幕間1:神竜国家ナグラーシャ
「それで、失敗したということか?」
薄暗い部屋の中、重低音の声が響く。まるで地下のように暗く松明によってわずかな明かりがあるだけの空間である。その空間には二つの影があった。一つは装飾された椅子――玉座に座り、一つは跪いていた。
「申し訳ありませぬ…此度の失態、責任として我が首を…。」
「よい、そのようなことをして我らが同胞を刈り取るのは我は望まぬ。」
「有り難き幸せ…。」
フードをかぶった男は頭を垂れる。その表情は硬い。
「アレが確認できただけでも行幸よ、次の手の準備は出来ている。」
「次、ですか?」
「そうだ、これが上手くいけばナーグリアは自ら滅びの道を進むであろう。」
「ナーグリア…。たかが人族如きが我らに逆らい、今も生きながらえているのは一重にあの邪龍のせい…!」
フードの男は歯軋りをして拳を握り締める。拳からは血が滲み垂れていく。
「だが、それも終わりだ。アレが人にいいように操られるのもこれで終わらせる。我ら神竜国家ナガラーシャはナーグリア王国を統一する。下等な人族が支配する国など許しておけるものか…。」
玉座に座る老齢の男はそう宣言する。その声には憎しみの声が混じっていた。
「仰せのままに、我が主、メルディウス王よ…。」
では始めようか… 世界を変えるための国崩しを――。
◆神竜国家ナグラーシャ
竜族至上主義の国。世界を竜族の元、統一をすることを是としている。
数百年前までは北のナーグリアス王国と合わせて一つの国だったが、内乱により分裂。
以来、冷戦状態である。