4:地獄と旅立ち
お久しぶりです。
体調不良でちょびちょびと書いてはいましたがようやく書き終わりました。
短いですがお楽しみください。
なにが起こったのか。周囲には人の骸、骸、骸。私とお母さんだけの領域が地獄と化している。
押しつぶされた死体、焼けただれた死体。そういったものが埋め尽くしていた。
うっぷ……。猛烈な死の匂いに私は吐きそうになった。それでも卵だから吐くことなどできないのだけれど。
そして後ろには私のお母さん…だったもの。血まみれになり私を抱いてピクリとも動かない……。
なにがどうしてこうなったのか。私は呆然としながらそのことをうっすらと思い出していく。
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いつものようにころころと巣内を転がる私をお母さんが咥え、私を背にやる。
なんだろう?そう思った瞬間、お母さんの尾が動き迫ってきた何かを叩き落とす。
矢だ。弓矢の矢だ。半ば折れたそれを視認しつつ同時に困惑します。
なんで?どうして?
そんな感情がぐるぐると私に湧き上がります。そして急に聞こえる人の声。
ウォォォォォ!
鎧をまとった人が大勢押し寄せてくるのが見えた。お母さんは飛び立ちそれらに向かって突進していく。
尾を振り、踏みつけ、噛み付き、羽ばたき、それらの行動をするたびに人は蹴散らされていく。
それでも数の暴力でお母さんに切りつけ、矢を穿ち、傷を与えていく。
お母さん!!
そう叫ぶも発声器官がないため声にはならない。そして再び矢が飛んでくる。
えっ……。
どうやら襲撃者たちは卵に気づいて私も潰そうとしているようだ。刺さる!?そう思ったとき羽ばたく音が聞こえた。同時にグジュッ!!っという肉が裂ける音も。お母さんの目に突き刺さる矢。それと同時に人々の歓喜の声が聞こえる。
いいぞォ!! 我らが祖国のため!! 散って逝った仲間のため!! この作戦、諦めるなぁ!!
どうして……?なんで私たちを襲うの?私たちは何もしていない!!ただ平凡と暮らしていただけ!それなのに!!
そんな叫び声もやはり声にならない。兵士が登ってくる。剣を振り下ろす。私は咄嗟にころがり避けるが、追撃をしてくる。そんな兵士をお母さんが蹴散らす。
だが次第に巣の奥へ、奥へと追い詰められていく。単純な戦闘力ではお母さんが無双している。だけど数が違いすぎる。
また時に私を狙う攻撃からお母さんが庇おうとその身に攻撃を受ける。
そしてそれが何度か繰り返された時そのときは来た。目の前に叩きつけられそうな剣の刃。
回避は……無理。そんな絶望的な時、光の奔流に飲まれ私は意識を失った。
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そして目が覚めた時、私を抱くようにして息絶えるお母さんとその周りには無数の人間の死体が転がっていた。
なぜ私たちが襲われなければならなかったのか?
それを考えると涙が出そうな気分になる。どうして助かったのか?最後の光の奔流はなんだったのか?
それは決死の思いで私を守ろうとした、お母さんのブレスだ。
何時間、何十時間、何日その場でぼーっとしていたのか、もしかしたら数十分だったのかもしれない。
お母さんの亡骸に寄り添い私はこれからどうなるのか。どうするのかを考える。お母さんが目を開けてくれることを祈って。傷を癒して私をまた汚れたね?という感じで舐めてくれることを考えて。また人間が来た時に守ってくれると……。
その考えに到達したとき恐怖の感情に染まる。もし再び人間が来たら私はどうにもできない。
此処はもう安全ではない。私の聖域は野蛮な人々に侵され、地獄と化したのだから。
お母さんの亡骸にもう一度寄り添う。そして告げる。喋れないから聞こえないだろうけど。
――さようなら。
これ以降、更に不定期更新になると思います。
出来る限り更新はしたいので頑張ります。