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それゆけ!第七艦隊キサラギ・ユカリ  作者: アンナ・キッシンジャー
9/13

9話 春になって、王たちが戦いに出るに及んで…

今振り返ると、皮肉なことです。この日にできたスローガンがあんな事になるとは思ってもいませんでしたから。


入部式の後、谷高吹のスローガンを決める会議がありました。その会議では、「響け!勝利の歌」という真面目なものから「県大会 銅だと麦茶 銀でソーダ ゴールド金ならビールで乾杯!※」というふざけたものまで、色んな案が出ていました。「会議は踊る」とでも言いましょうか、会議はまるで笑点の大喜利のような感じだった気がします。ちなみに佐渡先生は「ゴールド金ならビールで乾杯」で爆笑していました。でも「さすがにビールはあかんやろ」とそれを却下しました。


結局、スローガンは芦部先輩が考えた


忍耐とは芸術である

調和とは友情である

努力とは成果である


に決まりました。後にこれは『谷高吹の三か条』と呼ばれるようになります。


会議終了後。

ある女の先輩が一年生だけを集め、とんでもない事を発表しました。


「花見係です。もうすぐ霞ヶ関公園で吹部恒例の花見があります。そこで一年生には一人ずつ、すべらない話というものをやってもらいます」

「すべらない話って何ですか?」一年女子の誰かが先輩に対して質問しました。

「自分のとびきりおもしろい話を披露するイベントです」その女の先輩は他人事のようにキッパリと言いました。

「えー!」一年生は凍りつきました。

「どうしてそんなことをするんですか?」と一年女子が困惑しながら聞き返しました。

そしたら女の先輩は笑顔でこのように言いました。


「先輩達が新入部員の名前をいち早く覚えられるようにです。吹奏楽部は部員が多いですので。でも安心してください。先輩達も鬼ではありません。すべらない話は、女子は任意とします。女子はかわりに簡単な一発芸をやってくれれば大丈夫です」


「一発芸ってどんなことをすればいいんですか?」私は怖くなって質問しました。女の先輩はこう明るく言いました。

「何でもOKです。楽器の演奏やダンスなど様々です。でも、脱ぐのだけは絶対にやめてくださいね。見苦しいですから」


いやいや、誰もそんなつもりないし…と私は少しイラっとしました。


男子の一人がおそるおそる質問しました。


「その花見っていつあるんですか?」

「今週の日曜日です」

「…日曜日って、あと5日しかないじゃないですか!」男子部員たちが急に騒ぎ出しました。

「花見係からは以上です。それでは皆さん、先輩の前ですべらないようにがんばってください!楽しみにしていますので」女の先輩はさっさと話を切り上げて、どこかへ行ってしまいました。



入部初日にいきなり追い込まれた私。もちろん私は一発芸なんて一度もやった事ありませんでした。「どうしよう…楽器の演奏はまだできないし」と悩みました。私の中に、入部早々に退部する選択肢もなかったわけではありません。でも私は一発芸をやる覚悟を決め、5日後の花見に向けて練習をし始めました。


私が花見で披露した一発芸は、中学時代の経験を活かしたネタでした。


※「県大会 銅だと麦茶 銀でソーダ ゴールド金ならビールで乾杯!」…吹奏楽コンクールでは、下手な演奏だと銅賞、まあまあな演奏だと銀賞、上手な演奏だとゴールド金賞が与えられる

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