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それゆけ!第七艦隊キサラギ・ユカリ  作者: アンナ・キッシンジャー
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12話 桜流し その1

花見で交わされた会話のことも少し書いておかないといけませんね。


今振り返ると、東条さんがなぜ芦部先輩にあれほど積極的だったかわかるような気がします。芦部先輩は見るからにイケメンで背も高く、有望株の雰囲気がありましたから。東条さんにとって、自分の魅力をアピールする場所が花見だったのかもしれません。


それに、花見は単なる歓迎会という以上に、もっと重要な意味を持つイベントだったことも今になってみてわかります。考えてみてください。誰かが誰かと出会って、いずれ恋愛関係になるかもしれないのです。当然、高校生活の充実度にも影響します。


高校生活で他の男子にどれだけ好かれ、どれだけ愛されるか。それは第一印象でどれだけ好感度を与えられるかにかかっていたように思います。



花見の時、会場で芦部先輩と会話していた時のことでした。


「ゆかりちゃん、さっきのエプロン姿おもしろかったよ」芦部先輩がそう言いました。

「ありがとうございます」と私は返事しました。「一生分すべりましたけどね」

「ははは!こういう宴会芸をやる時は、ふつうは無難なことをやってやり過ごすんだよ。手品とかダンスとかね。君は本気でやるんだもの」

私は恥ずかしくなり「以後、気をつけます」と下を向きました。


もともと、私は何かにつけてクヨクヨと考えてしまう性格です。最近はそんな傾向もなくなってきましたが、あの一発芸の寒さは未だに忘れられません。


東条さんが芦部先輩の隣にやってきたのは、この後でした。


東条さんはカワイイ女子を演じはじめました。最初、芦部先輩はとまどっていたようですが、東条さんが何度もアプローチするうちに、徐々に術中にハマっていったように思います。

「先輩ってかっこいいですよね。彼女いるんですか?」東条さんはそう聞きました。芦部先輩がフリーであることを確認すると、東条さんはよりにこやかになり、先輩の目を見ながらこう言いました。

「あたし、古文が全然分からなくて困ってるんです。今度、勉強を教えてもらえませんか?先輩は古文が得意だって聞いたので」

「おう、わかった」と芦部先輩は言いました。「お安い御用だよ」


それからずっと東条さんのペースで話が進み、空気と化してしまった私はその場を離れました。あの時は「私ってコミュニケーション能力ないなあ」と変にまじめに考えていました。女子力という言葉を当時知りませんでしたが、東条さんの圧倒的な力量を目のあたりにしてへこんでいたような気がします。

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