真実
「あら、起こしに行っただけにしては随分と時間がかかったわね。何かあったの?」
あらかじめ俺が作っておいた芋のスープを食べていたソフィーに俺はそう問われる。
「えーと……いや、何もなかったけど」
「そうなの? スズネ」
「そうだね。何もなかったよね? お兄ちゃん」
何故俺に聞くんだ……。
これは脅しか、脅しなのか。
次同じことをしたら全てをバラすという……。
なんと恐ろしい妹なんだろう。
「問題がなかったのならそれで良いわ」
ソフィーはそれから何事もなかったかのように再びスープを食べ始めた。
「さ、さて俺達も朝ごはんを食べるか」
「そうだね。お兄ちゃん」
「和哉、どうしたの? 顔色が悪いけど体調でも崩してるの?」
「別に何ともないから気にしなくていいぞ、あかり。それよりもほらこのスープを受けとれ」
なんで鈴音は俺のことをじっと見るのだろうか……。
いやこれは俺の気のせいだよな……。
うん、そうに違いない。
「う、うんありがとう」
それからは俺以外終始和やかな雰囲気で朝ごはんをとった。
俺は和やかな雰囲気じゃなかったのかだって?
それは無理な話だ。
だって俺はずっと鈴音に見られながら食べていたんだぞ?
監視されている状態で和やかな雰囲気を出せるはずもない。
そんな生きた心地のしない中で無事朝ごはんを食べ終え、今俺達は現在進行形で野営の片付けを行っている。
その最中、俺はソフィーに今日の予定について聞かれた。
「それで今日はどうするの? 昨日みたいにこの辺りの村を見るの? それとも先に進んで大きな町に行く?」
「ああ、その件なんだがちょっと気になることがあってな……」
「気になること?」
「どうも昨日の盗賊とか子ども達に何かある気がするんだよな……だからちょっと調べてみていいか? それにあの子ども達のことも心配だろ?」
「それはそうだけど……いやそうね調べてみましょうか」
どうやらソフィーも子ども達の昨日の様子に何かを思ったようだ。
「なら決まりだな。リーネ、あかりそれと鈴音もそれでいいか?」
「大丈夫……」
「私も心配だからそれでいいよ」
「私はお兄ちゃんについて行くだけ」
「とりあえず最初は昨日の子ども達の村に行くか」
昨日何故俺達を襲おうとしていたのか。
その理由をまだ聞けていない。
あの子ども達の様子を見るにきっとそうせざるを得ない状況だったのだろう。
出来ればあの子ども達の助けになりたいのだが果たして頼ってくれるだろうか……。
何はともあれ行ってみないことには何も始まらない。
ということで俺達は野営の片付けを終えた後に昨日の子ども達の村へと向かうことにした。
◆◆◆◆◆◆
「おい、お前だ。早く来い!」
「そ、それだけは許して……ください。ちゃんと役に立ちますから。お願いします」
「ごちゃごちゃとうるせぇな! お前が一番使い物にならないんだよ。分かったら早く来い!」
俺達が村につくと昨日の村の子ども達が昨日俺達を襲った盗賊に詰め寄られていた。
この状況の中、俺が助ける方は当然……。
「お前ら一体そこで何をやっている?」
「兄貴、何かうるさいのが来ましたぜ」
「あぁあ? そんなやつひねり潰せ……ってお前は昨日の!?」
どうやら俺へと注意を向けることが成功したようだ。
「兄貴? アイツのことを何か知ってるんですか?」
「おい、アイツはやべぇ。とにかく一旦引き上げるぞ! コイツを連れていくのはまた今度だ」
盗賊達はそれから素早い動きで村の周りを囲んでいる塀を次々と飛び越えていく。
どうやら俺が昨日行った盗賊撃退パフォーマンスが効いたらしい。
「おい、怪我とかないか?」
「あ、ありがとうございます」
そう言ってペコリと頭を下げたのはまだ十歳くらいであろう二つのおさげが特徴的な少女だった。
見たところ怪我などは無さそうなので一先ずは安心だ。
「一体どうしてこんな目にあったんだ?」
「それは……」
おさげの少女は途端に黙りこんでしまう。
その様子に昨日俺達が村に泊めてもらえなかったときと同じ空気を感じた。
──また、この空気なのか……。
周りを見るが子ども達は誰一人として俺と顔を合わせようとしない。
盗賊達が何故あのおさげの少女を連れていこうとしたのか……。
考えれば考えるほどに謎は深まるばかりだ。
素直に頼ってくれれば力になれるかもしれないのだが盗賊に口止めでもされているのかまったく話してくれる気配はない。
──参ったな……。
今回も前回俺達を襲った理由を聞いたときのように何も話されないまま終わりだと思ったのだが違った。
「あの、旅の方にお願いがあります」
その少女の突然の言葉に周りの子ども達は驚いた表情をする。
少女はそんな周りの様子など気にせずに言葉の先を続けた。
「わたしたちのお母さん、お父さんを助けてください」
一体どんな願いが飛び出してくるんだと少し身構えていたのだが少女の願いは俺の予想の範疇を越えるものではなかった。
「なるほどやはりそういうことだったのか……」
願いを聞いて子ども達の今おかれている状況を大体理解することが出来た。
要するにこの村の子ども達は自分たちの親を人質に取られていて盗賊の言うことを聞くしかないわけだ。
外部に助けを求めようとしても両親が人質に取られているため下手に行動出来ないのであろう。
そんな中、昨日あったばかりの俺達にお願いしてきたということはそれほど人質が危険な状態なのかもしれない。
「その願いは引き受ける。だが一つ条件がある。当たり前のことなんだが盗賊とどんな関係なのか、何が起こっているのか今の状況を全て教えてもらいたい。」
少女は俺の話を聞いた後、周りにいる自分の仲間達へと視線を向ける。
少女が視線を向けた先を見るとその仲間達は皆一様に首を縦に振っていた。
「分かりました。全部話します」
事情の一部でも知られてしまえばその他が知られていようと知られていまいと関係なく罰せられるということなのだろうか。
子ども達は全て話すことを選んだようだ。
「じゃあまずは……」
それから俺は今までに何があったのか、今置かれている状況を少女から聞いた。
要約すると、ある日この村に盗賊の襲撃があり村の大人達が全員拐われ、子ども達は盗賊から拐われた自分の親の命を保証することを条件に盗賊に従っているということらしい。
先程少女が拐われそうになったのは役に立たないからだそうだが実際に拐おうとした理由については直接盗賊から聞き出す他あるまい。
それと一つ補足なのだが村の大人を拐った後も何日かに一人のペースで盗賊達は近くの村の村人を中心に人を拐っていったそうだ。
俺達が近くにある村の村人に怪しまれたのはどうやらこのへんが関係しているらしい。
とにかく俺達が優先してやるべきことは二つ、拐われた人達の解放と盗賊の壊滅だ。
「拐われた人達が無事ならいいんだが……」
俺はただそれだけが心配だった。




