星の下の私と彼
零れ落ちそうな星空の下。
星とともに現れた美青年。
風にはためく私の願い事。
「友達がほしい」って子供みたいだね。
時は、すこし前にさかのぼります。
私の名前は光。趣味は星を見ること。
天体観測なんて、立派なものじゃないよ。ただ、ぼーっと星を眺めるだけ。
何のためにって、聞かれると困るな。
今日は七夕。今にも零れ落ちそうな天の川。
もう少ししたら、流れ星が降るんだって。
七夕の日、晴れた空、長い長い天の川、そして、流星群。なんで素敵なんだろう。
私は、道路を走る車の音も、まるで聞こえないぐらい一面に広がる星空に見入った。
クラスでうまくいかないとか、
友達ができないとか、
いじめを受けてるとか、
星を見てる間は、忘れられる。
まあ、逃れられないけど
あ、
私は青く光るひとつの星を見つけた。
周りにもたくさん星はあるし、
それだけが、つよく光っている訳では無い。
でも、その星から目が離せないんだよ。
目元にいっぱい溜めた涙のような、キラキラと光って、儚い。
本当に零れ落ちそうで、崩れ落ちそうで
...て、まって。
本当に零れてるような...
流星群だ。
あっちも、
あっちも、
わ、
わっ
わっ
すごいよ。
私、初めて見た。
ってあれ、
さっきの星、大きくなってるかも
あれ?勘違いだよね…
ありえないし
いや、でも絶対大きくなって…
て、え、
え、
え、
え、
まって、まって、
まって、まって、まって
きゅっと閉じた目を開けると、そこにさっきまでの星は無く、かわりに見たことも無い、青い目をした男の子がいた。
「今晩は。」
「誰に話しかけてるの?」
率直な感想だった。だからといって声に出す必要はないんだけど…
「君だよ。ヒカリ。」
わた、し?
泣きそうだった。
ずっと、誰かと話したかった。
両親が死んで、
学校で孤立して、
拾ってくれた叔母さんに迷惑かけたくなくて、
あんまり、悩みとかもいえなくて
毎日、言葉の暴力を受けて、
叔母さんに大丈夫?ってきかれても、
「大丈夫だよ。」って笑って
「学校楽しい。」って思ってもいない事いって。
できる限り話かけないようにしてた。
小学校の時に比べて、口数はかなり減った。
「喋れよ」って、言われても聞こえなかったみたいにスルーした。
もともと、明るい性格じゃない。
それでも、上手くやってきたつもりだったんだ。
「ヒカリ?」彼は、不思議そうに声をかけた。
その、何とも空気の読めるんだか読めないんだか分からない感じが、すごく心地良くて、過ごしやすかった。
「ごめんなさい。あなたは誰?」
「誰だろうね。フフ」
「私といて、楽しい?」
「楽しいよ。とても。」
彼との会話は、とても楽しくて、さっきまで夢中になっていた星のことなんか、頭から抜けていた。
きっと、彼は星の妖精か、彦星さん何だろう。
わたしの願い事を叶えてくれてるんだ。
私だけの流れ星が。