ちょっとズルする
初めの依頼から数日、順調に採取依頼をこなして、所持金に余裕が出てきた。
他のパーティに付き添って森の中にも入った。回復魔法を使える人はあんまりいないらしく、重宝されている。
森の奥の特殊な木の樹液とか、鳥系の魔物の卵とか、果物とか、とにかくいろいろ採取した。
討伐は一度もやってない。回復魔法しか使えないからね。
ともかく、この数日で冒険者の友達もできたし、お金も貯まったし、自分へのご褒美もいろいろ食べた。
やっぱり地球の甘味は最強だわ。
今日の依頼は、森の奥に生えてる香辛料の入手。
森の奥に行く依頼はいろいろ受けてるけど、香辛料なんかあったかな?
図鑑を見せてもらうと、見た目はそのままトウガラシだった。
見本で1本貰えたので齧ってみる。辛いわ!
辛い。これはトウガラシだ。
あればあるだけ買い取ってくれるらしいので、とりあえず受注。ちょっとズルしようかな〜なんて。
町から出て、森の手前。
この森は、俺が最初に見た森とつながっているらしい。広すぎないかね。
町からは1時間ほどで行ける位置だ。
「さて、アマソンでトウガラシはー…」
1キロ2000円ぐらいで売ってるなぁ。サヤのを買ったほうがいいか。
とりあえず1キロ…と、自分用に七味唐辛子も買っちゃおう。
うん、これでよし。あまり早く帰ると怪しいかもしれないし、薬草も集めよう。
昼時、今日の昼飯はウニ丼にする。
最近稼げてるし、たまには贅沢してもいいだろう。
ウニ丼二杯分の生ウニを1400円ぐらいで買って、米は5パック入った300円のを買う。
アマソンで買った1000円ちょいのパーベキューコンロに、2000円で買った木炭をいくつか入れて、火をつける。
2000円で買った鍋を置いて、これまたアマソンで100円で買った天然水を入れて沸かす。そこに米を2パック入れて、14分待つ。スマホに時計があるので、時計を買う予定はない。
温まったら、200円で買ったどんぶりに米を広げて、ウニを乗せる。
醤油と山葵も前に買ってたので、ちょろちょろと回しかけて、添える。
さあ、贅沢ウニ丼、大盛りのできあがりだ。
「よーし、いただきます!」
まずはウニだけを食べる。
うん、美味い!旨味がしっかりしてるね。
米と一緒に食べる。米に接してるウニが温まってて、これはこれで美味しい。
あー、贅沢だぁ。前世でもここまで美味いウニ丼は食ったことないな。やっぱり、外で食うってのが良いのかな。
「…ふう、ごちそうさまでした。」
食後のお茶を飲み、片付けを済ませて、休憩。
そろそろ帰るか…
ガサガサ、ガサガサッ……
「ん?」
森の方になにかいる様だ。兎…にしては音がでかいし、ゴブリンとかイノシシとかかな?
ゴブリンぐらいなら、冒険者友達に貰ったお古のショートソード(ショートだけど80センチぐらいある)でなんとか倒せるし、イノシシでも同じくなんとかなる。でも出てくるならイノシシがいいな。肉の買取額が結構高いんだ。
ガサガサッ………………ガサ……
なかなかでてこない。
もうこっちはショートソードを構えて、準備万端なんだけど。
ちなみに、服装は、初日に五人組に買ってもらった、新米冒険者セットの装備だ。丈夫な皮の鎧とか、臑当とか。
靴だけは、安全靴を履いてる。蹴りも攻撃手段にできるからね。
…まだでてこない。もしかして死に掛けだったのが其処で死んだのかな?
うーん、見に行くか。
そろーりそろーりと、音のなってた茂みに近づく。ショートソードで茂みをどかす。なにもない。
うーん、もっと向こうか?
森に入るのは怖いけど、気になるし。
とりあえず見るだけ見て、ダメそうならダッシュで逃げよう。
そろーりそろーりと、森に入る。って言っても、数メートルだけど。
と、木の裏に何かが居る。息遣いが聞こえる。
これは…ゴブリンか?死にかけのゴブリンか?
死にかけでも好戦的なので、注意しながら木を迂回する。
すると、そこに居たのは、
「……ハァハァ、あ……ニンゲン………助け、て………」
10歳ぐらいの、小さな女の子だった。