6話 アメリカン・パトロール
講堂のステージには、大勢の吹奏楽部員が指揮者を囲むように並びました。吹奏楽部の部活紹介は、軽音楽部とちがって静かに始まりました。曲の始まりはステージ左側。2本のスティックをもった打楽器奏者が、
…タカタッ、タカタッ、タカタッ、タッ、タッ、
…タカタッ、タカタッ、タカタッタタカッタターッ、
とスネアドラムを鳴らしました。吹奏楽部が演奏し始めたのは行進曲「アメリカン・パトロール」。私はこの日初めてアメ・パトを聴いたのですが、第一印象は「なんとも楽しげな曲だなあ」という感じでした。
特に印象深かったのは、曲がフォルテッシモ(とても大きく)になった中盤。舞台袖から巨大な旗をもったカラーガード部隊が入場してきました。旗に描かれていたのは、赤白のストライプとたくさんの星。アメリカ合衆国の国旗、いわゆる「星条旗」です。
すると、ステージ最前列に並んだカラーガード隊は旗を円を描くように一斉に回し始めました。驚いたことに、その旗は角度も高さもバッチリそろっていました。そのカラーガードを見て「ああ、すごいな」と少し感動した覚えがあります。
曲の終盤、マイクをもった部員がアナウンスを始めました。
「皆さん、こんにちは。市ヶ谷高校吹奏楽部です。谷高吹は現在32人で活動しています。わたし達は顧問の佐渡先生のご指導のもと、県大会突破を目指して日々練習しています。さて、私達は明後日の放課後に校舎3階の音楽室にて新歓コンサートを開催します。コンサートの後には楽器体験会と茶話会も準備しています。皆さんのご来場を部員一同お待ちしています」
吹奏楽部の部活紹介が終わり、私は「なんかいいかもしれない」と感じました。ハチャメチャだった軽音楽部の後では、吹奏楽部がすごくまともそうに思えました。そこで私は、後日開かれる吹奏楽部の新歓コンサートに行ってみることにしました。
※アメリカン・パトロール…F.W.ミーチャム作曲の吹奏楽曲