アイスウルフ
「ワンッ」
本館の入ってすぐの事務室に、紹介状を見せにいくと、すぐ近くの部屋で待つよう言われた。
応接室のようだ。お茶が出される。
「わんころ、お前は何者なんだ?」
「ワンッ」
いやドヤ顔されても。職員さんは何事もないかのように、ごくごく自然にわんころに水を与えた。
飼われてるのか?
しばらく待ってると、扉がノックされた。
「はい、どーぞ」
入ってきたのは、淡い紫の髪をポニーテールにした、眼鏡がよく似合うナイスなお姉さん。
ちなみに眼鏡は商人さんのところのだね。こっちでは虫眼鏡が精一杯ってところか。
「やあやあ、君がユウスケ君かね。おっさんから話は聞いてるよ。」
「あ、はじめまして、ユウスケです。よろしくお願いします。」
雰囲気はサバサバした感じだが、仕草は上品で、動きが綺麗だ。
大人な雰囲気で緊張する。
「…ユウスケ、鼻の下がのびてますのよ」
「へぇっ!?あ、ああ。ごめん、ありがとう」
そりゃあナイスなバインがボヨンボヨンしてんだからよ、男ならよ。
「さてユウスケ君、さっそく本題だけど、訳して複写してほしい本があるんだってね?」
「あ、ええ。俺は読めるんですけど、こっちの字はかけなくて。俺が読み方を教えて、あなたが書く、ってことになりますかね?」
「ああいや、私にはそれにピッタリなスキルがあるから、私一人で大丈夫だよ。自分用にもつくっていいなら、タダで引き受けよう。」
「悪用しないと女神様に誓っていただけるなら、複数冊お願いしたいんですけど。」
「へえ、女神様に誓わないといけないような本もあるんだね。大丈夫、私は知識を得たいだけ。知識を得れば得るほど長生きできるんだよ、私。」
そんな種族なのか…それともスキルだとか?
とにかく、女神様に誓っとけばなんとかなるだろうし、いろんな本を出してみる。
「とりあえず、出していきますね。沢山あるんで、この本以外は好きな順番でお願いします。」
「ふむ、金属の基本がわかる本。こらはおっさんのためだね?こっちは農業、物流、化学に工学。なるほど、面白い。」
表紙を読めてる。そういうスキルなのか。
とりあえず片っ端から購入してだしていく。
「こんなもんですかね。絶対に他所にもらさないでくださいね?」
俺が出処だとばれなきゃ困らんけどね。
「うん、これは私の収納にいれて預かるよ。複写も研究室でする。安心してくれ。」
そんな顔で言われると安心しちゃう。
「ユウスケ、鼻の下」
「あ、ソニア、ありがとう」
やっぱり顔に出ちゃうよなぁ。
「じゃあさっそく今日から訳すかな。出来上がったらどうしようか。」
「あー、どれぐらいかかります?」
「最初の一冊は…3日かな。後のは5日ずつ欲しいな。」
3日か。3日ぐらいなら王都にいても良いかな?
「じゃあ3日後に一冊とりにきますね。あとのは…郵送とかあります?」
「あー、そうだねぇ。全部出来上がったらおっさんのとこに持って行こうか?」
わざわざ持ってきてくれるのか。
他のは特に急がないし、それでいいか。
「じゃあ、お願いします。秘密をまもってくださるなら、精一杯のおもてなしをしますよ?」
言いながら、いちごミルク飴を取り出す。
「これは?」
「砂糖を煮て固めたもの、ですかね?口に入れて溶かして味わいます。噛まないでくださいね?」
ソニアにも同じのをあげる。
こいつは炭酸系の飴が好きなのだが。
「疲れた頭には糖分ですの。うちにくれば、この水準の晩餐が毎日ありましてよ?」
「ふむ…あ、甘い!なんて甘み。舐めても舐めても味が止まらない!…これは、なんとも…!秘密は厳守する。是非ともお邪魔させてほしい。複写は早めに終わらせるよ!」
「なら、これは手土産ということで」
いまの飴がいっぱい入った袋がいっぱい入った段ボール箱を出す。長持ちすることも伝える。
「こんなに…ありがとう!最初のは時間をつくって明後日には渡せるようにするよ!飴は貰えるし知識は増えるし、ほんとに至れり尽くせりだね。なにかお礼をしないと…」
こっちが頼みにきたのにお礼って。不思議な気分だな。
貰えるものはもらうけどね。なにをくれるんだろう。私を好きにしていいよなんてそんな
「ユウスケ」
「あ、ありがとう」
また鼻の下のびてたか。
だってさ、ぷるんぷるんだもん。ブラとか売れるんじゃねぇか。
「ワンッ」
「ん、ああそうか、このアイスウルフを持って帰ってもいいよ」
「え、いいの?」
「ワンッ」
レアな種なんじゃなかったか?
いや、かっこいいけど。飼いたいけど。番犬?室内で飼うけど。毛並み綺麗だし。
「その子はグレーハウンドの変異種でね、群れに捨てられたのさ。私が拾って育ててたんだけど。どうやらユウスケ君を気に入ってるようだ。」
「ワンワンッ」
おー、すり寄ってきた。可愛いなぁわんころ。
大きさは虎とかと同じぐらい。毛は水色と白で、目は青。汚れは無く、匂いもない。
か、飼いたい。
「つ、連れて帰ってもいいですか」
「いいよいいよ。な、アイスウルフ。」
「ワンッ!!」
よっし飼うぞー!




