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それゆけ!第七艦隊キサラギ・ユカリ  作者: アンナ・キッシンジャー
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11話 俺の話を聞け!

ところで皆さんは「ガクシキ」をご存じですか?

ガクシキは「学生指揮者」の略です。吹奏楽部では生徒が指揮をすることが多く、ガクシキは強い発言力をもっています。ガクシキは、私たちにとって特別な存在なのです。


話を花見に戻しましょう。すべらない話のトップバッターは長沼君でした。

「長沼宏実です!いずれ学生指揮をやりたいと思っています!」

この一言で先輩たちの目つきが変わり、長沼君にわざわいの炎が降りかかりました。


「僕が中学生の時の話です。交換留学でアメリカからアルフレッド君という男の子がやってきました。最初、アルフレッド君は僕らと楽しく会話していました。でもクラスのあるバカ男子が何を思ったのか突然、ファックユー!って彼にカンチョーをしたんです。そしたら、アルフレッド君はカンチョーのショックで二度と学校に来なくなってしまいました。

この事件を受けて、担任の先生はどう丸くおさめていいかわからなかったようで、

『日本のカンチョーは悪ふざけにすぎないかもしれませんが、アメリカではひどい侮辱になるそうです。これが文化の違いです。皆さんは彼が傷つく事も想像できましたよね?カンチョーで相手がいやな思いをするかもしれない、と想像できる事も国際交流の一つです』

とよくわからない事を僕らに説明したんですけど、それを聞いた僕はおかしくてたまらなくて、『いやいや、国際交流ってそんな事でいいんですか!?』と心の中で思いっきりツッコミを入れた次第です」


「…それで?」女子の先輩がキツいトーンで聞きました。

「以上です」長沼君は申しわけなさそうに言いました。


「はぁ?」

「それがオチ?」

「つまんない」

「話が成立してないし」

「かえれ!」


あの時の野次は怖かったと言わざるをえません。「すいませんでしたー!」長沼君は逃げるようにはけていきました。私は一部始終を見て「すべらない話じゃなくて本当によかった」と思いました。でも今考えると、この修羅場は「話がすべったこと」ではなく「ガクシキをやりたいと公言したこと」に原因があったように思います。


誰かが話すたびに大すべりするという地獄の光景がつづく中、唯一笑いをとっていたのは恵庭ナオです。


「奈良に住んでる親戚の中学生男子の話。親に内緒で18禁サイトを見ていたら、そのサイトから架空請求が来た。詐欺の知識がまったくない彼は『親にバレる!』と気が動転してしまい、焦った彼は何を思ったのか、東京の警視庁に直接電話してしまった。そして、電警視庁の人から電話口でこっぴどく説教された」というバカバカしい話でしたが。


私にはこの話のどこがおもしろいか理解できないのですが、先輩達にはウケてましたね。特に芦部先輩。彼は「奈良県民が何で警視庁!?」って大声で笑ってました。芦部先輩の趣味は今ではわかりきっていることですが、あの時は「芦部先輩ってこういうくだらない話が好きなのかなあ?」と違和感を感じていた記憶があります。(つづく)

カンチョー事件…本当にあった話

警視庁の話…本当にあった話


長沼宏実…ながぬまひろみ。長沼ナイキ事件より。

恵庭ナオ...えにわなお。恵庭事件より。

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