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野営 Ⅰ


「カズヤ、なんか寒いわね」


「まぁ外だしな」


「ちょ、ちょっと和哉! ここに見たことない大きい虫が!」


「まぁ外だしな」


「お兄ちゃん、鳥の声が煩くて眠れない」


「まぁ外だしな」


 先程から言っている通りここは外。

 今夜の野営会場である。

 野営を開始してから既に数時間経っており、俺達は焚き火を囲んで楽しく?談笑していた。


「今日はどこかの村に泊めてもらえると思ったんだけどなかなか上手くいかないものね」


「よそ者だから仕方ないって面もあるけどな。俺だって急に今日家に泊めてくれって言われても泊めないだろうし」


「でも今日会った人達は皆様子がおかしかったわよ?」


「それは……」


「そう、皆何かに怯えていた……」


 リーネは本当にそうであるかのようにきっぱりと言い放つ。

 リーネの言ったことは確かに言えるかもしれないが断言は出来ない。

 今日会う村人全員が俺達に怪しむような視線を向けてきている。

 俺としてはただ単純によそから来た人を怪しんでいるように見えた。

 俺がそう思う一方、リーネには何かに怯えているように見えたらしい。

 どちらが正解か、そもそも正解があるのかは分からないが一先ず全てに共通することは様子がおかしかったということだろう。


「確かに最後に訪ねた村の人は周りをしきりに確認してたよね、リンちゃん」


「そうだね、村の中で家の外に出ている人は誰もいない感じだったし」


「もしかしたら何かあるのかもな。とりあえずそれは明日に調べるとしてもう遅いし休んでくれ。夜の見張りは俺がやっておくから」


「交代はいつにするの?」


「ああ、それは気にするな。俺は本来寝る必要がないからな。別に寝なくても問題はない」


「そういえばそうだったわね。じゃあ遠慮なく休ませてもらうわ。おやすみなさい」


 ソフィーは馬車へと向かう。

 どうやら馬車の中で寝るみたいだ。

 ソフィーに続いて他の三人も馬車へと向かった。


「おやすみ……」

「おやすみなさい」

「おやすみ……あ、お兄ちゃん。くれぐれも無防備なあかりちゃんに変なことしちゃ駄目だからね」


「するわけないだろ! というか今更なのか」


「念のためだよ、念のため」


 鈴音はピースサインを作った手の指先を一度自分の目元に向け、それから俺へとその指先を向ける。

 その後鈴音は他の三人と同様に馬車へと向かった。

 ちなみに先程のジェスチャーはお前を見ているぞ、変なことするなよという意味のジェスチャーだ。

 元の世界で鈴音がよく使っていたのを覚えている。


「なんでこんなに信用されてないんだ……」


 以前あかりのことがあったからか?

 いやあのことに関して俺は悪くない。

 何故ならあれはあかりの吸血衝動によるものなのだから。

 なら俺が年頃の男だからか?

 それも今までソフィー、リーネ、あかりの三人に手を出したことがないため考えにくい。

 まぁこのまま深く考えていても答えは得られない。

 考えるのは止めにしよう。


 そう思い俺が枯れ枝を焚き火の中に放り込んだその時である。

 俺達が野営している見通しのいい平原二十メートル後方にある森の中から物音が聞こえた。

 どうやら範囲ギリギリで『気配察知』に引っ掛かったようだ。

 『気配察知』に引っ掛かったということは敵意があるということ。

 それならば遠慮する必要はない。


 俺は慌てることなくその場で『探知』を使用する。

 今回は前回みたいに闇雲に探すわけではない。

 なので俺は探知する範囲を森の方向へと限定した。

 こうすることによっていらない情報を切り捨て俺への影響を最小限にするのだ。


 さて、『探知』の調子はどうだろうか。

 『探知』を使用してから次々と地形、動物、植物の情報が頭の中へと流れてくる。

 そろそろ頭痛が来るかと思ったところで比較的大きな生命体の情報が流れてきた。


 これは昼間の盗賊だな。

 数は……四、五、六といったところか。

 こんな夜に一体暗い森の中で何をしているんだ?

 まぁ大体予想はつくんだがな……。


 相手はこちらの様子を窺っている。

 多分俺達を襲うタイミングを狙っているのだろう。

 真っ正面からで敵わないならどんな手口を使ってもということか。

 そういう考えは嫌いじゃないが、俺も黙ってやられるわけにはいかない。

 幸い、ソフィー達が寝ている馬車は森側ではなく見晴らしのいい平原側に止めてあるので被害を出さないで済みそうだ。

 一通り相手の分析が終わったことだしさっさと盗賊達を片付けるとするか。


 俺は馬車で寝ている四人を起こさないように六本のナイフを実体化させ、それぞれ森の中に隠れている盗賊に投げつける。


「……うぐっ!」

「……ぐっ!」

「……ぐはっ!」


 三人はやったようだが残りの三人は外れてしまったようだ。

 残りの三人も出来れば仕留めたいがもう一度『探知』を使うのも時間がかかる。

 それに既に残りの三人は逃げているだろう。

 俺が今からやらなければならないことは一つ。

 倒した三人に俺達を襲おうとしていた理由を聞くこと。


 俺は盗賊三人から理由を聞くため馬車の近くを離れ、暗い森の中へと足を踏み入れる。


「アイツらよくこんな森の中で行動出来るな。もしかして『夜目』を持っているのか?」


 夜の森の中は暗く普通の人の場合、視界は便りにならない。

 夜の森の中で行動するとなると『夜目』は必須なのだ。

 そう考えるとあの盗賊達、盗賊の中でもエリートだったのかもしれない。


 そうこう考えているうちに一人、二人と盗賊を見つけていく。

 そして最後の三人目の盗賊を見つけたところで野営場所へと引き返した。


◆◆◆◆◆◆


「で、なんで俺達を狙っていたんだ?」


「狙ったもなにも俺達はまだ何にもしてねぇだろ!」


「まだ?」


「あ、いやそれは……コノヤロォ! この縄をほどけぇ!」


 否定しようとするあまりボロが出てしまっている。

 エリートでもあまり頭は良くないらしい。


「それで俺達を狙った理由を聞いているんだが答えてくれないのか?出来れば手荒な真似はしたくないんだが」


「おい一体何をするってんだ……」


「理由を話してくれれば何もしないが?」


「本当か? 本当に話せば何もしないんだな?」


「ああ、この目を見ても信じられないか?」


 俺は縄で縛られている三人いる盗賊のうち気絶していない一人の盗賊に顔を近づける。


「信じる信じない以前に顔が怖いんだが……」


「そうか、まぁ話せば本当に何もしないから安心しろ」


「そこまで言うならお前の言うことを信じるぞ。実はな……」


 盗賊は話してくれようとしたのだろうが話す直前で突然盗賊の言葉が止まる。


 ん? どうした? 話さないのか?


「おい、どうかしたのか?」


 そう言って盗賊の肩を揺するが反応がない。

 それどころかさっきまでしっかりと首に支えられていた頭がコクンと力なく前に倒れた。


「これは……」


 俺はこの状況に驚かずにはいられなかった。

 それもそうだろう捕らえた三人の盗賊全員が泡を吹いて死んでいたのだから。


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2018/11/4(新連載)

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