悲しげに聞こえるように態と声を震わせた。


「目が覚めて気がつく前に弔ってやろうと思って急いで出てきた。朝早くからすまないな」


親父は納得したように頷いて、すぐに用意してくれ何も言わない内に教会まで運んでくれた。

俺は感謝するような声音で礼を言い、代金とはべつに金貨を数枚渡した。

実際、棺を運ばないといけないことを失念していた。


教会の神父にも同じような説明をし、死後数日たって酷い姿になっているので見ないで欲しいと懇願すれば、神父も埋葬の為に待っている男2人も壁の方を向いてくれた。

俺は最後の別れを惜しむように態と頭を露出させ、その頬にキスをした。

影の奴らには十分アピールになっただろう。

再びお包みで頭を隠してから棺に入れ、蓋に釘を打ち込んで外れないよう固定する。


神父が棺に近づき別れの祈りを捧げ、運ばれ埋葬された。

墓標はあるが何も記されてはいない。

妻が見つけて掘り起こすような愚行をさせない為だと説明した。

妻が落ち着いたら改めて刻みにくると約束して金貨を20枚渡した。


そのまま、墓の前で30分から1時間ほど別れを惜しむように1人佇み、城に戻った。


気配が別れた。

後から俺か俺が頼んだ者が墓を掘り返して赤子を助ける可能性を危惧したのかもしれない。

まあ、ウィルなら気が付かれることなく抜け出せるだろう。


城に戻ると直ぐに影の気配が消えた。

俺は溜息をついて部屋に入る。

僅かな違和感

俺のいない間に誰かが入って調べたようだ。


影がずっとついていたから赤子を隠せるはずもないことは分かっているはずなんだが…


念のいったことだ。


ローブを脱ぐとポケットの中から残りの金貨を取り出そうと探ると小瓶と手紙が入っていた。

急いで開けると懐かしいウィルの文字

内容を読んで俺はニヤリと笑む。


面白そう‼


躊躇無く小瓶の蓋を開け中身を飲み干すと風呂に入って着替えをすませた。

そして、そのままベットに潜り込んだ。

昨日から殆ど寝てない。

思い切り欠伸をして目を閉じた。


しばらくはゆっくり眠れそうだ。



ラスティは幸せな結婚、ラルセルは望まぬ結婚

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