帰る場所は。
「…ないね?」
「…ないですわね。」
今、俺は、ソニアが使ってたという洞穴にいる。
お宝を前にそれなりにワクワクしてたのだが、全ての部屋を見て回っても、何も残っていない。
いや、机とかは残ってるんだけども。
「これは…盗賊の仕業、ですわね。」
盗賊。
この世界にもそういう輩はいるようだ。
繭に篭ってる間にお宝が全部盗まれたと、そういうことかな。
「こういうことも想定してましたのだけど…いざやられてみると、虚しいものですわね…」
「生まれ変わってすぐ死にかけて、助かったと思ったらこれかー。大変そうだな。」
「他人事のようですわね…まぁ、宝がないなら家は諦めるしかないですわね。どうしましょう…」
うーん、今の宿は明日で契約終了、明後日からの寝床に悩んでたけど。
この前、冒険者友達から聞いた話だと、月に10銀貨で借りられる一軒家があるのだが。
今の稼ぎを月あたりで計算すると、銀貨30枚分ぐらいになるし、借りちゃってもいいんだけどな。
でも前金とかいるのかな。とりあえず、商人ギルドで話を聞いてみるかなー。
「あのさ」
「なんですの?」
「家、借りようと思うんだけど、借家でも我慢してくれる?」
なんか話し方が高貴な感じだし、借家なんてとんでもない!とかなったら困るからなぁ。
「人里で暮らせるなら、貧民街でなきゃいいんですのよ!!そこに住まわせてくださいますの!?」
「あ、ああ。ただ、掃除は任せるからね?」
「ええ、ええ。掃除なんていくらでもしますの。是非とも住まわせてくださいまし!」
てなわけで、家を借りて一緒に住むことにした。
町に戻り、馴染みの門番さんに、妹を連れてきたと言い訳して、ソニアの分の入市税を払って町に入る。
冒険者登録はまた後日だ。この国では10歳から冒険者になれるそうだから、実年齢はともかく見た目10歳のソニアでも登録だけなら問題ないだろう。
まずは商人ギルドに向かう。
商人ギルドは、冒険者ギルドと同じ大きさの建物で、中は役所みたいになってる。二階に個別の相談室みたいなのがあるようだ。
受付で要件を話て、少し待つ。担当の人が来て、二階に上がる。
「さて、本日は借家のご相談だそうで。」
「ええ。2人で住むんですよ。広めで、いろいろ融通の利くところがいいんですけど。」
「融通、とは?」
「たとえば、ちょっと増築したり、改造したりができる…って、それだと買わないといけませんかね。」
「うーん、そうですねぇ。借家では少し厳しいですが、とあるプランがございますよ。分割払いで毎月のお支払いは借家と同じ、一定額のお支払いが済めばそれ以上のお支払いは不要のプランです。」
おお、ローンが組めるのか。
じゃあ、それで俺も家持ちかな?
「じゃあ、その線でお願いします。できれば風呂があって、キッチンが広いところがいいですね。」
「ええ、何軒かございますよ。毎月のご予算は如何程で?」
「月に10銀貨ぐらいですかね。」
「それでしたら………」
「ここが、私とユウスケの家ですのね。」
閑静な住宅街の隅のほう、二階建てのそこそこ大きな家。
庭もあり、バーベキューなんかも楽しめそうだ。
風呂も広かった。この世界には魔法もあるし、町には川も近いので、水はそんなに貴重ではない。なので、料理にスープ物が多かったりする。
で、キッチンも勿論広い。部屋数も多い。トイレは水洗(地下にいるスライムが綺麗にしてくれるそうだ)、ベランダは日当たり良好!
「いい買い物したなぁ。」
毎月銀貨10枚、20年払い。
20年も生きれるのかだけど、即死しなきゃなんとかなりそうだし大丈夫だろう。
ともかく、今日からここが我が家だ。
家を持つって、やっぱり良いものだなぁ。