ステンレスとは
商人さんに商品を卸して数日。
在庫が無くなりそうだというので、またお店にお邪魔している。
俺の卸したもの以外にも、この世界で仕入れたものもいっぱいあるようなので、帰りに買っていこうかな。
売れ筋は缶詰、塩、鍋らしい。
鍋は奥様ネットワークで真っ先に売り切れて、現在入荷待ち。
缶詰は冒険者の口コミが思ったよりも広まったらしく、さっそく他所の街の冒険者も買いに来ているらしい。
塩はいまのところ他所と変わらない値段だが質が良いので、料理屋や貴族のキッチン担当が買っていくらしい。こっちの塩は不純物を取り除くのが当たり前なようで。
あ、三輪自転車も売れたそうだ。物好きもいたもんだな。
売れた分のお金を受け取り、前回の倍ほど置いていく。倉庫は広いので問題ない。
初売り上げのお祝いと称して、キッチンを借りてステーキを焼いた。今日は黒毛和牛よー! ソースは前使ったやつで。
商人さんが泣きそうな顔で美味い美味い言ってるのが面白かった。
コンコンコン
「あら、来客ですかな?」
今日は定休日。店は閉めている。
だからのんびりしてたんだが、どうやら人が来たようだ。
「ちょっと見てきますね」
「はーい。じゃあソニア、デザート選んどこうか」
「私はチーズケーキがいいですの」
「チーズケーキにも種類があるんだよ?」
「まあ……!!」
うーん、ブルーベリーチーズケーキとかどうよ?
いや、こっちのふわふわのも?悩むなぁ
「…あの、ユウスケさん、ちょっといいですかね?」
「商人さん。来客は?」
「そのことでお話が……」
どうやら、店に来たのはこの町で有名な鍛冶師さんらしい。
この店で刃物と鍋を買ったらしく、素材に感銘を受けたようで。
「で、俺にその鉄を売ってくれないか、と。私は完成品で仕入れてるので仕入先に聞かないとというと、じゃああんたが鉄ごと仕入れてくれたら仕入れ値の4倍で買う、と。」
ふぅむ、俺としては悪くない話なんだよな。
別に手間でもなんでもないし。ここで鉄を買って、商人さんに渡す。それだけ。売れたら原価と利益の3割。
「俺は構いませんけど…でも鉄ってよくわからないし、いくつか置いていくんでどれがいいか聞いといてください。」
「ええ、ありがとうございます。鍛冶工房と繋がりが持てるなんて、やっぱりユウスケさんに助けられて幸運でしたねぇ。」
こっちも行き倒れてくれてて良かったですよ、と。
とりあえず、よくわからん鉄とか鋼とかを…あれ?なんて検索すればいいんだ?
鋼材…あ、でた。うーん、薄いのしかない。これでいいのかな?
なんかダメな気がするし。でもとりあえず買って、と。
「どうやら削り出し用のしか売ってないようで…ちょっと、鍛冶師さんとお話しても?」
「え、ええ。どうぞどうぞ。」
「こちらが、鋼材です。うちはこれを削り出してつくって…ます。多分。」
「ふむ…削りか…出来上がった鋼までしか教えて貰えんわけか…」
「なにぶん、特殊な方法でしてね。」
うーん、このドワーフのおじさん、凄いさみしそうな、悲しそうな顔して鋼材見てる。
いやもうそれはあげるから…
あ、そうだ。
「あの鍋はステンレスっていう素材なんですけど、合金、はわかりますよね」
「さすがにわかるわい」
「そのステンレスの、合金の配分を教える、ってのはどうでしょうか?」
配分を教えてもできるかどうかは知らんのだけどね。
で、俺はステンレスの化学成分なんか知らん。こういうときは、本を買えばいい!
ってことで、ステンレスのことに書いてる本を購入と。
「その本は?」
「これに…あ、あった。ステンレスの事が書かれています。」
「それを売ってもらうことは…?」
「売っても読めないですよ?ほら」
「読めん…まったく読めん。暗号か?やはり高度な技術者は情報を漏らさん工夫も一流なのだな…」
えっと、うーん、ニッケル、クロム、マンガン…窒素?モリブデン?
えーと、基本はクロム鋼と、クロム−ニッケル鋼なのか。代表的なのはクロム18%、ニッケル8%の18-8ステンレスと…なるほど。
とりあえず、この事を鍛冶師さんに教える。
それらの素材はこっちにもあるようで、腕が鳴ると喜んでいる。
「良い話をきけた!またくる!次は酒をもっと用意しておけ、全部かってやる!ではな!」
そういって、金貨10枚をカウンターに置いて颯爽と店を出て行った。
「金貨…10枚も?」
「情報料、ですかね。ユウスケさんの話は、それほどの価値があると判断されたようで。いやいや、やはり知識は力なり、ですな。」
う、うーん…ちょっとズルした気分。
役に立てたならいいんだけどね。
これで余裕も出来たわけだし。
…本を翻訳してくれる人がいれば、更にいろいろとできるのでは?
「ユウスケ、チーズケーキはまだですの?」
「あ、ごめん、今買うよ。商人さんもどうぞ。」
「おお、ありがとうございます。私はモンブランがいいですね。」




