シグナス神父
「女神様より神託を受けております。どうぞ、奥の部屋へ」
シグナスさんに連れられて、教会の裏の部屋に通される。
どうやら神父さんの執務室のようだ。
「さて、女神様より寵愛を賜りし者に、私個人としては全てを以て仕えても宜しいのですが」
「え、いや、冗談はよしてくださいよ…」
偉い人に仕えられるのはちょっとなぁ。
「私としてもこの教会の事がありますからね。女神様より『お願い』された事を確実に為すまでにとどめますよ。」
女神様からなにかお願いされてるのか。なんだろう…まったくわからん。
「女神様には、『神殿への紹介状を書くこと』、『神殿孤児との面談、縁組が成った場合は女神教として資金援助』をお願いされております。まず、こちらが紹介状です。神殿は、王城の北側にあります。見たらわかると思いますので、詳しい説明は省きますが。」
「はあ、ありがとうございます。…神殿にいけばなにかあるのでしょうかね」
女神様のことだし、なんかドッキリがありそうな。女神様って結構お茶目だし。
「悪いことは起こりませんよ、きっと。」
大学に行くのは明後日、神殿は明日にいこうかね。
「…で、私にはなにかないのかしら、シグナスの坊や」
「……おやおや、これはこれは。随分と小さくなられたもので。まったく気付きませんでしたよ、ソニアおばあさま」
「相変わらず口が減らないようですわね?」
「そちらも、態度だけは高貴なようで」
ん、んん?なんだこれ。知り合いなのかな二人とも。雰囲気悪いけど?
「…で、坊やは500年ぶりに再会した『おばあさま』になにかいう事があるのではなくて?」
「…まだあのワインの事を?」
「まだとは失礼ですわね。あのワインは一品物。後にも先にもあの一本だけ。私を見初めてくださった方と共にいただく日の為に大切に保管しておりましたのよ?」
「…あなたは私の誘いを蹴りました」
「貴方ではダメなのです」
「…ふぅ。500年ぶりの失恋ですよ。あのワイン、実はですね、王城の宝物庫に納められてます。…これが、証書ですよ。返します。」
シグナスさんは執務机の引き出しから、豪華な封筒を出してソニアに投げる。
「飲んだというのは嘘なのですわね」
「あなたと一緒に飲みたかったですけどね」
「神父のくせに、欲に正直なのですわね」
「女神様は禁欲を強いませんのでね」
「…また、みんな集まりたいですわね」
「…ええ。ではユウスケさん、お早めに神殿に足をお運びください。女神様の微笑みがありますように。」
「え、ええ。では、失礼します」
王都でも評判のよい宿をとって、綺麗な二人部屋のベッドの上。
「なぁソニア、なんで俺のベッドに?」
「…ダメですの?」
「いや…まぁ、いいけど。」
「…今日だけですわ。ちょっと、人肌が恋しいだけですの。」
…ソニアは長く生きてる。
なにか辛い事があってもおかしくなくて、シグナスさんに会ってそれを思い出して。それで寂しくなったとしても、なにもおかしくない。
…こういうときは、優しくしてあげるのがいいんだろうな。
「…明日の朝は、ストロベリーチーズケーキにしようか」
「絶対、ですわよ」
ちょっとだけ、声色が柔らかくなったかな?
エルダーワイトとトゥルーヴァンパイアの過去とは
掘り下げません




