大量発生
大寒波の時期も半ば、今日は冒険者ギルドにいる。
なんでも、雪ウサギが大量発生して町に押し寄せるのを待ち受けるそうだ。
雪ウサギは何度か狩ったことがある。サッカーボールサイズの、丸っこくて脂の乗ったウサギだ。
「今日の雪ウサギの買取額は、通常の2割り増しになる。しっかりと全滅させるように。」
先輩冒険者によると、この大量発生ででてくる雪ウサギは凶暴で、脂の乗りが最高で、それが何万匹もでてくるそうだ。
半分ぐらいは消し炭になるそうだけど、それでも1匹平均40銅貨だと思えば、結構な稼ぎになりそうだ。
俺はお金には困ってないので、数匹を自分用に獲るのと、ヴァンの運動のために参加する。
ヴァンには首輪をしているが、もしものためにソニアが搭乗する。ウルフ乗りの少女って異名がついてるし、冒険者に間違えて攻撃されることはないだろう。
ああ、それと、夏美ちゃんとテレシアはここで20匹以上納品したら冒険者階級が8級にあがる。ソニアは既に8級になってるから、今回で揃うかな?
「そんじゃあ、気合い入れて狩ってこい!」
「「「おうっ!!」」」
所長の掛け声に、冒険者達が威勢良く返事をする。
みんなは毎日の生活がかかってるから、今日はボーナスデーみたいなもんで張り切ってる。
「俺らもいこうか。4人とも頑張ってね。」
「ヴァンのことは任されましたわよ!」
「ワンッ!」
「20匹かぁ。遠くからなら簡単だけど、近づかれたらきついなぁ」
「夏美さん、私が前衛しますよぉ?2人で40匹、頑張りましょー!」
気合いは充分だな。
え、俺はなにするのかって?
俺は救護班だよ。
「おー、すげぇなー」
救護テントから、戦況を眺める。
ヴァンは外側を走り回り、すれ違いざまに切り裂いて倒している。爪か、魔法かな?ソニアはヴァンをしっかりと誘導している。羊飼いみたいだな。
夏美ちゃんは、魔法をバンバン撃っている。全弾必中は見てて気持ちいいな。テンプレ通り、異世界人は魔力量がとてつもなく多いそうなので、ガス欠は早々ない。
テレシアは夏美ちゃんの前で戦っている。メイスを振り回し、夏美ちゃんのほうへ抜けそうな獲物を砕いている。
もう40匹は狩っただろうな。
他の冒険者もなかなか見応えがある。
矢を乱射するエルフ、火を噴くドワーフ。巨大な大剣を軽々振り回す鎧、影の鎖で捕縛する魔術師。
あれは鍛冶師さんか。ショートソード二刀流で流れるように切り刻んでいってる。新作のモニターかな?
「暇ですねー。」
「ええ、まぁ、雪ウサギですからねぇ。それより、アメありがとうございますね。」
「いえいえ、多く買ってしまったので。」
救護テントには、数人の冒険者とギルド職員が待機している。
雪ウサギ相手でも、万が一があるかもしれないからね。
今は誰もまったくこないので、アメと紅茶を振舞っている。どっちも自前だけど、商人さんから買ったといえば怪しまれない。いい時代になったな。
それにしても、暇だ。敵がアンデットなら俺もダメージソースになれるんだけどね。
雪ウサギ相手だと、キュアで肉の雑菌を殺すぐらいしかやることない。それも戦闘中は関係ないし。
「お、夏美ちゃんとテレシアは休憩かな?」
何万もの雪ウサギを殲滅するのに、ずっと戦ってても仕方ない。入れ替わりの冒険者はほかの町からも来ているので、各々好きなタイミングで休憩に入れる。うちはほかの冒険者のために、多めに休憩をとろうと打ち合わせていた。
さて、2人のとこにいくかね。
今日は特別に、各パーティに魔法袋が配られている。中には雪ウサギ200匹ほどが入るそうだ。もちろん、返還しないといけないが。2人はどれぐらい狩ったんだろうか。
「あー、すっきりしたー!」
「寒いけどぉ、運動すると気持ちいいですねぇ」
2人はさっぱりした顔で戻ってきた。結構動いてたからな、2人とも。
「おつかれさん。ほれ、汗拭いときな。」
タオルを渡す。これは帰ったら先に風呂入られるなあ。
とりあえず、2人が倒した雪ウサギを俺のスマホに収納する。80匹か、結構獲ったなぁ。
普通は2、3匹で見かけるからな、見渡す限りの雪ウサギとかどこにいたんだって思うわ。
「これは帰ったらシチューだな」
「お、いいねぇユウスケくん!丸焼きも食べたーい!」
「お肉がいっぱぁい…へへぇ」
じゃ、シチューのルーはもう買っとこうかね。丸焼きは外でグリル使わないといけないからパスで。寒いし。
「ヴァンたちもそろそろ一回戻ってくるかね」
「うーん…あ、ヴァンが気づいたみたい。」
昼時だし、軽く飯にしようか。
商人さんのとこのアレン君が開発した、丸型サンドイッチを食べる。うん、ハンバーガーです。新鮮なトマトとレタス、肉、ピリ辛なマスタードテイストのソース。まんまハンバーガーです。ジャンク感は足りないんだけどね。
商人さんは、飲食店を出したいと言っていた。アレン君は2号店の店主になるから、ほかにシェフをゲットできれば計画が進むと言っていた。
商人さんは領主様からの覚えもいいので、店舗の許可証は割と簡単に手に入るそうだ。
「あー、ハンバーガーもつくってみたいな」
「あ、グリルで?なんか本場って感じ。チーズとかすごい盛ったりしてね?」
「いーね夏美ちゃん。チーズはすごい盛ろう。ジャンク感出していこう。」
まあそれは大寒波が終わってからかな。今は俺は厚着してるからまだマシなんだけど、それでも寒いからなぁ。
でも雪ウサギと戦ってる冒険者の中には、上半身になにも身につけてないマッチョもいるからな。恐ろしい。
「うし、食ったら午後もそこそこ頑張ってね。ソニア、晩飯はシチューだから、丸々太ったやつより引き締まったやつを獲ってきてくれ」
「片っ端から仕留めておりますのよ、わざわざ選別できませんわ。」
わかってたことだけど、選ぶのは俺の仕事なんだろうな。俺、紅茶飲んでただけだし。
「ワンッ」
「お、ヴァンは口の周り綺麗にしていけよ。真っ赤だぞ」
数万匹の雪ウサギが殲滅されたのは、夕方の頃。
結局最後まで大きな仕事は無く、擦り傷を範囲魔法で回復させてお開きになった。
買取は明日になる。今回取れた雪ウサギのほとんどは干し肉になって、各地へ保存食として輸出される。この大量発生のためにここに町ができたのだという説があるほど、大きな経済効果を生む。
明日から3日ほどは町でお祭りがある。祭りといっても、屋台がでたり、いくつか催し物があるぐらいだが。
喧嘩大会は見に行こうと思う。鍛冶師さんが出場するそうだ。
「えー、全部で380匹。こんなもんかな?」
「数万のうちの400って思うと、なんかあんまりだね?」
「普段と比べると、大漁も大漁ですわよ」
「毎日お肉が食べられるんですねぇ。たのしみですねぇ」
いや、毎日お肉料理出してんじゃん。
ともかく、20匹ぐらい自分用に置いといて、あとは売りますかね。
うちのパーティではお金の管理は俺がしている。管理ってほどのことはしてないけど。3人は、普段は銀貨10枚ほどを持ち歩いて、なにか欲しいものがあるときに俺に言いに来る感じ。
まぁ、俺にお金がなかったらアマソン使えないからね。
「さあ、さっさと帰って暖房つけるぞ!発電機の燃料は朝に満タンにしたからな!」
「よーし、シチューだー!!」
「シチューですのー!」
「おにくぅー!」
「ワンッ!」
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